第183話 追加メンバー参上?
──今日は待ちに待った温泉旅行当日!
朝早くに起きた俺達神楽坂家は途中で茉優と合流し、大地先輩達との待ち合わせの“駅の改札前”に集合した。どうやら俺達が1番最後のようだった。
息を切らしながら、俺は大地先輩達に挨拶する。
「はぁ、はぁ……おはようございます。」
「おはよう、優馬。」
「おはー」
「おはようございます、アニキ!」
大地先輩、椎名先輩、煌輝の3人とも特に怒っている様子では無く、一安心だけど……どうしてだろう。3人とも笑いを堪えるような仕草を俺に向けてする。
何か俺、変なのかな?
「すみません。少し遅れてしまって。」
取り敢えずそこには触れないように言葉を振るが……
「大丈夫。まだ新幹線の時間はあるからな。だけどな、1つ聞いていいかな?」
「は、はい。どうぞ。」
「もしかして、優馬……お前今日“寝坊”したか?」
──ギクッ
「な、なんで分かったんですか!?」
そう、俺は今日が楽しみ過ぎて、昨日の夜は熟睡出来なかったのだ。
……案の定、俺は寝坊。姫命から叩き起されなかったら、今も寝ていたと思う。
「ははは、だって寝癖がいつにも増してすごいからな。」
笑う大地先輩から頭を指摘され、俺は頭を触ると……俺の髪が爆発している事に気づく。俺は顔を真っ赤にしながら、用意していた帽子を深く被った。
変装用だけど……こういう使い方もありだな。
ってか、今日俺はこんな髪のまま来たのか!?恥ずかしいな。
俺はすぐさま近くにいた葵を捕まえる。
「…………なぁ、葵。」
「はい。なんですか、ゆぅーくん?」
「寝癖があったら言ってよ。恥かいちゃったじゃんか!」
「ふふ。」
「なんで笑うの?」
「すみません。やっぱり面白いんです。
すぐに指摘しなかったのは申し訳ないです。ちょっと悪ふざけしちゃいました。」
「うわー」
多分これは皆から意地悪されたんだろう。まぁ、寝坊した俺が悪いんだけどな。でも、ちょっとムカッと来たから、後で旅館に着いて一段落したら全員に“悪ふざけ”をしてやろう。うん、絶対にしよう。
「──ところで、煌輝?」
「なんすか、アニキ。」
「お前の荷物少なくないか?」
「そうすかね?」
俺はさっきから気になっていた事を煌輝に問いただした。そう、それは煌輝の荷物の事だ。煌輝の荷物は見た所……少し大きめのリュックのみであった。
俺達はリュックをそれぞれ背負い、両手いっぱいに荷物を持っているのに……
明らかに少ない。2泊3日なのに。
「もしかして……お前、1泊2日なのに荷物がこれだけなのか?」
「はい……?もしかして荷物少なかったんですか?オレ旅行とか全く行った事なくて、何を用意すればいいのか分からなかったんすよ。だから取り敢えず歯磨きと枕は持って来ましたよ!」
煌輝の自信満々な顔を見て、全員がため息を吐く。
(特にため息が大きかったのは茉優だった)
これはもう呆れに近い。ここまで煌輝が無知だったとは……完全に予定外であった。
明らかに準備を失敗している。変えの着替えも1着分しかないと言うし、汚したり、濡らしたりした瞬間アウトだし、その他諸々現地で揃えなきゃな。
まぁ、アイツも俺と一緒でこれまでずっと家の中で憂鬱な暮らしをしてただろし、強く怒る事は俺達には出来なかった。
やはり煌輝には圧倒的に“常識”が足りていないな。
来年からは高校生になるのだし、これから少しづつ教育して行く必要があると改めて実感させられた。
「──お、そろそろ新幹線の時間だよ。行こうか!」
大地先輩が時間を確認し、煌輝と常識に付いて話す俺達に呼び掛ける。
「はい、今行きます!」
そんな俺達が新幹線に移動する、そんな時だった……
「──おー、待て待て。私を置いて行くなんて酷いぞ大地!」
突然の大声。その声は思ったよりも駅に響き、俺達の耳に響く。
「……………………げ!?」
大地先輩が驚きの声を上げた。
俺達は急ぎ振り返り、その人物を確認する。なぜならその声は俺達がよく知る人物の声だったからだ。
「HAHAHA!私を出し抜こうなんざ1000年早いぞ大地。」
「ね、姉さんッ!?ど、どうして?」
そう、やっぱり空先輩だ。
な、なんでここに?
空先輩は確か……生徒会長としての重要な会議があるとか何とかで温泉旅行には来れないと、大地先輩が言っていた。それなのに空先輩は目の前に立っている。
しっかりと準備を持ち、服装の乱れもない。
……だけど俺と同じく、空先輩は寝癖がついていた。しかも、俺よりも激しく爆発していた。
そう言えば空先輩は、朝が弱い人だったっけ。
表情からは冷静を保ってはいるが、内心は遅刻しそうでドキッドキだったのだろう。
服でもなく表情でもない……髪がそれを表していた。
まぁ、誰も……殺されたくはないので、絶対に口には出さないけど。
「ど、どうしてだよ、姉さん。会議はどうしたの?今後の月ノ光高校の命運を決める大事な会議じゃ?」
「は!そんなの、前日に前倒しで終わらせてやったから大丈夫だぞ。」
え……そんなんでいいの、生徒会長。
いつも大胆な空先輩。普通に出来ない事を平然とやってのける……それがうちのトップ。月ノ光高校の生徒会長なのである。
「そういう事で、私も行くぞ!よろしくな。」
そう言い、空先輩も温泉旅行のチケットを懐から取り出す。そのチケットは俺達と全く同じ物だった。
大地先輩は一応、空先輩に温泉旅行のチケットを渡していた様だった。渡さないと、納得してくれなかったかららしい。
どうせ行けないとタカをくくっていた大地先輩だが、完全に空先輩の方が1枚上手だったようだ。
そんなこんなで、メンバーが揃った。
俺、雫、葵、夜依、鶴乃、姫命、茉優、煌輝、大地先輩、椎名先輩……空先輩の11人で、俺達は温泉旅行に行く。
☆☆☆
無事に新幹線に乗り込んだ俺達一行。
朝早い新幹線なので、人通りはあまり無い。だが、俺や大地先輩、煌輝の3人の男がいるという事は普通にやばい状況だ。
なので悪いとは思ったけど、安心して旅行へ行く為に、俺の特別男護衛官の藤林さん達に土下座でお願いし、護衛を頼んだ。ついでに大地先輩の特別男護衛官の人にも藤林さんを通じてお願いをしてもらった。
煌輝の特別男護衛官の人とは面識が無いからよく分からないけど………って、そもそも煌輝には特別男護衛官がいるのか?
帰ったら皇さんに確認してみよう。多分だけど……煌輝は男としてのルールを破って中学校に通ってる訳だから、国から派遣される特別男護衛官は居ないと思うけど。
まぁ、居なかったら居なかったらで、俺の男会代表という立場を最大限に利用して何とかするけど……
そうだ……後で別車両に乗っている特別男護衛官の人達に差し入れを持って行ってあげよう。常に気を張って疲れてるだろうしな。
そんな俺は娘の鶴乃を膝に乗せ、大量に買ってきたおやつを皆でつまみながら雑談をする。
今回の新幹線の席順は……
窓 大地先輩 椎名先輩 空先輩 通
夜依 葵 雫
側 姫命 俺 鶴乃 路 茉優 煌輝
こんな感じだ。茉優が煌輝と隣という事で俺や雫に猛抗議をして来たが……座る席が指定席という事もあり、もうそこしか座る席が無いので我慢してもらうしかない。帰りは絶対に俺の隣に座るという約束付きで茉優に納得してもらった。
茉優は予想通りの反応……だけど少しだけおかしな事がある。それは俺の婚約者の3人の事だ。
雫、葵、夜依の3人は席の位置については何一つ口出しして来なかったのだ。
自分で言っちゃなんだけど、あんなにも俺の事が大好きな3人がだ……元から3人で座る予定だったのかもしれないけど、構って貰えず、少しだけ寂しい気持ちになる俺であった。
まぁ、いい。俺と姫命、鶴乃で鶴乃の小学校の話を聞きながら1時間程の新幹線を満喫するのであった。
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