第120話 男会の準備


次の日……今日は男会当日の日だ。今日一日は辛く忙しい日になる……だろう。

そのため、朝から俺は相当の気合を入れていた。


いつもより早くから起き、大地先輩の家に行くための準備をする。


まぁ、特に荷物とかは無いんだけどね。


俺は今日は学校を休む予定だ。予め担任の奈緒先生には断っておいたし、雫や夜依には風邪で部屋にこもっている。という設定にしておいた。


準備は完了。電車の時間から逆算してそろそろ家を出なければならない。


俺は静かに部屋を出て音を立てないように階段を降りた。


台所からはいい匂いがする。


うっ……朝ごはんに茉優の作った料理を食べる事が出来ないのがとても惜しいけど、今日ばかりは仕方がない。


そして、今日の俺の朝ごはんはコンビニで買った安いパンだ。デパートの帰りに買ったので安い特売のパン1つしか買う事が出来なかった……


台所で朝ごはんを作ってる茉優は、昨日あげたプレゼントのおかげかいつもよりノリノリで鼻歌を歌ってるみたいだった。そんな茉優が俺に気付くはずもなく、お母さんに限っては爆睡中だ。かすみさんは……


「優馬様、こんなに朝早くにどこに行かれるのですか?」


ギクッ……


「か、かすみさん……」


俺は後ろから、かすみさんに声をかけられた。

元からかすみさんには誤魔化しきれないとは思っていたけどやっぱりそうだったな……


「学校……という感じでもないですね。事情…説明してくださりますね?」


く、今日は学校に行かないから制服を着ていなかった。もし着ていたら何かしらの言い訳ができたんだけどな……


「えっと……ですね。」


俺はかすみさんは信用できる人だ、という事は分かりきっているし、これまで何度も何度も協力をしてくれた恩もある。なので今回の件を事細かに話した。


「なるほど……男会、そんなものがあったんですか…」

「かすみさんは知らなかったんですか?」

「はい、やはり一部の女性と高校生以上の男性しか知り得ていない情報なのでしょう。」

「そっか……そうなんだ。」


国も男関係の情報だと情報規制を徹底するんだな。

あれ……って事は俺は情報漏えいをしてしまったんじゃね?お、俺はかすみさんの事を信用しているからこそ、は、話したんだからな。(焦!!)


「だから、頼みます。かすみさんで茉優、お母さん、そして夜依に俺の事で心配をかけさせないようにして下さい。」

「大丈夫なんですか……?」

「今回は大地先輩っていう協力者がいますから大丈夫です。」

「そうですか……分かりました、優馬様を信じます。ですが…………絶対に帰ってくると約束して下さいね。帰って来なかったら承知しませんからね。」

「はい。」


俺はハッキリと自信を持って答えた。


「じゃあ、後のことは頼みます。」

「了解しました。」


かすみさんはそう言い、俺の事を送り出してくれた。でも、かすみさんの表情を見るとやはりどこか心配そうだったのが俺の記憶に残った。


☆☆☆


ふぅ……やっと着いた。

俺は大地先輩の家に到着していた。


でも、電車通学とは大変なものだ。予め用意していた隠し通路の鍵で隠し通路に入れば女の子達にバレることは無いけど、降りる駅をいちいち気にしていなきゃならないし、駅を降りてもまだ家じゃなく歩かなきゃならない事だ。


まぁ、慣れなんだと思うけど……歩いて通学している俺にとっては中々の苦痛に感じていた。


大地先輩との待ち合わせの時間はもう少しある。

まだ朝早くて寝てるかもしれないので程よい時間になるまで大地先輩の家の前で待っている事にした。


まぁ、時間つぶしにはスマホが最適だよね~

俺は1人でそんなことを思いながらスマホをいじる。


俺はゲームは不得意で、スマホゲームとかはやったことが無いのは昔からで、俺のスマホにはゲームアプリとかは一切入っていない。ていうか入れ方が分からないんだけどね……


だから俺はスマホをいじる時は大抵ネットニュースを見ている。

ネットニュースは色々な正確な情報を得ることが出来るので俺的には重宝しているほうだ。だけど、芸能人の結婚だとか、出産だとかは別に興味はなくて、役に立たない情報も多いんだけどね……


でも最近気になっているのがこのニュースだ。


夜依が前に聞いてきたものでもある。“国からの大事な話”というものだ。


このニュースは様々な予想が立てられているが、国は一切情報を公開していない。そのため、注目度がとてつもなく高い状態になっているようだ。


俺自身気になっているので時間に余裕があったら見てみようと思っている。


☆☆☆


「お、優馬来てたか。」


大地先輩が家から出て来て俺に声をかけてきた。


その姿は紺色の高そうなスーツを着て髪も整えられていて、右手にはそれなりに大きめカバンを持っていた。


「じゃあ行くぞ優馬。」

「え?どこにですか。」

「どこって、男会が始まる前にお前の格好を何とかしないといけないだろ?」

「そうですね。」


俺は大地先輩がそこら辺の準備をしてくれると言われていたため、普段着で来てしまった。今から行くのは男のスーツを取り扱っている所かな。


俺と大地先輩は、大地先輩が用意していたという男専用の特別なタクシーに乗り、移動した。


数10分ほどタクシーに乗り、降りた場所は高層ビル群のハズレの方の小さめビルだ。小さいって言っても俺からしてみれば十分に大きいんだけどね。


「ここからは別々になるが安心してくれ、ここは男専門の美容室件高級ブランドの服屋だ。襲われる心配は無い。ここで、優馬の格好を整えてくれるからな。」


そう言って大地先輩は俺の事を送り出してくれた。


俺はビルに入ると、既に待っていたのか受付の人に声をかけられた。


「神楽坂 優馬様ですね?」

「はい。」

「では、ご案内します。」

「は、はい。」


淡々と話す受付の人は俺の事を案内してくれた。


エレベーターで上の階に行き、案内されたのは高級感漂う美容室だった。


そして、待っていたかのように美容師さんが俺の事を椅子に座らせた。


え?これって、コースみたいなものなの?


そんな喋る暇も与えられないほど物事は早急に進み、1時間ほど俺は髪を切られたり色々されて、最後にワックスを付けられた。


髪を切ったのに、鏡はまだ見ることが出来ず自分がどんな風に変わっているのかがまだ分からない。


次はスーツ選びだ。と言っても俺が選ぶわけじゃないらしい。勝手に受付の人が体を隅々まで採寸され、俺にあったスーツを選んでくれた。


俺が着るのはこの…真っ黒のスーツだ。初めの男会は第一印象が大切と大地先輩が言っていたけど、この黒いスーツは平凡と言うかそんな感じで、地味なんじゃないのかな……?


まぁ、いいか。俺はそこまで男会で目立ちたくない訳だし……


俺はスーツに着替え、ビルを出る。

ビルのエントランスで待っていた大地先輩が俺のことに気付くと近付いてきた。


「おお、すごいな……流石高いだけはある。最高に仕上がってるじゃないか優馬。」


大地先輩は俺の事を見てとても満足げだ。

最高の仕上がり?

え?なんで?


俺には大地先輩の言っていることが分からなかった。


「なんだお前、鏡見てないのか?」

「あ、はい……そんな事している暇なんて無かったので……」

「しょうが無いな。ほら、これで今の自分を見てみろよ。」


大地先輩から手鏡を渡され自分の顔を見てみる。


「って………ええっ!?」


髪は短めに切られ、オールバックでワックスで固められて、男らしさ全開の感じになっていた。それにこの黒い服も丁度よく俺に馴染んでいて、服が俺の事を引き立ててくれている。


なんだこれ……カッコイイッ!!


自分を見ただけなのに何故か興奮してしまった。

あ、だからさっき受付の人とか美容師の人とかの呼吸が少しだけ荒かったのかな……?


「よし、時間も丁度いいな。じゃあ今から男会に行くぞ。覚悟は……もう出来てるか。」


大地先輩の問いかけに、


「は、はい。勿論ですよ。」


と、答えた。でも、まだ緊張は解けている訳では無い。男会の時間が近付くにつれ緊張は強くなる。


でも、頑張るしかないんだ。大地先輩がここまでしてくれたんだ胸を張って頑張ろう。


「じゃあ、行くぞ。」

「はいッ!」


俺は元気よく答えた。


☆☆☆


「所で、男会ってどこでやるんですか?」


タクシーに乗り込んだ俺と大地先輩は世間話や男会の事を話していた。


「ん?今回指定されているのは珍しく都市だぞ。」

「都市ですか……」


都市って事は俺のいる所よりも人がいっぱいいるんだよな……


俺のいる所も人口が多くて多少怖い所があるんだぞ!?それの倍以上の数が今から行く都市にはいると思うからそんな所で女の子達に囲まれたら絶望だぞ……気を付けなきゃな……


俺はそんな不安を抱えながら、都市に向かったのだった。


☆☆☆


数時間ほどタクシーに乗り、ようやく都市に到着した。


俺は窓から都市を覗いてみる。


おぉー、人もいっぱいいるしファッションも独特だ。それに大きいビルも沢山ある。

それに、遠くに巨大ビルより更に大きい青色の塔みたいな物もあるし……1回女装をして観光してみたいなぁ~なんて思った。


お、あの建物見た事あるぞ!


俺は遠くからだけど、転生する前に見た事がある建物にそっくりな建物を見つけた。


これって確か───


「──あぁ、そうだ。言い忘れていたけど、今回の男会の会場は国会議事堂で行われるらしいぞ。」


俺が建物を見て驚いているのを横目に、大地先輩が教えてくれた。

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