第2話事故


「おはようー」


「しおんちゃん、かすみちゃんおはよう!2人共いつも仲がいいねぇー!熱いねぇー!こりゃかすみちゃんをそうた君じゃなくてしおんちゃんが取るかもねー」


クラスメイトの中村さんがこんなこと言って来た。私は男じゃなくて女の子なんだけど……。


「ちょっと中村さん!……そんなに仲良しに見えるかな……?」


「あれぇ?しおんちゃん、顔が真っ赤だよー?もしかして嬉しがってるなー?」


「そ、そんな事ないよ?」


嬉しいけど!嬉しいけど!それがかすみちゃんにバレるのが恥ずかしくて否定した。


「え?しおんちゃん、私と仲良しって見られるのいって嫌なの?」


かすみちゃんが悲しい顔で私を見てきた。そんな悲しい顔で見つめられると見られてるこっちが胸が痛いんだけど……。


「そ、そんなんじゃないよ!?かすみちゃんの事好きだよ!仲良しじゃなくて……そう、親友!友達なんかじゃ私達の仲は足りないって事なの!」


何言ってるんだろう私!自分でも何言ってるのか分かっていなかった。


「そうなの?えへへ、ありがとう!私もしおんちゃんの事好きだよ!!」


「あ、ありがとう……」


かすみちゃんにそう言ってもらうと私も嬉しくなってしまった……。中村さんニヤニヤしながらこっち向くの辞めて下さい。そして、やっぱり……。とか言うの辞めてください。百合だなーとか言うのも辞めてください。百合じゃないです。親友です。でもこのポジションは誰にも渡しません!私は心の中で叫んだ。


「しおんちゃんは私にとって2人目の親友だからね!」


もう1人目を取られてるなんて……。誰だろう?私は気になってかすみちゃんに訪ねた。あ、別に私が1位じゃないから誰だろう?って気になった訳じゃないからね?


「因みに1人目は誰なの?かすみちゃん」


「1人目はそうただよ!しおんちゃんは2人目!この2人は私にとって特別なんだよね!」


そうたくん!?幼なじみポジションだけじゃ飽き足らず親友ポジションまで私から取るの?私は何とかそれだけは避けようと、かすみちゃんに言った。


「かすみちゃん、そうたくんは幼なじみでしょ?親友と別のだよね?というか彼氏と言っても同じだよね?」


「ちょちょちょ!!何言ってるのしおんちゃん!!そうたは彼氏じゃないから!!」


「え?違うの?」


「え?かすみちゃんとそうた君付き合ってるって思ってたんだけど……」


「え?その嘘はすぐバレるよかすみちゃん……」


「ちょっと!クラスの皆まで!!!違うのにー!」


かすみちゃんが膝をついて否定をした。親友として手助けしたいのはあるけど付き合ってるのと同じくらいだから手助け出来ないんだよね……。頑張って、かすみちゃん!と心の中で応援しておく。


そんな会話もあった今日。そしてあっという間に放課後になっていた。私とかすみちゃんは2人で帰りながらさっきのことについて話していた。


「私とそうたって付き合ってないのになんで皆付き合ってるっていうの?おかしくない?ねぇ?しおんちゃん!」


「あ、あはは。そうだねー」


いや、逆にこれで付き合ってないって言うのおかしいけど、また同じこと言うのもなーと思い、言わない事にした。そんな事を思いながらいつも帰り道であるの下り坂を下っていた。そしたら急に後ろから「危ない!」と言う叫び声が聞こえてその方を見ると自転車が物凄いスピードで私に向かって走ってきた。多分ブレーキが効かなくなったのだろう。私は自転車が来てるのは分かったけど、反応が出来ずに固まってた。私は自転車にぶつかる!と思って目をつぶったら


「危ない!」


と言うかすみちゃんの声を聞いた時には私は床に倒れていて、痛みと共にガシャン!という人と自転車がぶつかる音を聞いた。……聞いた?あれ?私はぶつかってない?そう思って前を見ると、目の前に自転車に引かれ、倒れているかすみちゃんがいた。


「か、かすみちゃん!なんで私を?」


私は物凄い勢いでかすみちゃんの所へ駆け寄った。私の代わりにかすみちゃんが庇ってくれたのだ。


「だって……私の親友……だから……。しおんちゃん怪我はない?」


「私はかすみちゃんが私を助けてくれたから大丈夫だけど!それよりかすみちゃんは大丈夫なの!?」


「なら……良かった……」


そう言ってかすみちゃんは意識を失った。私はかすみちゃんに声を掛けたが、反応が無かった。慌てて携帯を取り出し救急車を呼んで、かすみちゃんを病院へと送った。

自転車でかすみちゃんにぶつかった本人はいつの間にか消えていて、自転車だけが取り残されていた。相手の顔も見たはずなのに、相手がどんな顔だったかも覚えていない。こんなありえない感覚に襲われたのは初めてだ。


——まるで、悪戯好きな妖精に出会ったかのように。

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