第169話 別れの予感

横浜での留学期間も3週間が過ぎ、残り1週間となった。淋しくもあるが、魔界ランドが恋しくもある。


「もしかしたら、エマさんはあまり長く日本に滞在なさらないかもしれないわ…。」

「まだ分からないわ。」

「でも覚悟だけはしておきましょう。」

「エマさんには悟られないようにしましょうね。」

国際情勢に詳しい者を中心にクラスメイト達がエマとの別れを予感していた。


「おはようございます!」

クラスメイト達がポーカーフェイスを装備したタイミングでエマが元気よく登校した。


「おはよう、エマさん。」

「エマさんは、今日もお元気ね。」

「はい!エンマは元気です!でも冬の朝は寒いですね、起きるのが大変です。」


「ロシアはもっと寒いのでしょう?」

「はい、なのであんまりお外に出ません。ジジ君とマリーちゃんは毛布でくるんであげないと無理です。」

「エマさんの猫ちゃん達は小さいですものね。」

「そうそう、我が家でも“ぷりん”の再現に成功しましたわ。」

「うちもよ、家族みんな気に入ったの。」

「食欲の落ちていた祖母も、これは美味しいと言って……。お医者様が、栄養豊富な上に食べやすくて素晴らしいと言っていましたわ。」

自分好みのプリンが高く評価され、エマが誇らしげだ。



一方、その頃の魔界ランドでは……。

「暴れフェンリルが出たぞー!」

「逃げろー!」


ひかるの不在に拗ねて暴れるレティが暴れ回り、住民たちが跳ね飛ばされる事故が多発し、取り押さえようとする軍人たちとカールフェンリルがレティフェンリルに吹っ飛ばされ、宙を舞っていた。


「カール!しっかりして!」

「エクストラヒール。」

満身創痍のカールにダイアナが駆け寄り、ルーシーが治癒魔法を掛ける。


「いってらっしゃい、カール!」

ダイアナに励まされ、暴れるレティを取り押さえようと、フェンリル化したカールが向かう。カールがレティに吹っ飛ばされて負傷する。ルーシーの治癒魔法で回復する。


レティの体力が尽きるまで、この繰り返しだった。

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