第121話 男会代表
国会議事堂前でタクシーを降りた俺と大地先輩は周りの人に絶対に見つからないようにして国会議事堂の裏側に行き、招待状を見せ中に入る。
国会議事堂って、国のお偉いさん方が国の為に政治をする場所だよね……そんな所で男会をするって中々やばいと思うけど。
「ここからは気を引き締めろよ。一応ここには男が大勢集まるから国が警戒態勢で護衛してくれていると思うけどテロとか、女は何をするか分からないからね。」
大地先輩は回りをキョロキョロと見渡しながら言った。大地先輩自身も相当警戒しているようだ。
「テロって……そんな、あるわけないじゃないですか。それに、男会自体ここでやるという極秘情報を女性が知っているのは極わずかなんですよ。」
「そうだけども、頭の片隅にでもその事を覚えておいてくれ。もし、逃げる時は自分の事を最優先にな。僕もそうするから。」
「は、はい。了解です。」
「それに、男にも気を付けろよ…」
大地先輩は耳元でそう囁いた。
「え?なんでですか?」
「男と言ってもここには色んな奴がいる。頭のおかしなやつ、弱みを付け狙ってくるやつ、金しか目にないやつ、妻を奪うやつ、ホモなやつ……とかだ。」
…………おい、最後のホモってなんだよ!?
男会にはそんな特殊なやつもいるの!?
「だから、男会にいる男には第一印象で判断してはいけない、決して弱みを出さず、個人情報もあまり公にはするなよ。」
大地先輩からの最後の言葉に「分かりました……」と答えると、俺は言われた通り気を引き締めた。
よし、もう逃げる事も出来ない。だけど、元から逃げるつもりなんて微塵もない。俺は歩みを進めた。
☆☆☆
国会議事堂の中は想像以上に広く、造りも綺麗だ。
さすが、国の政治を行っている国の最重要施設と言えた。
でも、国会議事堂には、ほとんど人はいなく看板で案内があるだけだった。
恐らく国があまり女の人と会わないようにする事を徹底しているようだ。
案内に従い、俺と大地先輩は進むと大きな扉の前まで来た。
ここに入れば……男会の男達がいる……俺の心臓の鼓動は高まる。
扉に手を掛け、開けようとした時─
「やぁ、優馬くん!」
「……………っ!?」
突然右肩に手を置かれ声を掛けられた。
俺は急いで手を振り払い、距離を取って振り返ると、そこには真っ赤のサングラスを付け、俺と同じ黒スーツを着た男が立っていた。
この人とは初めて会うわけだけど……その話し方……招待状に書かれてあった俺に対する言い方が合致していた。
「という事は、もしかして……あなたは……」
「そう!ボクは男会の親玉である、男会代表の者だよ。」
やっぱりそうか……
そう聞いて俺は身構える。
でも、俺が思ってたより第一印象は少しチャラめだけど、大人びてしっかり者の感じがする。歳は20代後半……くらいかな?
まぁ、大地先輩の言っていた通り俺は弱みを見せないように気を付ける。
「それで、俺に何か用ですか?」
素っ気なく俺は言うと、その人は驚いた表情をした。
「あれ~?招待状に書かなかったかな?男会の議会なんてついでであって、君のことを招待したのはボクと話し合いをするためだって……」
あ……確かにそんな事が書いてあったのを思い出した。
「そう…でしたね。」
「じゃあ、行こうか。」
「え?」
「今その扉で行われているのはただの交流会さ。男会の議会はもう少しだけ後だよ。そこまで2人だけで話そう。」
「わ、分かりました。……じゃあ大地先輩、先に男会に行っていて下さい。」
「ちょ、優馬!?」
大地先輩は俺と一緒に行けなくてついつい素が出てしまっていた。
俺は知っていた…大地先輩は俺といる時だけ強気で頑張っていた事を、俺の前だけでは最高に頼れるカッコイイ先輩であり続けていた事を……そして、一人でいる時ずっと自分自身に「頑張れ大地!」と言いかけていたのを………その事を裏で知っている俺は大地先輩には悪い事をしたと思う。
☆☆☆
別室に移動した俺とその人は椅子に対面で座る。
ここは少し薄暗くて狭い部屋だけど、その人によると天皇の人とかが政治を見学するみたいな中々の神聖な場所らしく、そんな所で話をするって……かなり気が引ける……
だけど…怖気付いている事を隠して少し強気に振舞う。
「じゃあまず、自己紹介からだね。ボクの名前は
「わ、分かりました…あ、俺は──」
「─あぁ、いいよいいよ。君の事は充分過ぎるほど調べてあるからね。」
俺が自己紹介を言おうとしたけど、皇さんに止められた。
「神楽坂 優馬、15才。月の光高校に在学していて、婚約者は今の所3人。雨宮 雫、神崎 葵、北桜 夜依だね。まだまだまだまだ、情報はあるけど…言った方がいいかい?」
「い、いえ、もういいです。」
俺は引きながら答えた。そう言えば隅々まで調べあげれているんだったな。3人の事を調べているのは当たり前か……
「じゃあ自己紹介も終わった所だし、早速話を始めようか。」
「そうですね。」
どんな話なんだろう……何となく予想はできるけど、どんな事を言われても直ぐに反応が出来るように準備はして置く。
「そうだな……まずは、ここに来てくれてありがとう。もし、今日君がここに来なかったら男会は中止又は延期になっていた所だったんだよ。」
「へぇ………」
口では言ってないけど、俺の事を脅し紛いなことをしてまでも来させたかった理由は男会をやるためか。
「それで、今日の男会の内容はボクも昨日まで知らなかったんだけど、予想外のLIVEでテレビ放送をするらしいんだ。」
皇さんは、変な事を言った。
「ん!?」
テレビ!?…って事は今、注目されている“国からの大事な話”ってのは男会の事だったのか?
「でも……そんな…無茶な…」
「わかっているよ。男がこれまでテレビに出た事なんてほとんど無い。しかも、極秘組織である男会という組織を公表した上でのテレビ放送なんて前代未聞だとボクも思う。」
でも………
「なんでそんなことをする必要があるんです?」
「もちろん、お前を精神的にも肉体的にも世間的にも潰して、男会の地位を守るためだよ。」
「え?」
だからテレビ放送か……
俺の気持ちは暗く沈み始める。
「あ、ボクはそんな事知らなかったよ。ボクは男会代表であるけど、男全員をまとめられているわけじゃないからね。仕事もそう、ボクがやるのは既に決まっている内容の最終決定と新しく入って来た男の男会でのサポートぐらいさ。その他の男会の大半の仕事は男会の地位が高い年長者が全てやっているんだ。」
咄嗟に皇さんは敵ではないと否定したけど……まだ信用はしているわけじゃない。
「潰す…か。……やっぱり富田 十蔵の事が原因ですよね……」
「あぁ、そうさ。男会副会長の富田十蔵を潰した優馬は富田十蔵側、つまり女のことを圧倒的に下に見ている男達全てを敵に回してしまったからね。」
別にその事については後悔してないから気にする事はない。俺もそっち側とは考えを改めてくれない限り永遠に敵同士であるからだ。
そんな事よりも……
「一応聞きますげど皇さんは女の子の事をどう思ってるんですか?」
返答事態でこの人の信用度が大幅に変わる。
「ん?女?ボクにとっては“どうでもいい”が答えだよ。多分ボク側に付いている男の大半は女に興味が無い奴ばかりだよ。まぁ、総対比的に富田十蔵側が8で、ボク側が2だね。」
ってぇ?ほとんどが敵じゃないか!?
「ていうか、そもそも、なんで皇さんは俺の味方をしてくれているんですか?」
皇さんの話を聞くに、皇さんはどちらかと言うと俺の事を気にかける必要なんてない。俺の今の立ち位置では、その2つの側のどちらでも無いからだ。いくら男会代表という役職についていたとしてもだ。俺の事を手助けしても何のメリットもない皇さんは今回の事で立場が危うくなるんじゃないのか?
「その……皇さんは俺に何を望んでいるんですか?」
率直に俺は聞いてみた。
「望んでいるもの?……まぁ、沢山だよ。」
「例えば?」
「例えば優馬をきっかけにして男会自体を変えるんだ。」
皇さんは大きめの声で興奮して言った。
「その方法を具体的にお願いします。」
俺はまだ信用出来ていなのでその方法をしっかりと聞かなければ納得できない。なので、冷静に説明を頼んだ。
「その方法は富田十蔵側の男達が優馬を潰すために仕向けたテレビ放送を利用するんだ!
富田十蔵側の男達は数の暴力で優馬を潰そうとするけど、大した理由は無いはず。だけど、こっちには女の被害者が多数いるし、富田十蔵という最大の証拠がある。それをちゃんと提示して優馬の考えを訴えれば富田十蔵側の男達は何も言えないはずだし、そのテレビを見た視聴者も納得してその風潮を伝えてくれるはずだよ。あ、安心してくれ準備はこっちでやって置いたから。」
それを聞いて俺は腕組みした。
「なるほど……勝機は充分にあるんですね。だけど、本当にいいんですか?いくら富田十蔵側の男と言っても皇さん自身がお世話になった人とかはいるんじゃないんですか?それでもし俺が男会で圧倒してしまった場合、その人達の信用と地位が脅かされてしまうと思うんですけど……」
それを聞いて皇さんは笑った。
「はっ、何言ってるんだ優馬、そんな男はあっち側にはいないよ。富田十蔵側にいる男は歴史に囚われている愚かな奴らばかりさ。
それに、男会に入ったばかりのボクを無理やり代表の役を任せてボク側の男の権限を弱くしたりだとか姑息な真似しかしてこないから、鉄槌を下さないとアイツらには分かんないのさ。」
皇さんは相当根に持っているようだ。
目がガチだ。
「じゃあ、分かりました。皇さんの言う通りテレビ放送を利用してやりますよ!」
俺は元気に言った。
「おう!その意気だ。絶対に成功させて男会を世代交代させてやろう!」
俺に続き皇さんは言った。
「よろしくお願いします。」
俺はこの人の事は信用出来ると確信した。
「頑張るのは優馬さ。ボクは精一杯支援させてもらうだけさ。」
そして、最後に俺と皇さんは固い握手を交した。
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