第88話 久しぶりにイチャつきたい!
テストの終わった俺はすぐに力尽きた……疲労が限界を迎えたのだ。
だけど満足いくまでテストに集中できた。これなら高得点を期待できるな。夜依にもたぶん勝てるだろう。
俺はそこからの記憶が無い──
「──はっ!」
気が付くと俺は保健室のベットに寝かされていた。いつの間にか気絶していたらしいな。
さすがに今回は気合を入れすぎたかな……気絶するほど頑張るってどんだけだよ……と自分で自分がバカだなと思う。
まぁ…でも今の俺、青春を楽しんでいるよなとひしひしと感じる。
保健室の窓から外を見ると既に日が落ちかけていて、そろそろ下校時間のようだった。
どうやら数時間ほど眠っていたらしい。
部活も多分終わってると思うし、もう帰るか……
俺は帰ろうと、ベットから起き上がると隣に雫がいた。雫は椅子に座って壁にもたれかかっている。
「……すぅすぅ……」
「雫……?」
呼び掛けにも答えない。どうやら眠っているようだ。可愛い吐息を立てながら眠っている。か、可愛い……な。
雫もテスト勉強を頑張っていたはずだし疲れてたんだろうな。
別に俺の事を待たなくて、先に家に帰って貰ってていいのに……だけど雫のそんな一途な所が俺は大好きだし、待っててくれるだけでものすごく嬉しいからいいんだけどね。
「雫、雫。」
雫を起こそうとしたけど雫は目覚めない。
しょうが無いね。
もう少しだけ寝かせてあげよう。
寝ている雫を見てすぐに帰りたいという気持ちは無くなり、もっと雫の寝顔を見ていたと思った。
そうだ、この体勢じゃ寝づらいよな。
俺は静かにベットから抜け出し、雫を自分の寝ていたベットに寝かせてあげた。起きないか心配だったけど雫は起きることはなく幸せそうに眠っている。やっぱりこっちの方が寝やすかったんだね。
よし、今のうちに
保健室を見渡してみても先生おろか誰もいなかった。
雫が起きたら職員室とかに行ってみるとするか……
それまでじっと待つことにする。
そして俺は気がついた……今この瞬間、雫と2人っきりだという事に。
まぁ、学校生活のほとんどの時間を雫と一緒にいる俺だけど密室に2人っきりという経験はあまり無い。大好きな女の子関わらず、女の子とこういう場所にいると何故か分からないけど男ってドキドキしちゃうよね。
それにこれまで勉強のことしか考えていなかったけど、今日でテストが終わった。しばらく勉強のことは考えなくて大丈夫だろう。だから久しぶりに雫とイチャイチャしたいなという欲望が強まる。
だけど寝ている女の子にイタズラでもしたら変態認定不可避だし……ここは我慢して雫を起きるのを待つとするか……イチャイチャなんて雫が起きている時にすればいいだけだしね。
俺は自分の欲望をコントロールすることができるようになった。いつも可愛い女の子に囲まれて、自分の欲望を我慢していたらこの先どんなことをしてもやっていけないと最近気がついたからだ。
今ではちょっとやそっとのことでは俺のポーカーフェイスは崩れないだろう。欲望に振り回されることもまず無い。
俺は雫の隣に座り、雫が起きるまで待つことにした。
☆☆☆
な、なんでよ!?
私はこんなにも無防備なのに……どうして優馬は何も手を出してこないの?
雫は心の中で叫んだ。
実は雫はずっと起きていたのだ。
そして優馬が目を覚ましたのと同時に寝たフリをしたのだ。なんでそんなことをしたかというと、ただの興味本意でだ。無防備な私を優馬ならどうするのか?と。
だけど結果、優馬はやはりヘタレだった。
ベットに移してもらった時は久しぶりに優馬と触れ合ったことで幸せだったけど、それから特に何もしてこなかった。
優馬は自分からグイグイ男女間の距離を詰めて来る方ではない。むしろ女の私から行く方が圧倒的に多い。
優しい優馬だからこそ私のことを考えて気を使ってくれているのだろう。だけど今は優しさよりも欲望に身を委ねて欲しかった。
やっぱり私から積極的に行かなきゃダメみたいね……
優馬が起きたのだから私が寝たフリをする必要はもう無い。起きて一緒に帰ろう。
優馬は私を起こそうとはせず寝かせてくれているらしい。私は自然に起きたように装いながら目を開ける。辺りを見渡すと、優馬が隣にいた。
って……優馬、また寝てるし……
勉強疲れがまだ抜けていないのだろうか?さっきまで寝てたのにすぐに寝ている。
まぁ、仕方がないか。優馬は想像以上に頑張っていたんだから。近くでずっと見てきた私ならわかる。
そんな優馬の寝顔を見ていると無性に触れ合いたくなる私だった。
林間学校が終わったところから優馬とはほとんどイチャついていない。そのせいもあったのだろう。
優馬の邪魔だけはしたくなかった私はテスト期間中も我慢した。だけどテストももう終わった。
ちょっとだけ……ちょっとだけならいいよね?保健室には誰もいないことは確認済みだし、優馬さえ起きなければ誰にもバレることは無い。
そうと決めた私は早速実行に移した。
ベットから静かに起き上がり優馬を正面から見る。
いつ見てもカッコイイ。やっぱり私は優馬の事が大好きなのだろう。1回でも優馬の事を思ってしまうとしばらく優馬以外考えられなくなってしまう。
そっと優馬の頬に手をやり少しだけ触ってみる。
もしかしたら優馬は浅い眠りかもしれない、これぐらいで起きるかもしれないと思ったからだ。
「うぅ……」
優馬は少しだけ反応を示したけど、しっかり眠っていることを確認した。
よし、これなら……
私は両手で優しく優馬の顔をおさえた。すっと顔が近づき優馬の唇と私の唇が近づく。
やっぱりドキドキする。顔が赤くなり、呼吸は荒くなる、心臓が激しく打ち付ける。
あとほんの少し、あと数cmのところだった───
「うっ、……寝ちゃってたか………………ん!?」
「……え!?」
こんなことってあるだろうか……唇どうしが重なりかけた瞬間、優馬が目を覚ましたのだ。
「し、雫?な、何をしてるの……かな?」
優馬は動揺を隠せていない。
「……………っつ。」
私は急いで優馬から離れた。
も、もう、なんでこんな時に起きるの!?意味がわからないんだけど。優馬にはもっと空気を読んで欲しい。
「……優馬の顔にゴミがついていたから取ってあげてただけよ。」
私は下唇を強く噛み、焦りを何とか抑えた、そして適当に嘘をついた。バレバレな嘘であることは分かる。だけど僅かな希望で優馬が信じてくれると思い言った。
「あ、あぁ、そうだったんだ。てっきり寝ている間にキスされていたのかと思ったよ。」
「……ま、まさかね。私がそんなことする訳ないじゃない。」
よ、よかった。バレてない。優馬が疑わなくてよかった。
「だよね、キスがしたいんだったらいつでも言ってくれて構わないし、むしろ俺がしたいくらいだからね。」
「……それって本当?」
「あ、あれ?口に出してた!?」
優馬は心の声を口に出していたようで、頭を抱えた。恥ずかしそうにしている。
「……キス……したいの?」
「…………………うん。そりゃあ。したいけど…」
「……そう。ならしよ。」
私は踏み込み、勝手に優馬の唇に自分の唇を当てた。
「んっ!?」
優馬は驚いたが抵抗などはなく、私が唇を離すまで何もしてこなかった。
「ぷはっ。ど、どうしたんだよ雫?今日はやけに積極的だね。」
「……優馬がしたいって言ったからよ。べ、別に私がしたかった訳じゃないからね。優馬だからね。」
「う、うん?なぜ念押し?」
「……う、うるさい。早く帰るよ。」
私は優馬に優馬のカバンを投げて渡した。
「……これ、優馬のだから。」
「お、ありがとう。いつもいつも悪いね。」
優馬は笑顔で言ってくれた。
「……別に問題無いけど。」
私は素っ気なく返したけど本心では飛び上がりたいくらいに嬉しい。恥ずかしいから決して表面には出さないけど。
キスを終えてからまだ心臓の鼓動は止まる気配が無い。やっぱり私は優馬の事が心から大好きなんだろうな。
優馬の笑顔は本当に元気を貰える。優馬のおかげでいつもが楽しい。口ではまだ小っ恥ずかしくて言えないけどいつの日か感謝の言葉を述べたい。
そんなこんなで私は久しぶりに優馬とのキスを成功させ、イチャついたのだった。
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