イノセントフラワー
こじー
第1話物語の終わりと始まり
「ユーカリ……ごめんね……私はここまでみたい……」
何も無い真っ白な世界の中で2人だけ。地面に倒れながら消え入りそうな声で話してる少女、アイリスに一生懸命声をかける男、ユーカリだけがそこに存在していた。
「アイリス!!君はここで倒れちゃ駄目だ!なんの為僕は、僕達はここまで頑張って来たと思ってるんだ!僕は君がいないと生きていけない……。君が僕の唯一の心の拠り所なんだから……」
僕は必死で声をかけた。アイリスに生きて欲しい一心でユーカリは愛する少女に声をかけ続けた。
「あり……がとう……ユーカリ。ねぇ、1つだけ聞いてもいい?」
「何?」
アイリスは恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐな目で本当の気持ちを僕に問いかけるように、質問をした。
「ユーカリは……私の事好き?」
僕はこの質問をする意味がよく分からなかった。けれど、あの時から僕はアイリスの事は好きだった。こんな事を聞くって事はアイリスも僕の事好きだったのか……?それは分からないが僕は正直な気持ちでアイリスに伝えた。
「当たり前だ!僕は君さえいればいい。誰よりも君が大切だ!だから、死ぬな!お願いだから……死なないでくれ……」
「私はその言葉を聞けて良かった。今まで生きてて良かった……。さよなら、ユーカリ。私の愛するユーカリ……」
そう言って目の前に倒れているアイリスはゆっくりと目を閉じた。僕は言葉が出なかった。アイリスは僕の生きる全てで、アイリスさえいれば他はどうでも良かった。アイリスがいてくれたおかげで僕はここまで生きてこれた。幸せな気持ちにもなれた。
しかし、生きて欲しいという願いは通らなかった。僕は目の前の現実が信じられず、あまりの悲しさに涙を流した。これからどうすれば良いのだろうか。アイリスはこの世から去った。僕の愛するアイリスはいなくなったのだ。これから僕は……。
「あれ?アイリスが光って……」
目の前に倒れているはずだったアイリスは、光輝いて1人の少女の大きさから1粒の種になった。
「アイ……リス……?」
僕は目の前の種を優しく拾って、ある決意をした。
「僕がアイリスを生き返らせる。何に変えても。何を犠牲にしても」
僕は愛する人を失った。僕は愛する人が隣にいない悲しさからまだ涙を流していた。
けれど、いつまでも泣いている訳にはいかない。だってまだ、アイリスは完全に死んだ訳ではないかもしれない。この種がアイリスだと確証は無いが、僕は諦めないアイリスが生きてる可能性がまだ1パーセントもあるのならなんでもする。愛する人を生き返らせる為に、僕はある計画を考えた。
※
「おはよう!しおんちゃん!」
「おはようかすみちゃん。今日も元気だねー」
空は雲1つ無く快晴で、桜の花びらが舞う季節。入学式が始まり、今まで後輩だった私が先輩として新たに高校生活の始まると感じさせてくれる。今日は一緒に高校に行く為に親友のかすみちゃんと待ち合わせをしていたのだ。
「もちろん!だって今日のお昼はそうたの手作りだよ!ふふふふ」
かすみちゃんはいつも通り惚気けてるなー。なのにそうた君とかすみちゃん、まだ付き合ってないなんて……。信じられないなー。
目の前にいるかすみちゃんとその幼馴染のそうた君はかすみちゃんを家に迎えに行ったりと付き合いたての彼氏、彼女の様な生活をしている。これで付き合って無いとかどれだけ2人とも奥手なの?と言うしかない。2人とも両想いなのは身近にいる私じゃなくても分かるくらいだ。身近にいる私からしたら
「早く告白してよ!!どっちから告白しても一緒だよ!!」
と叫びたくなる。というかもう心の中で何回も叫んでる。まぁ、2人が付き合ってかすみちゃんが私と遊ばなくなっちゃうのは寂しいからそれはそれでいいけど。私は付き合って欲しいのか付き合って欲しくないのかどっちなのか分からない事を考えていた。あれ?私って応援してるのかな?応援してないのかな?
「しおんちゃん聞いてるー?あ、しおんちゃんまた考え事?道路で考え事は危ないから辞めなさい!めっ!!」
かすみちゃんがお母さん見たいな説教をしてくる。これは中学生だった頃からのいつもの光景だ。
「ふふふっ」
私が考え事をしてかすみちゃんが説教する。この流れが私は好きだ。だからかすみちゃんが説教してくれるとつい笑ってしまう。
「あ!しおんちゃん今笑ったでしょ!!もーー!!」
かすみちゃんが両手を上下にぶんぶん振りながら怒ってる。ここがかすみちゃんの可愛い所の1つだ。
「ごめんごめん!反省してまーす」
私はこれ以上かすみちゃんを虐めるのは不味いと思ってちょっと軽く謝った。
「ぐすっ。本当に反省してる?」
「してるしてる!ごめんね?かすみちゃん」
「うん。分かった!反省してるならいいよ!」
さっきの泣きそうな顔はどこへ行ったのかすぐに笑顔になった。かすみちゃんは本当にチョロ……こほんこほん。心配だ。かすみちゃんは誰とでも話せるし、顔も可愛いから他の男の人がホイホイついて行きそうだ。好きな人がいても、告白されて迫られたらノリでOKするかもしれない。
「かすみちゃんノリでOKしちゃ駄目だからね」
「え?何が?」
かすみちゃんはきょとんとした表情をした。それに対して私は
「秘密!」
と人差し指を鼻の前に持ってきて言った。
「ねぇ、しおんちゃん!何が騙されちゃ駄目なのー?教えてよー!!秘密って何ー!?」
私はかすみちゃんと話すのはやっぱり楽しいと思いながら、笑って高校へと歩いていった。
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