第42話 雫とデート


どうやら代わりの子というのは……俺の彼女である雫だった。つまり今日は、彼女の雫とデートをする事となったのだ!


「──雫?」

「……うっ、なんでもない。」


雫も俺も……互いに初めてのデート。途中から何処と無く察してはいたけど、やっぱり緊張は湧く。

互いに意識し合い、赤面してしまう。


「俺はいいんだけど、雫はどう?今日デート行けそうなの?」


一応、気遣う。今日雫はのんびり休日を過ごす予定だった訳だし、雫が嫌というならば今日のデートは無くすつもりだ。


「……行けるに、決まってるじゃない!」


それだけは決まり切っていたようだ。ハッキリと言われる。


「OK!じゃあ早速行こうか!」

「……え、ええ。」


でも、雫はまだまだ緊張気味なのか、反応が鈍い。


……っと言うことは、男である俺がちゃんとリードしなきゃな。そう思った俺はすっと雫の前に手を差し出した。


「……!?」


雫はその手を見てすぐに察したようで、耳まで真っ赤になりながらも俺と手を合わせ、すっと握り返してきた。


その初々しい感じは、正直興奮してしまう程だ。


「そう言えば……付き合って初めてのデートだね。」

「……そ、そうね。」


俺が転生して15年と少し……遂に念願の女の子とのデートに行くことが出来る。

これこそ“青春”を謳歌していると言えるだろう。俺はそれが嬉しくてテンションが馬鹿みたいに跳ね上がるのであった。


──優馬と雫。2人のカップルはまだまだ若く、幼ささえ見えるが……その2人の表情は心から幸せそうであった。


☆☆☆


俺と雫は街に向かって手を繋いで歩いていると……数人の歩行者とすれ違う。

その数人の歩行者は歳が近い子やお姉さん、幼稚園児、おばさんまで……様々な人がいて、その全ての人が俺の事を見ると驚愕し、腰を抜かす人も多くいた。


俺も、様々な人を生で見る事が出来て新鮮だった。


初めてこういう公共施設の場に来たけど……男がいるだけで、こういう反応になるのか……分かり切っていた筈なのにまだ慣れないなぁ。


視線が思ったよりも俺や雫に集まり、かなり恥ずかしかったけど、何とか駅前に到着した。

既に俺と雫の周りには円を書くように人だかりが出来ていたが、気にしていたらデートすらままならないと割り切った俺は周りなんて気にしないように強く意識し、雫に声を掛ける。


「雫、大丈夫?ごめんな、俺のせいでデートすらちゃんと出来なくて……」

「……いい。分かってるから。」

「そっか、ありがとうな……

さぁーてと、周りなんて気にしないでさ、俺達は2人のデートを存分に楽しもうよ、な。」

「……随分と優馬は切り替えが早いわね。正直、羨ましい。」


俺のあまりの切り替えの速さに雫は若干引き、皮肉さえ言われたが……それが逆に助けになったのか、さっきよりかは元気を見せてくれた、雫。


俺や雫は周りを取り囲む人達から声は掛けられない。でも、常に俺の事を凝視してくるので流石に居心地が悪い。まともに移動出来ないし、雫とイチャつくことすらままならないからだ。

なので、雫に「どこか店に入ろう。」と頼む。


雫は少し考えた後に「……服を選ばない?」と提案して来た。俺はすぐにその案を了承し、雫の手を引き近くの服屋さんへと直行したのであった。


☆☆☆


流石に人だかりは店には入って来ず、ようやく2人になる事が出来た。まぁ、店にまで入ってきたら営業妨害とかで、警察沙汰になりそうだしね。いくら男が現れたといっても……秩序はギリギリ守ってくれているので俺も少しだけ安心する。


──さて、意識を切り替えて早速服選びに集中しようっと。


「うぉー、すごい量だね。」


この服屋さんはかなり大きな店なようで、ハンガーにかけられた様々な服や帽子などがずらりと並んでいた。カッコイイ服、可愛い服、ポップな服……様々なジャンルの服が沢山あった。


俺はその様々な服に目移りしながら奥へと進む。


「──お、男のお客様!?いらっしゃいませー!」


店員の人が俺に気付き、慌てて叫ぶと近くにいた店員の人も「「「いらっしゃいませ!!!」」」と大袈裟に連鎖して叫んだ。


そして、俺と雫はすぐにVIPルームへと案内された。どうやら、ここにある服は全て女性用で、男性用の服は全てVIPルームにあるからだそうだ。


そこから、店長と思われる人から服の細かな説明が始まり、楽しくなって来た俺は何着かの服を購入するのであった。


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