第8話 悠VS飛鳥

 闘技場の中はやはり広かった。学校の体育館と同じくらいの広さだ。


(中も広いよな…。やっぱり…)


 悠はこの闘技場の広さに感嘆かんたんを禁じえない。


 本当に自分がこの広さの建物を建てるだけのお金を稼いでいたのか?と考えてしまう。


(そりゃ、中学の時の思い出は、部活の楽しい記憶しかないけど…)


 それは俺の記憶力がないだけだ。そう思って生きてきた。暗記できないから、保健・体育のテストの点数も低かったし…。


 そんな思い出したくないことも思い出していると、飛鳥はすでに配置についていた。


 ボスはというと、柱にもたれかかって、俺たち二人を見ていた。


(まるでポ○モンのジムみたいだな)


 今はアローラなので、少し違うが、そこはジムに似ている。


 そんなことを考えていると、「早く配置についてください」と飛鳥が急かしてくる。


「はいはい分かったよ」


 飛鳥に急かされたので、俺も配置につく。


 俺たち二人が配置につくと、ボスは柱にもたれかかるのを止める。するとトコトコと少し歩いて、足を止める。


「ルールは一対一での決闘。武器の使用は禁止。倒れたほうの負け。それでいい?」


「問題ありません」


(やっぱりジムみたいだ)


 飛鳥は答え、俺は答えなかったが、ボスはそれを了解とこころえたようだ。


「開始!」


 ボスはそう叫んだ。


                   *


 俺は開始と同時に飛鳥へと右ストレートでなぐりにかかる。それを飛鳥は軽々とかわす。


「遅い!!」


 飛鳥はそう叫ぶと、俺の右脇腹を思いっきり蹴った。


(痛ってぇ!)


 俺はそう思いながら、左端まで吹き飛ばされる。


 圧倒的だった。次戦ったとしても絶対に勝てない、と思うくらいには圧倒的だった。まるで月とスッポンである。


 倒れている俺に飛鳥は近寄ってくる。立てない俺に向かって飛鳥は、


「どうです?実力さ分かりましたか?」


 と言ったのだった。



 これは俺にとって忘れられないぐらいの、屈辱である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る