第122話 公開プロポーズはお断りだ

「きゅ!きゅうー!!」

「モフリン!」

とりあえず会いにきた。

アシュタロトを見つけるなり、鳴いてしがみ付いてくるチビ妖狐。

「おお、よしよし。」

もともと動物が好きすぎて野生動物のレスキュー団体でボランティアをしていたアシュタロトも大喜びだ。怖い顔を綻ばせている。


「これは決まりだな。」

「そうね。」

「アシュタロトさんなら安心だね。」


「アッシュ!」

「・・・ん?」

あって無いような家族会議を経て、たちばなが呼びかける。

「この子の行き先はアッシュのところに決まりだから。」

「・・・・・それは嬉しい。本当に光栄に思う。・・・しかし無理だ。俺自身、モフリンの世話をしながら引き取れないか考えた。しかしモフリンは高級ペット、とても俺には払える金額ではない…。」

アシュタロトの怖い顔が悲しそうにゆがむ。

その人気と繁殖の難しさから、妖狐は高級ペットだった。


「いやいや代金は不要。」

「そうそう家族ですもの。」

「・・・?」

たちばなと結婚してモフリンを込み込みで引き取ってくださるのでしょう?」

「そっ!それは!!改めて!それなりのシチュエーションでプロポーズをするつもりで!!」

「じゃ、どうぞ。」

「うむ、かまわんぞ!」

「・・・・・・・・。」

たちばなの家族が興味深々で公開プロポーズを要求してくる。

顔つきだけは真面目だが、祖父母と両親ときょうだい3人の尻尾が好奇心でぶん回されている。下世話臭がプンプンだ


「・・・・それは二人の時に・・・それなりのシチュエーションを用意したいし・・。」

「えー。」

「残念―。」

たちばなの家族が尻尾を萎ませる。


この家族の前でだけはしたくない・・・・。

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