第83話 フギンとムニンの残業

「・・・・エマ、・・・その・・・・。」

「どうしましたか?」


人間界での短期留学も2週間を過ぎた頃の放課後。

生意気なジェフ(5歳)が、もじもじとエマに話しかける。

ジェフの兄であるテッド(8歳)が少し離れたところで変なジェスチャーをしているが、この兄弟は、いつもちょっと変なので気にしない。


「今日、一緒に帰らないか?」

「毎日みんなで一緒に帰っていますよね?」

「そそそそそそ、そうだったな!」

「そ、そうだ!しゅしゅしゅしゅしゅしゅ、宿題を・・・!」

「宿題は自分の力でやらなきゃダメですよ、どうしても分からなかったら、明日教えてあげますから、まずは頑張ってみてください。」

「そそそそ、そうだな!じゃ、俺、帰るわ!またな!」

生意気で挙動不審なジェフ(5歳)が一人で走っていってしまった。


「一緒に帰ろうと言っていたのに一人で帰っちゃいましたね・・・。」

「テッドも追いかけて行っちゃったわ。」

「じゃあ、僕らだけで帰ろうか?」

マギーとアンディーとアンディーの妹のベスの4人で下校した。

もちろん、エマはベスと手を繋いでいる。1歳年下のベスはエマより少しだけ小さくて可愛いのだ。


「よよよよよよお、エマ!久しぶりだな!」

「昨日も学校で会いましたよ。」

ジェフが今日も変だ。

「宿題は一人で出来ましたか?」

「あああ!ああ!やってやったぜ!」

「見せてください。」

昨日のジェフの宿題は書き取りだ。

「ちゃんとできていますね、もっと丁寧に書くことを心掛けると、もっと良いと思いますよ。でもこれなら充分、先生に褒められますね。」

「そっそそそそそそそそうか!じゃ、またな!」

生意気で挙動不審なジェフ(5歳)が去っていった。

「教室はここなのに・・・。」

「ジェフは今日も変だね。」

「テッドが連れ戻しに行ったから大丈夫じゃない?」



上手いこと編集された映像を水鏡で見たフギンとムニンが複雑な表情をしていた。

「これは・・・・」

「このままデイモンには見せられんぞ・・・。」


ダラダラと汗を流すフギンとムニンが顔を見合わせる。

「あの小僧は間違いなくエマに好意を持っているな?」

「儂も間違いないと思う。」

「しかしエマはまったく気づいておらぬな。」

「・・・・・・。」


はああー。

エマの映像を再編集するフギンとムニンがため息を吐く。

「当分の間、映像の再編集で残業だな・・・。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る