第76話 僕、自力でブラシします

「ダイちゃん、怒っていましたね。」

ジジとマリーをお供にトテトテと廊下を歩くエマ。

「おじい様が心配です。」

耳を垂らし、尻尾を引きずりながらエマに寄り添って歩くダモフェンリル。


『いい!モンたん、換毛期にブラッシングを嫌がって汚いままでいるとエマちゃんに嫌われるわよ。・・・そうよね?エマちゃん?』

『はははははい、ダイちゃん。』

『ぼぼぼぼぼぼく、綺麗にします。』

脅迫のようなダイアナとのやり取りを思い出すとため息が出る。


「ダモ、エンマもお手伝いしますよ。ジジ君とマリーちゃんにもブラッシングしていますから!」

「ははは・・・ありがとうございます、ははは。」

エマであれ誰であれ、ブラッシングされることが嫌いなのだが、とても言えない。



「よいしょ・・・くっ・・・ぐぬぬぬ・・・・・。」

デイモンの部屋から苦しそうな声が聞こえる。

エマに全身をブラッシングされたら、無意識に暴れてしまい、嫌われるかもしれない・・・だから自分でやることにした。

二足歩行フェンリル化して、手足、首、お腹の毛を自力でブラッシングしているのだが、長毛種でダブルコートでモッサモサなフェンリルの毛皮は一筋縄ではいかない。

効果的で痛くないブラッシング方法をネットで調べ、決心が鈍らないうちに…とツンドラ・プライムで各種ブラシを取り寄せ、自力ブラッシングを始めて2時間。


こんもり。


巨大な毛玉が出来上がった。ダモフェンリル一頭分は出たが、まだまだ出る。一番の難関、尻尾の付け根は手付かずだ。もちろん背中も届かない。


自分の抜け毛をみて、げんなりするが、短毛なジジとマリーのスベスベで艶々な毛皮を思いうかべ、負けてはいられないと奮起する。


この毛皮で僕の等身大のお人形を作りましょう。

手芸が得意なデイモンは、犬毛フェルトも上手なのだ。

換毛期が終わるころ、エマの部屋に新たな人形が設置されることになる。

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