第110話 夜依とデート!!
「夜依!今週の土曜日にデート行かない?」
二学期がスタートし数日が経ったある日のこと、俺は突然だったけど夜依の事をデートに誘った。
「わかった。予定空けとく。」
夜依は即答した。
よし、心の中でガッツポーズをとる俺。今週の土曜日初、夜依とのデートに出かけることが出来る。その事に俺は歓喜した。
じゃあ、予定通りあれの用意をしなきゃな。
俺は準備を始めた。
☆☆☆
土曜日。
朝、俺は素早く目覚めると事前に用意していた服に着替え軽く身支度をする。
「おっと、危ない危ない。これを忘れるところだった。」
俺は危うく忘れるところだった小箱をポケットに入れた。
よし、これで用意完了だ。
俺は部屋を出て1階に降りた。
「おはよう夜依。」
夜依はもう1階にいて俺を待っていたようだ。
「や、夜依!?」
夜依の私服は最近一緒の家に住んでいることから見慣れてはいたけど今回の服は尋常でないほどの可愛さがあった。思わず2度見してしまうほどだった。
夜依の服のチョイスは大体が黒や紺色の暗い色が多い、だけど今夜依が来ている服は真っ白い純白なワンピースだった。繊細な刺繍がされ夜依の美しさをさらに引き立てている。頭には大きめの麦らわ帽子を被り、夏の季節にもあっている……そんな見た目だった。
それに珍しくメイクもがっっつりとしていて夜依の美しさがさらに引き立っていた。
「ゆ、優馬……」
夜依は俺に気づき恥ずかしそうに顔を麦わら帽子で隠した。その仕草も正直言って可愛いよ夜依……
「どうしたのその服?それにメイクも……」
いくらデートと言っても夜依は黒や紺色の服で来ると思っていた俺だけどどういう風の吹き回しだろう。今日はものすごく気合いを入れたのかな?
「えっと、かすみさんに……デートの服を選んで貰おうと思って相談したら……折角だから服を作ってくれるって言ったから……それにメイクもしてくれるって…えっと……だからこういう感じになったの……」
夜依はいつものキャラが崩れるくらい恥ずかしがっていた。
流石かすみさんだ!!俺の喜びそうなポイントをしっかりと抑えている。
俺の中でかすみさんの信頼度は上限を突破しているのだけどさらに信頼度が上がった。
「私にはこんな白い服似合わないと思うんだけど……」
「そんな事ないよ。俺はすごく似合っていると思うよ。」
「そ、そうかな……」
数分立ち話をした後、
「行こっか。」
「ええ。」
夜依と俺は一緒に家を出た。
外は快晴。日照りがやっぱり8月だから強いな。
俺も帽子でも被っておけばよかったと少し後悔した。
「手………でも繋ぐ?」
俺はそう言って右手を差し出した。
一応デートだし………そういうデートらしい事もしたかった。
「そ、そうね。」
俺は初めから緊張しっぱなしだけど珍しく夜依も緊張気味のようだ。やっぱり服装とメイクが効いているのだろうか。
「まずどこに行くの?」
夜依は今日のデートの予定を聞いてきた。
「暑いからなるべく外は歩かないようにしたいから。今日は最近できたデパートがあったでしょ?そこに行く予定だよ。」
「それはいい考えね。」
という事で俺と夜依は新しく出来た超巨大のデパートに行く事にした。
そのデパートは俺の家から結構近いところに出来たので歩いて数分で行ける。すごく便利だと思うので毎日通いそうな気がするや。
デパートは敷地が東京ドーム何十個分とかもあって、しかも何十階も階層があるのだ。
こんなの1日で回るのは難しそうだ。
デパートに着くと、デパートは人でごった返していた。やはり新しく出来たデパートからか想像以上に人が多くいた。男の俺に気付くと俺に視線が多く集まった。
だけど、夜依が隣にいたからかジロジロと見つめるだけで話しかけては来なかった。やっぱりこの世界の風潮みたいなものなのかな…
男の隣に親しい女がいると決して邪魔してはいけないみたいなもの。
それか男とは未知な存在なのでどう話しかければいいのか分からないのか?
でも、俺と夜依が仲睦まじい仕草をするとどこからともなく舌打ちや歯ぎしりの音が聞こえるのは俺の気の所為だろうか……
そんなこんなで初のデパートに俺と夜依は迷いながらも存分に楽しんだ。
夜依も常に笑顔だった。
その笑顔を見れて俺は色々と頑張って良かったと心から思った。
昼食をフードコートで食べ、買い物を一緒にする。
夜依は夜依専用の食器や学校で使う文房具、お菓子とか、それに服とか……下着とかの日常必需品を買っていた。
さすがに下着屋さんとかには俺は入らなかったけどね。夜依は下着を選んで欲しかったのか少し不満げだった。
一通り夜依の買い物を済ませ、次はゲームセンターでとことん遊んだ。
俺はゲームはあまり得意ではないけど夜依も、そこまでの腕前だったのでいいぐらいの勝負で楽しかった。
やっぱり大好きな人といると時間が経つのがあっという間で、もうそろそろ帰らないといけない時間だ。
「そろそろ帰るよ。」
「うん。」
その頃には自然に手を繋ぐ所までに至っていた。
☆☆☆
「所でどうして私の事をデートに誘ったの?」
デパートから家に帰る途中夜依は聞いてきた。
外はもう太陽が消えかかり、暗くなってきていた。
「ん?だって、夜依はもう俺の婚約者だろう?だから婚約者の証をプレゼントしたくて。それと学校の課題テストも終わって、やっと落ち着くことが出来ると思ってね。」
そう言って俺はポケットから小箱を取り出した。
パコっとその箱を開けて夜依に見せる。
「これ、俺から。婚約者の証だよ。」
箱の中には月の形をした紺色の指輪が暗闇を感じて光っていた。
☆☆☆
遡ること数日。
俺は女装をして1人で買い物に来ていた。
さすがに1人だと普通の格好では行けないからね。
来た場所は雫の婚約者の証を買った場所と同じ宝石店だ。少し古い建物だけどここの宝石店はかなり有名で前来た時もすごいものが沢山あった。この宝石店では前に指輪をタダで受け取る代わりに次の婚約者の証を買う時は必ずここで買うという約束だった。俺は約束を守る方なので今回もここに来た。
「らっしやぁい。」
女装姿の俺に前に対応してくれた20代くらいの女性が店の奥から出てきた。
「あのー」
俺は事情を説明した。
「うおえっ!?あの時の男性だったんですか!?」
俺が女装していた事にかなり驚いたようだ。
「そ、それでこの店に今日は何用で……?まさか前回譲った指輪へのクレームですか!?」
「いいえ、違いますよ。あの指輪はすごくいい物でしたよ。だから今日は婚約者の証を買いに来たんですよ。今回はしっかりと買いにね。」
「あぁそうでしたか。良かったです。」
女性はふぅと不安を払拭したため息をついた。
簡単な会話をし、俺は店の商品を見る事にした。
まず、夜依に渡す婚約者の証を何にすればいいだろうか……指輪?ネックレス?それともイヤリングだろうか?
雫には指輪を渡したから夜依にも指輪かな……婚約者の証ってそんな感じがするし……
指輪を買うということには決まった。だけど次はそれに着いている宝石だ。
どんな色の宝石にしようか。俺は指輪を見ながら必死に考える。あまり高いのは買えないと思うけど一応候補を作っておく。
真っ赤に燃えるように光る指輪、緑色に自然感が強く出て発行する指輪、紫色で深みがある指輪などだ。
そこで最後に見つけた。
リングの部分は純金で、宝石の部分は夜依にピッタリ合いそうな紺色にした。さらにその宝石は月のような形に削られていて夜依の趣味にもあっているだろう。
夜依は普段から月のマークが好きらしくかなりの確率でそういうものを身につけていたのは確認済みだ。これしかないと思った。
ちょっと地味かもと思うかもしれないけどこの指輪は少し特殊で暗い部屋でこの指輪を付けていると淡い紺色で光るのだ。
「これにします。」
「分かりました。って、これなかなか値段が張りますけど大丈夫ですか?」
「はい、今日はこれを持ってきたので……」
そう言って俺は懐から黒色のカードを取り出す。
これはブラックカードだ。お母さんに貸してもらったんだけど何円でもドンと使ってこいだそうだ。
まぁ、俺は遠慮してこういう時ぐらいでしか使わないんだけどね。
お母さんに感謝しながら俺は指輪を買ったのだった。
☆☆☆
「ありがとう……」
夜依は指輪を見て笑顔で言った。
良かった気に入ってくれたみたいだ。
「これよかったらでいいけど付けてくれない?」
「わかったよ。」
俺は指輪を取り出し夜依の左手の薬指に付けた。
サイズは……丁度いいみたいだ。
「改めて言うけど俺の婚約者になってくれないかな?」
返事は分かっていたけど一応気持ちを確かめるために言った。
「改めて聞く必要もないでしょそれは……もちろん返事はOKよ。」
うっし!
「じゃあ行こっか。」
俺は元気に言い、歩き始めた。まだ少しだけ照れくさくて夜依の顔が見れなかったからだ。
「優馬……」
夜依が俺の名前をボソッと言ったその時だった───その声に俺は前を向くと目の前にいつの間にか夜依がいて、反応することも出来ず、俺は唇を奪われていた。
「!!!!!?????」
突然の事に状況を理解することが出来なかった俺だけどキスが終わった数秒後にやっと今何が起きたのかを理解した。
「どうしたの……夜依、突然。」
「えっと………感謝の気持ちを行動で伝えただけよ。」
と、夜依は冷静な表情で言ったけど耳元は真っ赤に染っていた。
☆☆☆
夜依は本心では婚約者の証を貰って飛び上がりたいくらい嬉しかった。これで本当の婚約者になれたのだから。
それに胸がジーンと熱くなり体が優馬を求めた。
だけど気恥しい。夜依にはまだ冷静さがあった。
そしてその冷静さは無意識に優馬を求める感情を抑えていた。
だけど優馬も欲しい………
あー、何考えてるの私っ!!
心の中で自問自答を繰り返し、気持ちの交差に何とか終止符を打ち、恥ずかしいが耐えられるぐらいのものを優馬にしようと心の中で決まった。
決まったのなら早速行動に移す。それが夜依だった。それで今に至る。
夜依は心の中でものすごい後悔を感じていた。
いくら感情が高ぶっていたとしてもいきなりキスをするのは…どう考えても頭がおかしい人だ。
何やってるの私、バカなんじゃないの?
自暴自棄になりたい気持ちを抑え必死に冷静さを保つ。今優馬の顔を見たら冷静さを保てないと思うので夜依はそっぽを向いた。ついでに距離もとった。
「夜依……」
優馬が声を掛けてくる。
「そ、その……これはね。違うの……」
「ん、何が?こっちを向いて話してよ。」
夜依は無言で頭を横に降った。
そんなの無理……
今は本当に無理なの……
「なんでだよ。」
優馬は私に近づき肩を掴んだ。
「どうして?」
優馬は私の事を振り向かせた。
あ……優馬が目の前にいる……っ。
も、もう…………抑えられない。
そして、夜依は今まで抑えていたものが爆発してしまった。
──ぎゅっ
夜依は優馬の事を抱きしめていた。
もう自分では止められなかった。まさしく夜依の感情が一定量の興奮を超えてしまいキャパオーバーしてしまったことだ生じる状態……つまりフィーバー状態だ。
「優馬から貰った指輪が嬉しすぎたのっ。今までずっとずっとずーっと欲しいと思っていたの。雫の婚約者の証を見て更にその気持ちは高まったの。」
言葉にいつもの冷静さなんてものはなかった。ただ、心の中で思う事をそのまま口に出していた。
少しずつ再び積み上げていった夜依の冷静キャラはこの瞬間、音も立てずに崩れ落ちた。
残ったのは素の単純に優馬の事が大好きな
「優馬の事は心から尊敬していて愛しているの。だから一言だけ言わせて……“ありがとう”って。」
夜依は最高な笑顔を浮かべながら言った。
「それに、私は私は………」
優馬への想いなんて数え切れないくらいほぼ無限に出てくる。だけどそのフィーバー状態の夜依はすぐに終わりを迎えた。
「はうっ……」
冷静に戻った夜依は自分が言ってしまった事に恥ずかしさで顔を更に赤くさせながら優馬から離れた。
「い、今のは忘れて………お願い。」
夜依は珍しくテンパりながら優馬に頼む。
「う、うん。わかったよ。」
「じゃ、じゃあ私は先に戻るね。」
そう言って両手で顔を隠しながら夜依は優馬の家に戻った。
1人ぽつんと残された優馬は夜依のコロコロと変わる謎の現象に頭がついていかず、ぽけっとしていた。
(数秒後に状況を理解し、大声で叫びながら喜んだ。)
☆☆☆
─────あ、あ、あああぁぁぁぁッッッ、私は何をやってるんだァァァァァァァ
夜依は自分のベットの枕に顔を押し付け叫ぶ。
なんで私はあんな事をッッッ!!!!
今思い出しただけで、悶え死にたくなる。
そんな夜依が苦しんでいる中……夜依の左手には優馬が付けた婚約者の証の指輪がしっかりと付けられていて紺色に光り輝いている。
夜依はこれから毎晩後悔の念に取り憑かれるのだった。そんな夜依がいつも通り優馬と話せるようになったのはデートから数日経った時だった……
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