第147話 ダイアナの年越し準備

かおるくん、ここにヨールカを出してもいいかしら?」

「うん、そのつもりで掃除しておいたから。」

ダイアナがクリスマスツリーにしか見えないヨールカと呼ばれるものを設置する。


ダイアナの故郷であるストロガノフの里は文化もカレンダーもロシア式だ。ジェト・マロースと呼ばれるサンタが12月31日の夜に、ヨールカの下にプレゼントを置きに来るのだ。

「ダイちゃん、エンマもお手伝いしたいです。」

「あら、ありがとう。」

ジジ&マリーとエマが手伝って可愛らしいツリー…ではなくヨールカが出来た。


「きれいに飾りつけできましたね。おばあさま、キャビアとシャンパンとみかんはかおる君が買っておいてくれたみたいです。ポテトサラダとニシンとジャガイモを重ねたサラダはおばあさまが作りますか?」

「モンたんったら!オリヴィエサラダと毛皮を着たニシンよ!お節作りの邪魔にならなければ私が作りたいわ。」



「エマちゃん!パパたちとお出かけしよう!」

ひかるに声をかけられ、ふり返るとカールフェンリルとレティフェンリルもいた。

新年の支度の戦力外なメンバーだ。

「でも…ダモたちは働いているのにエンマたちだけ遊びにいくなんて…。」

エマがしょんぼりと俯く。

ダイアナが感動で目を潤ませる。

「エマちゃん、エマちゃんは源氏の里の冬は初めてでしょう?見せたい場所がたくさんあるんですって。ひかるさんたちもエマちゃんを案内するのを楽しみにしていたのよ。遠慮しないでいってらっしゃい、楽しんでくるのよ。」

ダイアナがエマの頭を撫でると、デイモンが素早くエマにコートを着せ、帽子をかぶせ、手袋を渡す。

「父さん、ジジ君とマリーちゃんは寒がりなのでこのペットスリングに入れてあげてください。」

ジジ&マリー専用のペットスリングをひかるに渡す。猫も大好きなひかるはご機嫌でジジ&マリーを抱きあげる。甘えられて嬉しそうだ。


「錦市場で食べ歩きしてくると良いよ、お昼はそれだけでお腹いっぱいになるから。父さん、母さんが暴走しないようよろしくね。」

釘を刺されたレティフェンリルがかおるを睨むがかおるはしらんぷりだ。


「エマちゃんたら…いい子なんだから…。レティからは絶対に聞けなかった言葉だわ。」

お正月料理の肉だけをつまみ食いする子供時代のレティフェンリルとの闘いの日々を思い出し、ダイアナが涙をこぼした。

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