男会&新居 編
第109話 二学期スタート
「ふわぁぁ~」
俺は大きなあくびをしながらゆっくりと体を起こす。
朝の日差しが窓から部屋に降り注ぎ、外では小鳥のさえずりが聞こえる。いい朝だ。俺は体を伸ばしながら思った。
今日からやっと二学期がスタートする。
久しぶりに皆と会うので俺はすごく楽しみだ。
ウキウキしながら身支度をしようと制服を手に取る。
この制服も久しぶりに着るな。
久しぶりに着る制服は少しだけ小さく感じた。
もしかして俺、成長したのかもな。
俺のケガは2ヶ月の入院でだいぶ完治した。足はもう普通に歩けるし、右手もまだ少しだけ痛むけど全然使えるほどには回復した。問題の左手はやっぱり小指と薬指の感覚が無くなっていた。
力を入れようと意識するけど全く動かせなくなっていた。
だけど前も言ったけど後悔なんて一切ないからあまり気にしていないんだけどね。
左手の傷は深くえぐれすぎていて見せられたものじゃなくなっていたので傷を隠すために包帯を巻くことにした。なんか厨二病になった気分だけど仕方がない。
まだ治りかけの部分も多いので運動はもう少し後と先生に言われた。
俺は2ヶ月間全く運動もしていなかったので外に出られるだけで嬉しいんだけどね。
よし、これで準備OK。
身支度が完了し前の日に用意していた鞄を持ち俺は部屋から出た。
「おはよう……優馬。」
すると、俺を待っていたのか、3人目の婚約者である夜依が声をかけてきた。
夜依も制服姿も久しぶりに見たな。
じっくり堪能したい所だけど登校時間が迫っているのでそれはやめておいた。
「おはようー、夜依。」
夜依は今俺の家に住んでいる。
夜依は俺の部屋の近くの来客用の個室を使ってもらって生活をしている。
この家はかなり大きい家なので空き部屋はかなり多くあり、夜依が住むことは可能だった。
だけど………問題があった。
夜依の事情は全てお母さんと茉優に説明をした。俺の新たな婚約者だということも。
勝手に決めてしまったことに申し訳無かったけど、お母さんと茉優は渋々事情も考慮してここに住むという事だけは認めてくれた。
だけどまだ俺の婚約者としては認めていないらしく2人は意心地が悪そうにしていた。
遠慮というのかは分からないけど最近は朝食も夕食も家族全員で食べていない気がする。俺は正直寂しい。
夜依もまだここの生活に慣れていないのかお母さんと茉優には距離をとっている感じもする。
何か対策を考えないとな。
俺の優先順位のするべきことリストの上位にくい込んだ問題だった。
夜依と2人で朝食を食べ2人で一緒に家を出る。
さぁ、久しぶりの学校だ!皆とは久々に会うけど変わってるかな?どうだろうな……
今の俺は完全に学校にやっと行けるということでテンションがかなり高かった。
「……おは…………………………よう!?」
いつも通り1人目の婚約者の雫が家の前で待っていてくれたんだけど……俺と夜依が一緒に家から出てきた事にものすごく驚いたのかいつもの雫とは考えられないほど動揺した表情になった。
「……説明よろしく優馬。」
だけどすぐに冷静な表情になり、俺に説明を求めてきた。
そういえば雫に夜依の事を説明しておくことを忘れていた。一緒に入院していた葵には説明したんだけどなぁ。
「わかったよ。」
俺は夜依の事を細かに話し、今夜依は俺の家に居るということも話した。
「………なるほど……3人目ね……それにもう、優馬の“家”にいるのね…………………よろしく夜依さん。」
ちょっと俺の“家”の所を強調して言った雫。
「“さん”はいらないですよ。同じ年齢だし同じクラスだものね。」
あー夜依も張り合うようにして“さん”の部分を強く言ったよ……
「……わかった夜依。」
「よろしくね雫。」
んー?なんだろう?なんかピリピリしている雰囲気があるんだけど?
俺には女の子の気持ちとかはよく分からないので口出しは余りしないようにしておこう……
頭のいい2人だ最後は意気投合して仲良くなってくれるはずだ。それに今のこんな態度なのは何か策略?みたいなものがあるはずだと俺は思っている。
仲良くして欲しいけどまだもう少しかかりそうな感じがした二学期初の登校だった。
☆☆☆
学校に着くと皆から駆け寄られて声をかけられた。夏休み俺と会えなかったからだ。皆を見ると日焼けしている女の子が多かったけどそれぐらいであまり変わっている様子はなかった。元気そうでよかったよ。
俺が大ケガを負ったということはあまり話を広めないことにした。知っているのは俺の婚約者達と担任の奈緒先生、そして大地先輩ぐらいだ。他の人には迷惑と心配をかけたくないから伝えないようにして下さいと俺が頼んだのだ。
「私はこれから生徒会室に行ってくるから先に行ってて。」
夜依は俺にそう伝えた。
「うん。わかった。」
生徒会室?何か用事があったかな?
まぁ、いいか。夜依は俺と同じ生徒会の一員だから呼ばれていたとしても不思議じゃないしね。
俺の言葉を聞き夜依は足早に生徒会室に行ってしまった。
「……行こう優馬。」
俺と雫は教室に向かった。
なんか懐かしいな。この廊下。数ヶ月歩かないだけでここまで懐かしく感じるんだな。
久しぶりの学校を肌で感じながら、俺は元気よくクラスに入った。
「おはよう!!!」
皆の視線を感じながら俺は大きな声で言った。
「「「「「おはよう!!!!!!!!」」」」」
クラスの女の子達は俺に気づくと一斉に言葉を返してくれた。
春香や由香子、別クラスの葵や菜月も会いに来てくれた。皆は全然変わっていなかった。
日常がやっと戻ってきたようですごく嬉しい気分になった。
☆☆☆
夜依は生徒会室に来た。
今日は夏休み前に渡した退学届けを預かってもらっている生徒会長の空先輩に呼び出され、退学届けを回収しに来たのだ。
「失礼します。」
夜依は数回ノックを入れ、生徒会室に入った。
「おぉ、やっと来たか!待っていたぞ夜依。」
「お久しぶりです空先輩。」
空先輩は生徒会長の高級そうな椅子に腰をかけながら笑顔で言ってきた。
「決着は着いたんだな?」
「はい。」
「大地から聞いたんだがそれなりに相手は大きい組織のやつだったんだな?」
「はい。」
空先輩の質問に淡々と答える。
「まだ、出さないでよかった。
そう言って空先輩は私の退学届けを返してくれた。
良かったもう出されているのでは?と少しだけ不安だった夜依。退学届けをみてその不安は消し飛んだ。
「もう、そんなものいらないはずだ。勢いよく破ってやりな!」
そうだ、私には優馬がいるのだ。もうこんなものいらない。
夜依は思いっきり退学届けを破り捨てた。
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