第92話 ダイアナの里帰り

「おじいちゃん・・・・。」

「可哀そうなんだぜ・・・。」

番持ちであるジジ&マリーは考え方がカール寄りだ。


「と、とにかく!吸血鬼族の里は冬が厳しいの!冬支度は一族で協力しないと!」

あー忙しい忙しいと言いながらダイアナが逃げた。


「ダモ・・?」

「仕方ないのです。確かにおばあ様の里の冬は長く厳しいので、充分な準備がないと安心して冬を越せないのです。」

デイモンが下を向いて悲しそうに話す。

「それなら、おじいちゃんがダイアナさんと一緒に行ってはいけないの?」

マリーの疑問にジジが「うんうん」と頷いている。

「・・それが・・・・以前、一緒に里帰りした時・・・」


保存食作りの手伝いをしようとすれば、「塩が多い方が腐りにくいだろう」と塩を入れ過ぎるため、塩抜きしてから保存食を作り直すことになったり、別荘ダーチャの屋根を修理しようとして壊したり…、怒り狂ったダイアナが機嫌を直すまで、家族全員がびくびくしながら過ごして以来、カールのお手伝いは禁止されている。


「そ、そうなの・・・。」

ジジ&マリーも掛ける言葉が見つからず視線を泳がせる。


ダイアナのプィシカとピロシキをバスケットに詰めてカールフェンリルの元へ行く。

「おじいさま?」

「めそめそめそ・・・・。」

カールフェンリルが丸くなって泣いていた。

ジジ&マリーが寄り添い、エマが癒しの魔法をかける。

怪我や病気ではないため癒しの効果はないがエマの気持ちである。


カールはダイアナのプィシカとピロシキをすべて平らげた。めそめそしていても食欲は衰えていないようでデイモンもエマも一安心だ。



カールがいつも以上にダイアナに甘えたがりな数日を過ごし、今日はダイアナが里帰りする日だ。

「きゅうーん!きゅううーーん!!」

お目目いっぱいに涙を溜めたカールフェンリルが泣きながらダイアナにすがる。

「ごめんねカール、一緒には連れていけないの。1週間で戻るから、良い子で待っててね。」

「きゅうーん!きゅううーーん!!」

ペットを宥めるように言い聞かせるが、カールフェンリルが激しく縋る。


――――――― これはダメだわ。

そんなダイアナの心のつぶやきが聞こえたような気がする。


「がぶ!」

ダイアナがカールフェンリルの首筋に牙を立てた。

「ちゅううー!」

力いっぱいダイアナに縋っていたカールフェンリルの前足がダイアナから離れ、ぽとりと落ちた。


――――――― 貧血だった。


「じゃ、後はよろしくね!」

ダイアナに血を吸われ、くたっと動けなくなったカールを置いてダイアナが里帰りした。

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