第87話 最後のテスト
テストまでの数日間、俺はほとんど寝ずに勉強をした。テスト範囲の全てを頭に無理やり叩き込んだ。
春香には全員が範囲を分かりやすく教えられることが出来た。後は春香自身が自分で理解するだけだ。なので春香には自主勉強を多くやってもらうことにした。これで俺も手が空き、自分の勉強に時間が回せた。
頭がパンク寸前だけど………テストはギリギリ体力が持つだろう……人生一勉強したかもしれない。眠気を気合いで乗り切り、体調不良を栄養ドリンクで誤魔化した。あ、これってテストが終わったら力尽きるな俺は……
それぐらい俺は必死に勉強をしていた。それには理由がある。
夜依との勝負の事だ!
“勝者は敗者の言うことを何でも聞く”これはすごい権利だと思う。
夜依と
でも、相手はあの夜依だ。一筋縄では行かないことは分かりきっている。
それに夜依も何か吹っ切れていた様子だったので本気の本気で勉強に取り組んでくるだろう。夜依は、はっきり言って天才だ。前世の記憶を持っていて、幼い頃から勉強しかしてこなかったから、今の俺があるのであって俺はただの凡人にしか過ぎない。前回のテストもほとんど点数に差は無かった。次は勝てないかもしれない。だけど、俺は勝者になりたい!凡人の俺が天才の夜依に勝つためには………ひたすら自分の時間を勉強につぎ込むしかない。
それに……夜依がもし勝ったとき、どんな事を要求されるか全く分からない。少しだけ興味はあるけど、その分恐怖もあった。だから、今回も勝たせてもらう。
そしてテスト前日は徹夜でテスト勉強をした俺は学校の用意をし、学校に向かうのだった。
☆☆☆
夜依も優馬と同じくほとんど寝ずに勉強をしていた……
夜依は本気モードの黒いメガネをかけ、机に向かう。夜依は優馬との勝負を挑んだ。なんで自分から言ったのかは今でも分からない。だけど最後の思い出としてだろうか……
期日までは後、1週間と数日のみ。
優馬との勝負を自分から吹っかける前までは勉強にも身が入らなかった。どうせ、学校を辞める事になるのだ、今更頑張ったところでなんの意味が無いということはわかっていたからだ。
今まで必死に家から独立して、我が道を進むために努力を積み重ねてきたものを一瞬で壊されたあの日からどんなことにもやる気がわかなかった。
毎日コツコツと続けていた勉強もサボってしまった。
優馬から連絡を貰った時も正直やる気は一切湧かなかった。いつもの夜依だったらテスト期間の勉強を遮られたく無いので絶対に断るはずだっただけど長く続く説得の末、ついに夜依が折れた。まぁ、メリットもあった。少しの時間でも家に居たくない夜依にとって春香に勉強を教えるのはいい時間つぶしになっていた。
春香は夜依にとって数少ない友人と呼べる人だ。もう少ししたら会えなくなるのだけどこれまで仲良くしてくれた感謝として精一杯教えた。
これで赤点をとることはまず無いだろう。
これで自分の役目は終わりだ、残るは自分のテスト勉強のみだったのだがやはりやる気が湧かない。
そんな時、優馬に気づかれた。
自分的には気を付けていたのだが、バレてしまった。
そして人生最後のテストを有終の美で飾ろうと思ってしまった。それに前回のテスト返却の時、必ず勝つと宣言もしてしまったことを思い出した。ならしょうがないやるしか無いなと少しだけやる気が出た。
ついつい、敗者は勝者の言うことを何でも聞くというものも言ってしまったけど、夜依が優馬に言うことは既に決まっていた…
そこからは勉強に身が入り、続かなかった集中も続くようになっていた。夜依は優馬と同じくほとんど寝ずにテスト勉強を行った。一日の勉強量だったら優馬を超える程だ。その成果かテストで1問も間違える気がしない。
夜依は一日一日を大切にしながら日々を過ごし、人生最後のテストの日を迎えた。
☆☆☆
「……本当に大丈夫なの?」
「う、うん、大丈…夫だよ?」
もう、この言葉は雫に朝あってから登校するまでに何度も聞かれた。
「……なんでそこまで追い込んで勉強したの?そこまで学年1位にこだわるの?」
「まぁ、そうだね。学年1位は今回も取る予定だよ。だけどそんなのはただのついでにしかすぎないんだよ。そんなのは勝負の結果、後についてくるものだよ。俺はこだわっているのは勝負だけだよ。勝負がなかったらここまで頑張らなかったよ。」
「……そう。その勝負って夜依さんとの?」
「お、分かるんだ。」
「……ええ、だいたいね。2人きりで話をしに行った時でしょ。」
「正解だね。」
「……やっぱり……まぁ、頑張ってね。だけど無理をしちゃダメだからね。」
「分かってるよ。」
俺は雫の鼓舞で少しだけ元気が出た。
大好きな女の子からの鼓舞だ、勉強のし過ぎで疲れていた疲労はどこかに飛んで行った。
これなら行ける!ありがとう雫。
俺はやる気に満ち溢れていると──
「おはよぉー♪」
春香が教室に入ってきた。
春香は誰よりもやつれていて、目のクマもすごい。それに老けた?と思うほどだった。声も疲れきった声をしていた。
雫から後から聞いたけど勉強のしすぎで2キロ痩せたらしい。ストレス痩せと言うものかな?
「おはよう春香。テストはもう大丈夫?」
「うん、多分大丈夫だ…よ♪」
そっか、なら心置き無くテストに集中出来る。
「お互い精一杯、目標を達成できるように頑張ろうね。」
「うん♪」
ついに始まった一学期最後のテスト!
俺は万全な準備をしたんだ負けない、絶対負けない!俺は勝つんだ!絶対に!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます