第89話 運命の結果発表


優馬と雫が保健室でイチャついているころ……

学校の職員室では急いで採点が行われていた。


そんなに急いで採点をする理由は明日に点数と順位を発表するからだ。


優馬の担任の斎藤 奈緒も受け持っている数学の採点を必死に行っていた。


でも1人で全クラスの採点は到底今日だけで終わるはずがないので、仲がいい保健室の先生の菊池先生や体育の先生、美術の先生にも手伝って貰いながら採点を進めていた。


テストの日は先生方全員がヘトヘトになる日だ。最近私は知った。

新人の私にはまだなれないけど精一杯頑張ってやっている。


でも今回のテストはかなり難しかった方だと思う。範囲が一学期全てということもあるが引っ掛け問題や複雑な問題などが非常に多かった気がする。このテストでは高得点を取ることすら極めて難しいだろう。


数学のテストを制作して、問題を知っている自分にでも全部満点で解けるかどうかは微妙だ。


それに数学以外の教科も私と同じぐらい難しくさせていると聞いた。今回のテストかなり平均が低くなると予想出来た。


でもどうして今回のテストはこんなに難しくさせたんだろう……私は校長の指示でやったんだけど……


「あらあら~これはまたすごいね~」


そんなことを思いながら手を動かしていると、菊池先生が驚きの声をあげていた。


「どうしたんですか菊池先生?」

「いや~見てくださいよこれ!満点答案なんて久しぶりに見ましたよ~」

「ま、満点!?今回のテストで!?」


私は飛び上がりその答案を見た。


た、確かに満点だ。ありえない。どれだけ勉強をしたのだろう……引っ掛け問題にも引っかからず、複雑な計算も難なくこなしていた。


す、すごい。


「見てくださいよ、これも満点ですよ!」

「え!?また満点ですか?」


美術の先生の方にも満点答案が出たようだ。


本当にどうなっているのだ!?


私は疑問に思った……だけど答案の名前を見て私は納得した。あの2人なら可能だと。


先生方は必死に採点をし、次の日までに全員の採点を終わし、順位を決めた。


☆☆☆


今日は運命の結果発表の日だ。


朝からずっとドキドキと緊張し続けている俺だけど……俺はテストまで精一杯勉強を頑張って来たんだ!その努力は決して無駄じゃないことを証明するんだ。


自分で自分を鼓舞して緊張を何とか抑えているけど、全然収まる気がしないや。


テスト返しまで俺はそんな思いで過ごした。そしてついに結果発表の時間になった。


奈緒先生がたくさんの答案と大きな紙を持ってくる。大きな紙には今回のテストの順位が書かれているのだろう。


「さて、今回のテストお疲れ様でした。皆さんはどのクラスよりも平均点が高く全クラス中、1位でした。それは誇るべきです。これからも学級のお手本になるように頑張って下さい。」


始めに奈緒先生がみんなの事を褒める。


「それでは皆さんお待ちかねのテスト返却を開始したいと思います。」


奈緒先生は一人一人名前を呼び答案を返してくる。


「優馬君。」


俺の名前が呼ばれた。


「はい。」


俺は小さな声で答える。今、緊張しすぎて今にでも吐きそうだ……


「優馬君大丈夫ですか?顔が青白いですよ、気分が悪いんですか!?」

「いえ、ただの緊張なので大丈夫です。」

「そうですか……なら早く受け取ってください。優馬君は今回もすごく頑張りましたね。男性なのにすごいです。」

「あ、はい。」


俺は目を瞑りながら答案を受け取り、点数を見ないようにして自分の席に戻った。


「ふぅ…」


1回、深く深呼吸をして心を落ち着かせた。

俺なら大丈夫だ。行くぞ、来い高得点!!!!!!


俺は全ての答案を一気に見た。


「おぉ……これは……」


神楽坂 優馬

国語 97点

数学 100点

理科 100点

社会 91点

英語 95点

合計 483


くっ………なんとも言えない点数だな……


数学と理科は完璧だった。だけど社会の科目が足を引っ張ってしまっている。他人からは充分高得点なはずなのだけど俺からしてみればまだ行けそうだなと思う結果だった。


テストの内容を見ると社会では多くの引っ掛け問題に引っかかっている。


やはり俺は社会が特に苦手だと改めてわかった。歴史上の人物が俺の覚えていた人物とちょくちょく変わっていたりするから前世の記憶と今の記憶がごちゃ混ぜになってしまうのだ。


くっそー、その事も考慮して頑張ったのに……まだまだだったという事だ。


俺は1人で悔しさに打ち震わされていた。


そんな中、


「優馬君ー♪」


春香がこっちに向かってくる。その顔はものすごく笑顔でだった。右手には答案が握られている。


「それでどうだったのテストの結果は?赤点回避には成功した?」


春香にその事を聞いた。俺のテストの次に気になっていた事だ。別に俺のテストの点数が微妙だったとしても春香が赤点回避をしてくれたらいい。


「ありがとう優馬君、みんなのおかげで赤点回避に成功することができたよ♪本当にありがとう♪しかも私の最高点数をゆうに越えてるんだよ♪」


そう言って答案を見せてきた。


国語 52点

数学 66点

社会 45点

理科 41点

英語 57点

合計 261点

だった。


前回と比べてすごい進歩だと思った。


「頑張ったね春香。目標達成だよ。」


俺は春香の頭を撫でた。春香の成長は常軌を逸していた。すごい集中力だったと思う。よく、あの辛い勉強を耐え抜き、辞めないでくれたと思う。


「うん♪これも優馬君のおかげだよ。ありがとう

ね♪これで全国大会に行けるよ♪じゃあご褒美よろしくね♪」

「あ……あぁ、そう言えばそうだったね。」

「忘れてたでしょ♪」

「う、うん。だけど安心して、ご褒美はもう考えてあるから。」

「わかってるよ♪期待して待ってるからね♪」


春香は笑顔で言った。


春香へのご褒美は今のところ“1日デート券”をあげようと思っている。もっと欲しいと言われたらもっとあげる予定だけど。

少し前に春香とデートの約束をしたけど春香の部活の関係で結局行ってなかった。それからデートの話はうやむやになっていた。


春香とはデートに行ってみたかったのでいい機会だと思った。

ご褒美をあげて春香に勉強を頑張ってもらうことは俺的には一石二鳥の考えだった。


「それじゃあ優馬君♪これから雫と由香子と夜依さんにお礼を言って来るから、またね♪」

「うん、本当にお疲れ様。」


春香は嬉しそうに雫達の方に行ったいた。


俺は1人で今回の春香のテストのことを考える。


今回のテストは本当に春香は頑張ってくれた。いつも運動ばかりで勉強を全くしてこなかった春香がここまで頑張ってこれたんだ。賞賛に値する成果だと思う。


春香のテストの結果の各教科の点数を比べてみると夜依が教えた数学が1番得点が高く、社会と理科を教えた俺が2つとも1番低い点数を取っていた。春香は全ての教科が得意ではなく特に数学を苦手としていた。だけど夜依が教えた数学は他の4教科よりも高い点数をたたき出した!夜依には勉強を教える力が俺よりあると言いきれる結果だった。

いくら俺が2教科教えたと言っても負けは負けだ。俺は地味に意識していたので悔しかった。


そろそろかな……


クラス全員の答案の返却が終わった。


笑顔で大いに喜ぶ者、テストの結果が振るわなかったのか落胆するものがいた。主に後者が多かったけど。


「それでは皆さん!今回のクラスでの順位を発表したいと思います。なんとこのクラスには学年1位と2位がいます!!!」


奈緒先生は大きな紙を用意しながら言う。


そうだとは思っていた。


俺と夜依が1位か2位なのだろう。


頼む、俺に1位を!俺に1位を恵んでくれっ!勝利の女神よ俺に微笑んでくれっ!!!


俺は両手を組み祈るようにして結果発表を待った。


奈緒先生の小さい体では大きな紙を黒板に貼るのは一苦労するだろう。手伝ってあげようかと思ったけど突っ張り棒を駆使して上手く貼っていた。


大きな紙は同じ大きさの紙で覆い隠されている。中身を一気に見てもらうためだろう。


「それでは今回のテストの結果はこちらです!」


奈緒先生は勢いよく表面の紙を取った。


俺は恐る恐る結果を覗いた。


1年 一学期 1年3組 クラス順位

【1位】北桜 夜依 491点 学年1位

【2位】神楽坂 優馬 483点 学年2位

【3位】藤林 智佳 459点 学年4位

【4位】雨宮 雫 447点 学年5位

【5位】作田 由香子 442点 学年6位

【6位】榊原 真希 438点 学年9位

【7位】吉田 心 430点 学年13位

【8位】尾関 仁奈 419点 学年20位

【9位】近藤 舞 414点 学年26位

【10位】高橋 紗奈 411点 学27位


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