第101話 お仕置
「何をしているんだい、お前たちは?」
「「!?」」
そこには富田十蔵がいた。夜依は咄嗟に書類を自分のポケットに押し込んだ。丁度月明かりもないのでバレなかったと思う。
富田十蔵は部屋の電気をつける。
「19番と25番だな。こんな時間にここで何をしていた?」
富田十蔵の顔を夜依は確認すると、鬼の形相をしていた。
「何をしてるんだと言っているんだ!」
そう怒鳴る。
そしてバキッという鈍い音と共に19番さんは殴られた。
「ぐっ。」
声を上げてうずくまる19番さん。
「ルール違反だね。言ったよね、ボクの事を常に考えて行動しろって。でもこの行動はボクを陥れようとする行動だね。」
うずくまる19番さんを見ながら富田十蔵は言った。
「ど、どうしてこんな深夜に………」
19番さんは言葉を震えさせながら言った。
相当の恐怖なのだろう。
「ボクはね慎重で天才なんだよ。妻達がボクに反逆しようとするかもしれないというのを常に頭に置いているんだよ。だからね誰にも気づかれないように極小の盗聴器をほとんどの部屋に仕組んでたんだよ。だからキミ達2人の会話は全てボクに筒抜けだったのさ。まさかこんなに早く行動に移すとは思わなかったけどね。」
富田十蔵は自慢げに説明した。
それを聞いて夜依は絶望する。
盗聴器なんて全く予想出来なかった。
今までの19番さんとの会話を全て聞かれていたという事は優馬が私を助けるために動いていることがバレたということ。
夜依は膝をつき、うなだれる。
ごめん……優馬。
「で?何を見つけたんだい?」
この部屋で言った言葉もしっかりと富田十蔵は聞いていたらしい。だが、何を見つけたのかなどは言っていない。咄嗟に書類を隠して正解だった。
夜依が咄嗟に否定しようとした時、それよりも早く19番さんが答えた。
「…………私達は何も見つけていません。」
自分だけが知っているという風を装って……
19番さんはまだ諦めてなんていなかった。絶望なんてこれっぽっちもしていなかった。
「そうか。」
ボカッ……
「くっ、」
再び、19番さんは殴られた。次は手のひらではなく拳でだった。19番さんの頬は赤くなり、口からは血が出ている。
髪を留めていた白いカチューシャが殴った衝撃で外れ部屋の隅まで転がっている。
それでも、19番さんは富田十蔵の事を強く睨む。
「なんだよ、たかが下等種の女のくせに男であるボクの事をそんな目で見るんじゃないよ!それになんだよ。これから優馬くんが助けに来るとでも思うのかい?ふざけるなよ。ボクの女のくせになに他の男に媚びを売ってるんだっ!」
富田十蔵は声を荒らげ、19番さんを再び殴る。
そして倒れた所を馬乗りになりまた殴る。
殴る音はさっきよりも大きく部屋に響く。
バキッ、ボガッ、ドガッ………
「あがっ……ぐふっ……」
血が飛び散る。そして悲鳴も聞こえた。
……だけど途中からはただ殴る音だけになった。
その暴行は徹底的に行われた。
夜依は恐怖でそれを見ているだけしか出来なかった。何度も助けようと思った。だけど体が動いてくれなかった。
数分間殴り続けていただろう。疲れたのか息を切らしながやっと暴行をやめ、立ち上がる富田十蔵。
夜依は恐る恐る19番さんの顔を見る。
「っ!!19番さん……」
19番さんの顔はぐちゃぐちゃで血まみれ。顔の原型もないほどに殴られていた。歯もほとんどが折れ、鼻もへし曲がっている。
それは余りにも酷く惨い状態だった。
もう意識は無い。ただ荒く小さな呼吸を必死に繰り返しているだけだった。
「お前たち2人にはこれからお仕置をする。それも飛びきりキツイやつをね。精神と体の両方をぶっ壊して二度とボクに逆らえないようにしてやるよ。」
そう言って19番さんの髪と夜依の腕を掴んだ富田十蔵は引きずりながら部屋を出た。
「いやっ!!」
必死に叫んで振りほどこうとする夜依だったが想像以上に富田十蔵の掴む力が強く振りほどくことが出来ない。
「うるさいな、疲れている他の妻達に迷惑だぞ。」
そんなのお構い無しに抵抗し続ける夜依。
「もう、暴れんなって。ボクにこれ以上、手間をかけさせないでくれよ25番。」
「私は25番なんかじゃない。私には夜依と言うちゃんとした名前があるっ!」
夜依は言ってやった。
「あーあ。またルール破ったね。名前を番号にしたはずだろ。もう忘れちゃったのかな?確か頭がいい子だって聞いたんだけどな……まぁ、いいや後でしっかり調教してあげるし…………まず、それのお仕置だね。」
そう言った瞬間。
一瞬だけ夜依の意識が飛んだ……
富田十蔵が思いっきり夜依の溝落ちを殴ったのだ。
意識が戻ると痛みが夜依を襲う。
「かはっ、」
夜依は殴られたお腹を抱え倒れ込み地面を転げ回る。痛みで息ができない。
歯を食いしばっても全然治らない。
想像以上の力だ。こんなに太っているのにどこにそんな力があるのだろうと思った。
そしてついには夜依も気絶してしまった。
「ふぅーやっと大人しくなったな。ブヒヒ……」
笑いながら言う富田十蔵。
その顔は欲望に満ちている。
気を失う2人を引きずりながら富田十蔵はどしどしと足音を立てながらお仕置部屋まで向かうのだった。
☆☆☆
かすみさんは誰かに連絡をとった。
だけどその人は電話には出なかった。
「えっと、誰に連絡してたんですか?」
かすみさんはスペシャリストと言っていたけど……どんな人なんだろう?
「優馬様も1回会ったことがあると思います。電磁 凪の事ですよ。」
「あ、あぁ、凪さんか。」
凪さんはお母さんの下着の会社で働く社員で、天才ハッカーだ。だけどこの人もなかなか特殊で男には全く興味がない代わりに男の下着には興味があるらしい。
前あった時も下着をくれとせがまれたな。
もちろん断ったけど。
「寝てるんですかね?」
まだ寝る時間には早いと思うけど……
「いえ、恐らく仕事の連絡だと勘違いをして気付かなかったふりをしているのでしょう。彼女はそういう性格なので……」
かすみさんは呆れたように言う。
「優馬様のスマホで連絡してみてください。きっと出ると思いますので。」
「わ、わかりました。」
俺は凪さんに連絡をしてみた。
名刺に書いてあった電話番号を登録しておいて良かった。
プル、プ─
「はい、凪です。どうしたんですか優さんっ!」
うわ、ワンコールで出たよ。
凪さんは俺が連絡してきた事でものすごく喜んでいる。もう興奮状態だ。
「その、頼みたい事があるんですけど……」
「はい!私に出来ることがあるのならなんでも言ってください。ですけど………分かってますよね?」
なんか話が早いな……
「報酬の事ですか?」
「そうです。もちろん報酬は優さんのパンツを何枚かです。洗ったものでも、脱ぎたてでもなんでも構いません。ですが未使用はダメですよ。」
「はぁ……分かりました。緊急なので。説明はかすみさんに任せているので細かいところはかすみさんに聞いてください。よろしくお願いします。」
凪さんの変態っぶりにドン引きしながら俺は話を進める。
「か、かすみさん……ですか?」
かすみさんと言った瞬間に凪さんは驚く。
多分だけど凪さんは今顔を青くしているのだろう。
「じゃあ、お願いしますね。」
「…………………りょ、了解です。」
そう言って電話を切った。
「かすみさん後は頼みます。俺は準備をしますので。」
そう言って俺はかすみさんにスマホを渡した。
「分かりました。任せてください。」
これで夜依が今どこにいるのかが分かるはずだ。
そこに突入するために俺は準備を進めなければならない。
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