第83話 テスト期間開始


胸糞悪い日曜日も終わり、今日は月曜日だ。ずっと不機嫌でいてもただ疲れるだけだ、気持ちを切り替えていこう。

そう思った俺はあと少しで訪れる夏休みの事を考える。夏休みには様々なイベントがある。転生する前まではそのイベントにほとんど参加することは出来なかった(主に部活で)。だからすごく楽しみにしている。


朝はいつも通りに過ごし、雫と一緒に学校に登校した。


「皆おはよう。」


クラスの皆と朝の挨拶を交わし、女の子達と少し雑談をする。チャイムがなり奈緒先生が来たので自分の席に着席する。いつも通りの毎日だ。


でも今日は少しだけ違った。


「今日から2週間後に一学期最後のテストがあります。この学校は進学校なので皆さん赤点を取らないように気を付けてください。ですので今日からテスト期間に入ります。部活動も極力控えて勉強に集中して下さいね。」


そういえば………すっかり忘れていた。

でもテストと言ってもまぁ大丈夫だろう。日々の勉強を怠らずしっかりと復習をしていれば問題なく高得点は取れるだろう。


前回のテストで俺は学年1位を取ってるわけだから、今回も狙いたいな。

しばらく勉強に勤しむことにしよう。


☆☆☆


今日の昼休み


俺は大地先輩を学校の屋上に呼び出した。


「大地先輩すいません呼び出してしまって……」

「いや、構わないよ。それで僕に話ってなんだい?」

「はい………実は………」


俺はあの特殊な性癖を持つ豚野郎の事を話した。

一応パーティのこともだ。


「富田って………あの富田!?」

「知ってるんですか?」


富田と聞いて大地先輩は驚いていた。


「あぁ、知ってるとも。僕も会ったことがあるんだよ。あの人は本当に嫌な人だったよ……」


大地先輩もどうやら知っていたようだ。


「ちなみに場所は国が主催する男のみの会合でね……」

「え?まず、その会合って何なんですか?」


大地先輩から聞き慣れない言葉を聞いたのでそのことについて聞いた。


「そうだねそこから説明しないといけないね。」


大地先輩は説明を始めた。


「まず年に1度だけ、全ての高校1年生以上の男に会合に参加するように国から派遣される係の人が来るんだよ。去年もあったんだけど、優馬はまだ高校生以上じゃなかったから呼ばれなかったんだ。」


国が主催する会合……そこでは全国にいる全ての男が集まるのか……なんだかすごそうだ。


「今年もあるはずだから優馬もきっと呼ばれるはずだよ。去年も僕は呼ばれたんだけど知り合いも誰もいなくて本当につまらなかったんだ。それに富田っていう人にも会ったしね。」


どうやら大地先輩には苦い思い出のようだ。


「富田っていう人は僕にいきなり話しかけてきて、女性との経験はあるのかい?と聞いてきたんだよ。初対面で、いきなりプライベートを教えろって失礼極わりない人だったよ。まぁ、あの時はしょうがなく答えたんだけどさ。」

「はは、俺も同じことを聞かれましたよ……」

「やっぱり、あの人どこか頭がおかしいんだよね。おかしいのは体型だけにして欲しいのに……」

「そうですね…」


それにナルシストっぽいし……あの人のいい部分って何も無くないか!?


「それで、僕はいいえって答えたんだ……それで次は婚約者はいるのかと聞いてきて……」


そこから大地先輩は怒りをあらわにした。


「いないって答えたら、男として情けないだとか、男の恥だとか散々な事を言われたよ!それも大勢の男がいる前で!そのおかげで全員から苦笑いされたし………とにかく、僕は怒っているんだ!」


あー、確かにあの人は経験の次に婚約者のことを聞いてきた。俺はいるって答えたから特に何も言われなかったけど婚約者のいない大地先輩にはボロくそ言ったらしい。


「大丈夫ですよ。大地先輩には椎名先輩がいるじゃないですか。」

「うぅ、そ、そうだな…」


大地先輩は照れている。

大地先輩は椎名先輩に恋心を抱いている。俺はその恋を実らせたいと色々と頑張ろうとしている。


「まぁ、そういう事だからそのパーティには行かない方がいいと思うよ。行っても絶対に良いことはないと断言できるよ。」


確かに特殊な性癖を持つ豚野郎だからな……何があるかわかったもんじゃない。大地先輩の言うことを信じて、行かないことにしよう。


「わかりました。俺はパーティには行かないです。」


俺はその場で特殊な性癖を持つ豚野郎から貰ったパーティの招待状を破り捨てた。


☆☆☆


「優馬君、勉強教えてっ!」


授業が終わり、放課後になってすぐに春香が俺のところに来た。


「どうしたの?いきなり。」

「優馬君、約束したじゃん♪勉強を教えてくれるっ

て♪」


あー、そう言えばそんな約束してたっけな。


「わかったよ。教える。」


俺のテスト範囲の勉強は大体終わっている。後はひたすら問題を反復するだけなので、春香に教えるのは自分の復習にもなっていい。

それに約束だしね。


「けどまだ2週間もあるよ。まだ春香は部活があるんじゃないの?」

「そうなんだよ……普通部活は1週間前から停止なはずなんだけど、私はこのテストで赤点をとったら全国大会に出場出来ないんだよ♪だからこのテストだけはどうしても赤点を回避したいの♪監督には許可は貰っておいたよ♪」

「なるほどね…」


1年生で全国大会はすごいと思う。確かに春香の身体能力だったら余裕でレギュラーメンバーになれるだろう。後は頭だけってことか……

俺は前回の課題テストの春香の点数を思い出した。


国語・15点

数学・12点

社会・19点

理科・31点

英語・25点

合計・102点


確かこんな感じだったな……

この学校の赤点は35以下だ。……………全て赤点じゃん。

このやばい点数を取る春香を2週間で全ての科目で赤点を回避するまで教えるのか!?もしかしたら時間が無いかもな。

いや、俺が全力で付きっきりで教えれば何とかなるかもしれない。


「よし、今からやるぞ。毎日残って教えてあげるから、赤点を回避するために全力で勉強しようね。」

「っ!今から!?……うぅ分かりました♪全国大会に行くためだもんね♪」


春香は今から勉強する気は無かったようで少しだけ嫌そうな顔をする。だけど今から始めないと本当に間に合わないかもしれないからやるしかない。


☆☆☆


図書室に移動した俺と春香。ここなら静かで集中できるはずだ。

部活は雫を通して断っておいた。友達の一大事だから!という理由で。


「よし、じゃあまず俺がテスト範囲から作った確認テストをやってみようか。」


俺は確認テストを春香に渡した。元々これは自分でやるために作っていたのものだけど春香の今の実力を測るにはうってつけだったので使うことにした。もちろん後で俺もやるつもりだ。


「え……?今からテスト!?しかも5教科も!?」


春香は放課後の少ない時間で5教科もテストをするということに動揺を隠せていないようだ。


「当たり前じゃないか。まずは春香がどれくらい授業を理解しているのかを判断する材料にするんだよ。大丈夫安心して、いつもの授業をしっかりと受けてさえいれば簡単に解けるはずだよ。」

「あー……私いつも寝てたんだよね……♪」

「は………?」

「えへへ♪」


笑い事じゃないよ春香………


「ま、まずこれやって見て、その結果で計画を立てるから。」


まず、テストの結果で判断することにしよう。


「じゃあ始めて。」

「はーい♪」


春香は鉛筆を持ちテストを開始した。


数時間後─────


「もぉー無理ぃ♪」


机に項垂れる春香。


「あと2教科だよ!頑張れ!春香ならできるよ!」


俺は必死に呼びかける。でも完全に集中力が切れているな。


「まさか優馬君が勉強の鬼だとは思わなかったよ……」

「いやいや、まだまだこれからだからね。」

「本当に!?」


俺はまだ勉強を教えたわけじゃないし、ただテストをしてって言っただけだ。それで、鬼って……まだまだ春香はあまいな。

春香のテストの結果で俺が勉強の大鬼になるかそれともただの鬼になるのかが決まるんだからまだ俺の事を鬼って呼ばないで欲しい。


「だけどこのテスト難しすぎるよー♪」

「え、そうかな?」


春香の頭は既にパンク寸前のようだ。今にも頭から湯気が出そうだ。


ここは俺が春香にやる気を起こさせないといけない場面だ。こうなることは予め予想出来ていたので既に対策は考えている。


俺は春香に近づき耳元でそっと囁いた。


「春香……もし次のテストで全て赤点を回避出来たら俺からご褒美をあげるよ。」

「そ、そのご褒美って何かな♪」


よし、食いついた。


「それはまだ内緒だよ。今教えたらつまらないからね。」

「えー、今教えてくれた方が頑張れるのに♪」

「まぁそんなこと言わずに頑張って!春香が頑張れば必ずご褒美は手に入るから。頑張ろうね。」

「う……優馬君の意地悪っ♪まぁでも、私頑張るよ♪」


春香は元気を取り戻し、残りの2教科に取り組んだ。


作戦成功だな。


俺は春香の確認テストが終わるまで付き合ったのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る