第111話 席替えの時間


月曜日。

夜依が婚約者の証を付けているのが話題になりやっと落ち着いてきたころ…


「今日の授業は席替えをしようと思います。」

「「「「「「おおっ!!!!」」」」」」


奈緒先生の突然の席替え発表にクラスの皆は驚いたが歓喜もした。


席替えか………今の窓側の1番後ろの席は気に入っていたんだけどなぁ。まぁ、雫や夜依や由香子達とは席が離れていたし、別の女の子と更に仲良くなれる良い機会だと思った。


「優馬君ー♪離れたくないよぉーっ。」


春香が悲しそうに言った。


「大丈夫だよ。たとえ席が離れたとしても同じクラスなんだし、一生の別れという訳じゃないんだし……」


ちょっと春香は大袈裟だった。


春香は俺と近くの席で、ずっと仲良くしていた。俺も春香といるのは楽しかったし少し名残惜しい感じはした。


奈緒先生の席替えのルールの説明を聞き席替えをする。


まず、席替えはくじ引きで決められる。

くじは細工ができないように予め奈緒先生が作っておいたそうだ。正々堂々運に委ねて欲しいとの事だ。そのくじを箱に入れて順々に取っていく方式だ。


「じゃあ出席番号順に取りに来てください。」


奈緒先生の指示で出席番号順に取りに行った。


数人が引き終わり、次は俺の番だ。


奈緒先生の元に行き、箱に手を入れる。

紙をぐるぐるかきまわし1つの紙をつかみ、取り出す。


皆がかたずを飲んで見守る中、俺はくじを開いた。


俺の席は…………マジか…………1番ど真ん中の席だった。

俺の結果を奈緒先生に伝えると、俺の近くの席になって喜んでいる子がいたり、俺と離れる事が決定して落ち込んだりしている子がいた。


そして皆が狙う席が決まった。

それは優馬の周りの席だ!!


「……くっ………また優馬と近くになれなかった。」


雫が引いたくじを握りしめて悔しそうにしていた。

雫は俺とかなり離れた後ろの1番窓側で、前に俺が座っていた席だった。


それを見てなぜか夜依は嬉しそうにしているのは気の所為だろうか?


次は夜依の番だ。


夜依には優馬の近くの席を引けるという謎の自信があった。その自信の理由はこの指輪にある。


夜依の左手には婚約者の証である紺色の指輪が光り輝いている。夜依は寝る時とお風呂、特別な理由が無い限りこの指輪をずっと身に付けている。


この学校では原則、貴金属を身に付けることは禁止されている。だが婚約者の証は別だ。

婚約者の証とは男の婚約者だと1発で証明するための特別なものだ。

なのでこの指輪だけは特別に身に付けることを許可されている。学校も男関係でトラブルになりたくないのだ。


そんな特別な物を持っている夜依は最近絶好調中だった。


例えばテストで難しく夜依でも分からなかった問題を適当に書いたら正解したり、当たり外れがあるアイスで1人だけ当たったり、1人である店に行った時に来店1万人記念で全商品半額になったりなどだ。


その時の夜依は婚約者と正式になって、浮かれていたのか考えればそんなのはただの運が強かったと分かるはずなのに全部この指輪のおかげだと思っていた。


「よし……」


夜依は自信満々にくじを引いた。

そして中を開く。


「そ、そんな……まさかっ!」


夜依は悲惨な声をあげた。


なんだなんだと俺は思ったが、すぐにその理由が分かった。


夜依は雫と隣の席だった。


俺から席が大幅に離れ現在進行形であまり仲が良くない雫と隣という2つの事に夜依は声をあげたのだ。


雫も夜依が隣と分かり微妙な顔をしていた。


今回の席替えの結果!!


俺はど真ん中の席。隣は由香子で後ろは春香だった。それに周りもあまり話したことの無い女の子達だったので仲良くなれたらいいと思う。


そんなことより心配なのがあの二人だ。

席を出来るだけ離し、2人ともそっぽを向いている。


あちゃ……まだもう少しかかりそうだった。


俺はもう少し見守っていくことにする。


今は互いにいがみ合っているが数年後には大の親友にまで、仲を発展させている………かも。まぁ、それはまた別の話だ。

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