第40話 特別男護衛官の仕事


──私達の仕事は男性の事を常日頃、影から護衛する、〖特別男護衛官〗というものだ!

男性の生きる盾となり、国の宝である男性を絶対に死守する…………特別で誉ある仕事である。


藤林 智佳ちかは特別男護衛官としてこの月ノ光高校に特別に入学した人物の1人である。他にもメンバーはいるのだが、それは後で紹介するとして……まずはは特別男護衛官に付いて説明しようと思う。


……この役職は国が秘密裏に作った特別な役職で、男性以外のほぼ全ての女性は密かに認識しているという感じで、何から何まで特別で、例外な職業なのである。

──だが案外この役職は人気で、将来の目標にする子も多々いる程でもある。単純に給料が素晴らしくいいのと……何よりも、男性と出会う事ができるからだ。


もちろん、男性とは一定の距離を取って自分を律し、自分から関わる事は禁じられているが、それでも構わない。なぜならずっと男性という存在を近くで感じていれるのだから……


智佳も幼い頃から強い憧れと魅力を持ち、親の英才教育と絶え間ない努力により、何とかこの職業に就く事が出来た


だが、まだまだ試練は続く。

男性という存在はこの国にほとんどいない=特別男護衛官も多くなくていい。


そう……ただ特別男護衛官になれただけでは男性とは会えないのだ。自分とほぼほぼ同じ年齢で、割と近い場所に住んでいなければならない。更に成績優秀で、強い覚悟を持っていなければならない。

更に毎月行われる臨時試験も難なく、こなさなければならない。


──実力も運も……全ての要素が特別男護衛官には必要なのである。


そうして厳選に厳選をした後に、ようやく男性の特別男護衛官として任命されるのである。


あの時……智佳が彼の特別男護衛官として任命された時は……今までの努力の全てが報われた気がして……いっぱいいっぱい涙が出た。その時の感情は決して忘れられない。永遠に覚えておく感情であろう。


特別男護衛官は確定で3年間、男性と同じクラスになれる特権がある。なので、確定3年間の間、彼の事を見続けることが出来るのだ。


──それでは、そろそろ特別男護衛官のメンバーを紹介しようと思う。


男性1人に対して護衛官は約6人程のメンバーで組まれており、尾関 仁奈にいな 榊原 真希まき近藤 まい 吉田 こころ 高橋 紗奈さなの5人と智佳で6人1チームだ。全員があの狭く厳しい苦行をくぐり抜けてきた猛者揃いだ。


既に5人との連携確認もし、どんな事にでも即時対応出来るようにしてある。どんな事があっても、守り切ってみせる。


──入学式当日、特別男護衛官である智佳達は既に彼の情報のほんの1部は受け取っていた。だが、顔写真など重要な情報は受け取っておらず、一体どんな男性が来るのかと……期待で胸がいっぱいだった。


どんな男性でも良いが、もちろんイケメンがいいに決まっている。普通はそうだ。智佳だって、1人の乙女なのである。

ふぅ、凄いイケメンだったら命を掛けて守り抜くのになぁ………


教室に彼が現れた時の衝撃は……とてつもないものだった。初めて生で見た男性。これが男性なんだ!

想像以上の存在感。尋常ならざる圧倒的オーラ。

カッコよすぎて……一瞬にして智佳の心は決まった。そして決心した。絶対に彼を守ろうと。


☆☆☆


それから1週間が経ち、今日も護衛の為に智佳は彼の事を尾行する。登校と下校は同じクラスメイトの雨宮 雫さんと毎日している事は知っている。なので、尾行しやすく、護衛しやすい。


その事ではとても助かってはいる……だけど、同時に羨ましさも湧く。あんなに性格も優しく、見た目もパーフェクトな彼とあんなに近くで……


「…………っ。」


雨宮 雫さんが、彼にとって“特別”なのは分かっている。見ていれば簡単に分かる事だ。

だけど、あんなにもイチャイチャする姿をただ呆然と見ている事しか出来ないというなんとも言えないもどかしさが智佳を襲う。


でも、感情的には決してなったりしない。いつなんどきでも冷静を保つ。訓練をしてきたから……そんなの簡単である。それに心構えは必ず必要なのである。


そんな彼の事を見守りつつ、そっとため息を着く、智佳。そんな隣で……


「──ふぅぅぅぅっ。今日も相変わらず優馬君はカッコイイねぇぇ!!」


大興奮し、過呼吸になりながらも決して自前のカメラの連写をやめる事の無い彼女の名は、同じチームの高橋 紗奈だ。


「はぁ、いつも思うけれど、それ良いの?もし、上司なんかにバレたら一瞬でクビだよ?」

「いや、ダメって言われてないし、優馬君に喋りかけてもないし、邪魔もしていないから別にいいじゃん。ちゃんと仕事もやってるしね!

…………相変わらず、堅いねぇ智佳は。そんな、感情を表に出さなかったら、いつかパンクしてダメになっちゃうよぉ?」

「はいはい、そうだねー」


軽く呆れながら、言葉を流す智佳。


ちょっと、って言うか……大分おかしい紗奈。他にも色々と個性的なメンバーが何人かいる。それが智佳のいるチームなのである。


まぁ、仕事はきちんとこなしているのであまり文句は言わないようにはしているけど……


──そんな、仕事に徐々に慣れ始めていた頃……事件は突然起こってしまった。

彼は誘拐された雫さんを助けに行くため、勝手に出て行き、命の危険に晒されてしまったのだ。

本来ならば、男性を守り抜くのが使命の智佳達には何もする事が出来なかった。


後から命の危険は無いと分かり、ほっと安心したが、彼を守る事が出来なかった。それ相応の処罰が国から処されると思った。怠慢で、仕事を完璧にこなす事が出来なかったのだから。


だが、以外にも処罰は少なく、まだ彼の特別男護衛官をやれるそうなので本当に安心した。何故かは分からないけど、辞めさせられなくて、本当に良かった。


これからは、気を取り直し彼が絶対に危険にさらされる事の無いように、常に気を張り続けて護衛をしている。


彼は誰にでも分け隔てなく接する。少し抜けている部分もあるが、心から優しく、最高にカッコイイのだ。

彼はこれから国を担っていく存在だと……すぐに分かった。だから、絶対に……守る!


今日も智佳達、特別男護衛官は護衛対象の護衛を完璧にこなす!

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