第78話 エマの短期留学
「相談というのは?」
「珍しいですね?」
「そんなに緊張しないで。お茶をどうぞ。」
モレクとイブリースとアルコンに相談しているのはエマの教師である大鴉のフギンとムニンだった。
「あなた達はエマの教師として、実によくやってる。」
「我々3人、高く評価していますよ。」
「陛下たちはもちろん、テオ君やニナさんからの信頼も厚いでしょう。」
いったい何を相談したいのか?
なぜ、2羽が「もう打つ手はない」と、思い詰めた表情でいるのか?
「エマは素直な良い子なのですが・・・。」
「教えたことも良く守る良い子なのですが・・・。」
「・・・・・いったいどこに問題があるのでしょう?」
モテないトリオが揃って首を傾げる。ちょっと可愛い。
「問題はエマではないのです。」
2羽がカッと目を見開く。
「陛下たちがエマを可愛がっているのはいいのです。ですが甘やかすのはエマのためにならんのです!」
「先日も・・・エマが木の根に転んだ時、すかさずデイモンが現れて・・・。」
転んだ途端にふみゃあと泣き出すエマ、抱き起すデイモン。
「エマはもう7歳、転んでも泣かずに自分一人の力で立ちがるべきなのだ。
「泣きそうなエマを黙って見守るのは胸が塞がれるような思いがするが、甘やかしはエマのためにならんのです。」
ああ、そういえば、そんな光景しょっちゅう見るわー。とモテないトリオが回想する。
「それに陛下も陛下ですな。7歳ならばできて当然のことも過剰にほめ過ぎです。褒められて満足し、それ以上を目指さなくなったら…エマの可能性を潰してしまうことになる。」
ああ、そういえば、そんな光景しょっちゅう見るわー。とモテないトリオが回想する。
「たしかに現在の環境はエマのためにならないかもしれませんね・・・。」
「エマは可愛い子供だが、たしかに少し幼いところがあるかもしれませんね。」
「同じ年頃の子供がいないので比較対象がなかったなあ。」
「我々も気づかず申し訳ない。」
「皆さんなら、きっと理解いただけると信じておりましたぞ!」
「ご相談して良かった!」
フギンとムニンが涙ぐむ。
「それで、どうしましょうかね。」
とモテないトリオがたずねると
「短期留学はいかがかな!」
「ヴィクトリア女王の時代のイギリスはどうですかな?」
フギンとムニンが提案する。
「ちょっと裕福な家庭の子供として教会付属の学校に通いながら、近所の同じ年頃の子供達と交流・・・。」
「エマが経験したことのないことばかりですね。」
いいんじゃね!と3人と2羽が頷き合う。
この取り組みはダイアナやテオとニナにも喜ばれた。
3人とも同じ心配を抱えていたのだ。
「では、エマの短期留学についての秘密会議を始めます。」
もちろんカールとデイモンに秘密の会合だし、エマにも内緒だ。エマが喜ぶのは間違いないが、喜びすぎて秘密を守れないのも確かだからだ。
「これまでに手配が完了したことを報告します。」
・ ヴィクトリア女王時代のイギリスに資産階級の家族として引っ越す。
・ サタンとルシファーが両親という設定
・ 留学期間は1か月
・ ジジとマリーは同行する(ただし人間界では一切喋ることはできない)
・ 現地の資産階級の子供向けの学校に通う
・ 住まいは同じ学校に通う子供が多く住む地域
・ カールとデイモンの同行は当然禁止
「こんなところでしょうか。」
「サタンさんとルシファーさんは出張扱いになります、1か月の間、24時間拘束になりますので、規則に従って手当もでます。詳しくは通達をご確認ください。
サタンとルシファーが頷く。
「発表の後、陛下とデイモンですが・・・。」
全員がダイアナを見る。
「やっかいだけど仕方ないわね!」
「やっかい」と言いながら、まったく困っていない。
2人からの抗議を全スルーのつもりのようだ。
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