第59話 カレー作り
俺の整理整頓は割とすぐに終わり、雫達のいるテントに戻った。
外はもう夕暮れ、山から見る夕焼けはやはり素晴らしいものでついつい見とれてしまう程だった。
っとと、そんな見とれている場合では無い!俺は少し急ぎめでテントまで戻った。
テントに着くと雫達は夕食のカレー作りの準備をしていた。
「──ごめーん、遅れた。」
「……大丈夫。ちょうど今から
「そうそう~~むしろ早かったよ。」
「だねぇー♪」
息を切らしながら到着した俺は取り敢えず皆に謝り、すぐに仕事に取り掛かった。
「じゃあ早速行くっすよ!」
「「「おー!!!」」」
菜月の掛け声に俺、春香、由香子が声を揃えて答えて全員で竈場に向かった。
☆☆☆
竈場は草原のある一角に設置されている。竈を見るに……何度も使用されていて、それなりに年季が入っているがまだまだ全然使える竈だったので安心だ。水場も近くにあり、米とかはそこでとげそうだ。
竈はテントの班で1つずつ貸し出され、そこで米とカレーを作る事になっている。
「じゃあ、料理に自信がある人はカレーチームで、自信が無い人は米を炊くチームで分ければいいんじゃない~~」
「……由香子、ナイスアイディア。」
米は比較的簡単な作業が多く、カレーはどちらかと言うと難しい。という事で由香子の案が採用され、米チームとカレーチームに俺達は別れる事にした。
米班→ 夜依、春香、菜月、葵
カレー班→ 俺、雫、由香子
という具合に別れた。
「……優馬はカレーチームで大丈夫なの?」
心配そうに聞いてきた雫。だが、今回のカレー作りだけは自信がある。なぜなら、前々からカレー作りを家で練習していたからだ。
俺のカレー作りの教師は料理上手の茉優で、林間学校でカレーを作ると決まってから毎週のように練習をしていた。なので多少は上手く作れるはずなのだ。
「まぁ、頑張って作って行こう、サポート頼むよ!」
「……え、えぇ。」
そんな少し緊張で自信がなさげの俺に雫は若干不安のようだったけど……取り敢えず集中して頑張る事にしよう。
まず皆で食材と道具を持ってきた。
野菜も材料もそれなりに多かったので大変だ。だけどこれこそ林間学校の醍醐味の“協力する”という事なのでいいと思った。
準備も整ったので早速チームに別れて調理を開始した。
初めは野菜の皮剥き……ピーラーは無いので包丁を使って上手に皮剥きをするのだが、なかなかの難しい作業だ。俺も家で何回も挑戦し、何回も失敗した。だけどその経験があるからこそ本番では上手く出来た。
次は野菜を様々な切り方で切っていく。これも既に練習済み。なので手際良く、丁寧に野菜の繊維をわざと壊すように切った。
周りを見ると、雫も由香子も手馴れた様子で野菜を切り終えていた。
「……へぇ、やるじゃん優馬。」
「だろ!でも雫達も上手いね。」
「だってね~~中学の部活の合宿とのご飯は自分達で作んなきゃならない時がいっぱいあったんだよ~~」
「……そうね、まぁ面倒だったけど、料理が多少出来るようになったのは部活のおかげなのかもね。」
へぇ……なんか、いいなぁ。
俺には中学での思い出は存在しない。だからこそ、そういう思い出が最近は羨ましいと感じた。
野菜を全て切り終え、次に肉を細切れにし……これで下準備は完了。続いて肉を炒め、その後に野菜を加えた。
丁寧に愛情を込めてせっせと作っていく。それがカレー作りに1番大切な事だと茉優が教えてくれたからだ。だからおいしくなれ、おいしくなれと強く願いながら作る。
具材が茹で上がり柔らかくなったら、最後にカレールーを投入し、数分煮込めばおいしいおいしいカレーの完成だ!
俺一人の力じゃないけど、皆と協力して美味しそうなカレーを作る事が出来た。
俺は余り見ていなかったが、米チームも完璧に仕事をこなしてくれた。出来上がった米を見てみたが、艶のあるいい米が炊けているようだった。
菜月がご飯をよそい、俺がカレーをかけた。
「それじゃ、いただこうか。」
カレーを無事作り終わり、全員にカレーが行き渡った。そして……
「「「「「「「いただきますっ!」」」」」」」
カレーを1口、口に運んだ。
口に入れた瞬間、スパイシーな香りが俺を支配し、その後にほのかな野菜とご飯の甘みが波状攻撃を仕掛けて来た。カレーはご飯と多数に絡み合い、ハーモニー的なものも奏でていて、ものすごく美味しかった。
「うまいっ!」
「……おいしい。」
「おいしいっす!!」
「おいしいですね。」
「口がとろけちゃうよ~~。」
「何杯でもいけそう♪♪」
「おいしいですっ!!」
皆は食べる手が止まらないくらいの怒涛の勢いで食べまくり、カレーもご飯はすぐに空となってしまった。
それぐらい、皆で作ったご飯は美味しかったのだ!
大満足の結果で、カレー作りは終わった。
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