第170話 さようなら横浜
いつも通り授業が終わり、いつも通りの1日が終わった。
今日は
「わあ、大きいですね!」
「タマは大人ですもの。」
いつものように
ずっしりとして抱っこも一苦労だが人懐こくて可愛い。
「エマさん、いらっしゃい。」
「チズちゃんとカズちゃんのおじ様!こんにちは、お邪魔しています。」
「いやいや、うちの
「それは良かったです!式部ちゃんに伝えますね。きっと大喜びです。」
各家庭にレシピを伝えたのは式部だった。
クラスメイトの家族だけでなく、そのご近所でも役に立っていると知り、とても嬉しい。
「……うん…お通しして。」
「エマさん、エマさんのお父さんがいらっしゃっているよ。」
「パパが?」
エマだけがポカン顔だが、
「エマちゃん!」
焦った様子の
「パパ!どうしましたか?」
「エマちゃん…今日、日本政府がロシアと国交を断絶すると発表したんだ……。」
「…えっと……ロシアはママの国ですよね。」
「そう。……だからロシアには戻れない、フランスでママと落ち合うよ。」
「それって……。」
「出発するよ。式部がエマちゃんの荷物をまとめてくれてね。惟光と一緒に港で待っているから。」
「……いますぐ?」
「そうだよ。」
「………
「エマちゃん……。」
困り果てた顔の
「やでしゅ……せっかぐお友達になれたのに……いま日本を離れたら……きっと、もう…会えばせん……。やです……ぐすっ……ひっぐ……う、うええええぇ。」
ポロポロと涙を
「エマさん!我儘はそこまでです!」
「
「いま、異国でたった1人で不安と戦っていらっしゃるお母様のお気持ちを考えたら、そのような我儘は言えないはずですよ。」
「……ママ…ひっく。」
「エマさんに出来ることは、1日でも早くお母様に会いに行くことではないの?」
「ママ……。」
「エマちゃん……。」
「エマちゃん、お別れしようね。」
「……っく、
「私もよ!」
「私も!」
「ごきげんよう、エマさん!」
1904年2月6日に国交断絶。この2日後の2月8日に日本は旅順口攻撃を行い、日露戦争が開戦した。これがエマと3人との別れだった。
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