第80話 初めての街に興味津々です

「引っ越しも楽に済んだわね。」

「アルコンたちが入念に準備を進めてくれたおかげだな。」

ルシファーとサタンが微笑み合う。


「エマ、ここにいる間はパパとママだぞ。」

「パッ!パパパパパパ・・・・・・パパ。」

ギュっと目をつぶって真っ赤になったエマがつぶやく。

「・・・・いいな。」

サタンが珍しくにやけている。

「エマちゃん、私は?」

「る!じゃなくて、ママママママママママ・・・ママ。」

2人は嬉しそうだがエマは恥ずかしさで爆発寸前だ。


恥じらい疲れたエマをお昼寝させてから、3人で外出した。

デイモンが仕立てた時代考証もばっちりな服を着たエマが可愛い。

この屋敷で働くのは、もちろん魔界ランドのメイドと官僚たちだ。

「髪型はこんな感じかな、どう?」

「ありがとう、エレンちゃん!」

なじみのメイドに髪型を整えてもらい、デイモンの仕立てた服を着てご満悦だ。

ジジとマリーが足元で、みゃうみゃう鳴いている。

「わあ、ル・・・ママも可愛いです!」

「ふふふ、ありがとうエマちゃん。」

「エマ、パパは?」

「サ、・・・・パパもカッコいいです。」

先ほどよりは自然になった。

「あのね、写真撮ってもいい?ダモたちに送りたいです。」

「この屋敷の中だけでならいいんじゃないか?」

「そうよねえ。」

「ジジ君とマリーちゃんも一緒に撮ってください!」

パシャ。

オシャスタグラムにアップした。



サタンとルシファーに挟まれ両手を繋いだエマだったが、初めての人間界に興奮しキョロキョロし過ぎて、サタンに抱っこされてしまった。

「さ・・・パパ、エンマ降りたいです。」

「ダメだ。」

「・・・・・。」

不満だが、何度も勝手に飛び出そうとしたため言い返せない。


「エマ、あれがエマの通う学校だ。」

教会に付属する建物で、とても人間界ぽかったが、天使族のエマにはなじみやすそうだ。

「降ろしてください!」

「・・・手を繋ぐんだぞ。」


「ようこそ、お待ちしておりましたよ。」

ふくよかで優しそうなシスターに迎えられた。

自分の仕事の都合で引っ越してきたことや、これまでは家庭教師について学んできたことをサタンが伝える。


「そうですか。こちらは似た年頃の子供たち全員一緒のクラスで学びます。年上の子はより高度な勉強をしていますが、大きな子が小さな子の面倒をみたり、勉強を教えたりもします。ここではお勉強だけでなく社会性も学ぶのですよ。」

「エマは一人娘なので、良い経験になるでしょう。」

サタンが重々しく頷く。

明日から通うことを確認し、3人で帰る。

「さ、・・パパ、エンマ自分で歩きたいです。」

「だめだ。」

「こんなに落ち着きがないと、明日からの登校も心配ね・・・。」

「大丈夫ですから!」

「信用できん。」

「うぐぐぐぐ。」

サタンの引率が決定した。

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