オトナも楽しめる素敵なゾンビ園
ちびまるフォイ
ゾンビのオトナな使い方
ゾンビ動物園に二人の男がやってきた。
「いらっしゃいませ。ゾンビ動物園へようこそ。
ここではさまざまなゾンビを見て回れますよ」
「ははぁ、なかなかおもしろいですなぁ」
男のひとりは楽しそうに見て回り、
もうひとりの男はずっと無口だった。
「見てください。ここは親子連れも多いんです。
ゾンビって動きがなんだか愛らしいでしょう?」
「見た目のグロテスクさは意外と平気なんですね」
「結局は慣れなんですよ。
ほら、子供がゾンビを見て笑っていますよ」
動物園の柵の外からはタイヤに乗っているゾンビをみて
子供が楽しそうに笑っている。
「あ、そろそろ餌の時間ですよ」
「餌?」
ゾンビの柵の中には生肉が放り込まれる。
これまで夢遊病のようにフラフラしていたゾンビも肉の匂いをかぎつけ、
フラフラと肉の周りに集まって四つん這いで貪り始める。
それを見ていた客からは拍手と歓声が上がる。
「餌の時間は当園でも一番の見せ場なんですよ。
頼りなげなゾンビが一心不乱に野生を取り戻す様子なんか見ものでしょう?」
「そうですね」
「……」
「ゾンビ動物園は開園からずっと大好評です。
他にも水中ゾンビやゾンビショーもありますので見ていってくださいね」
「ええ、それはもちろん見ますが……それだけではないでしょう?」
「え?」
「ほら、"アレ"ですよ」
男のひとりが含みありげに言うと、ゾンビ園のスタッフも何かを感づいた。
「ああ、"アレ"ですか。お客様もただの客ではないというわけですね」
「そのために裏チケットを買いましたから」
「こちらへどうぞ」
普通に園で楽しむには到底気づけ無い茂みの奥へ進むと、
地下に続く暗い階段が見つかった。
「こちらへどうぞ」
完全防音の扉を抜けた先にはゾンビがガラスの向こう側に並べられ、
ガラスを隔てた射撃場が待っていた。
「こ、ここは……」
「驚きましたか? ここからは裏ゾンビ園。
普段、人を撃ってみたいという人は多いんです。
ゾンビならいくら撃ち殺しても問題ありません。人じゃないんですから」
「結構な利用者がいるんですね」
「ええ、みなさん一度やったら病みつきでリピーターになってくださいます」
「他にも部屋があるようですが?」
「あっちはゾンビ風俗ですよ」
「ほう」
「男のゾンビは射撃のマトとしてつかって、
スタイルのいい女のゾンビは歯を全部抜いて噛まないようにして出荷します。
さながらオトナの動物園といったところですね」
「それは面白そうだ」
「でしょう。実は売上の大半は裏ゾンビ園でまかなっていますから」
「しかし、どこでこれだけの数のゾンビを集めているんですか?」
その質問を待ってましたとスタッフは男に耳打ちした。
「実は、このゾンビはすべて犯罪者なんですよ」
「犯罪者?」
「ええ、死刑が決まったり重い刑罰の犯罪者をゾンビ化させてるんです。
監獄の負担も減りますし、こっちは儲けられるし一石二鳥ですよ」
「なるほどな……」
すべてを把握した男は懐から警察手帳を取り出した。
「話はすべて聞かせてもらった」
「お、お前!? 警察だったのか!?」
「そのとおり。このゾンビ園でやっていた倫理に反する
非人道的な行いの数々、もう言い逃れはできないぞ」
「何を言っている! こいつらはゾンビなんだぞ!
もはや人でもなんでもない! 死んでるんだ!」
「相手が死人でもゾンビでも関係ない」
スタッフは観念したように頭を下げた。
「わかりました……ここで行っていた非道の数々は認めます。
そのお連れの方も警察なんでしょう? さぁ、手錠をかけてください」
「いや、こっちは警察じゃない」
「え?」
警察はずっと連れていた男を前に突き出した。
「こいつが全然真犯人を吐かないんで、
犯罪者のその後の扱いを知ったらゲロするかと思って見せに来たんです」
「ゾンビだけはやめてくれーー! 俺は本当にやってないーー!!」
地下室から悲痛な叫びは地上に届かなかった。
オトナも楽しめる素敵なゾンビ園 ちびまるフォイ @firestorage
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます