第75話 逃げるカール、怒るダイアナ
メラメラメラ・・・・ダイアナが怒りの炎を纏っている。
エマが羽を縮こまらせ、震えている。
怯えるエマを励ますように、ジジとマリーがエマに身体を擦り寄せる。
ぎゅ!
不安を紛らわせるようにエマがジジとマリーを抱きしめる。
チャッカ、チャッカ、チャッカ・・・
白と黒のハスキー柄でコリー顔のダモフェンリルが赤い舌をべろんと出し、何も気づかずチャッカチャッカと爪音を響かせながら近づいてくる。
「エンマー!ここにいましたか!探したのですよ。」
ダモフェンリルが上機嫌だ。
「エンマ?なんだか元気がありませんね、まさか!病気ですか?」
鼻先でちょん!とエマをつつき、おでこをくっつけてくる。
「お熱はないですね。」
こてんと首を傾げる無邪気な様子がかわいい。
「・・・・モンたん。」
「わ!びっくりした!いらしたのですか、おばあ様。」
エンマしか見えていませんでした!とテヘペロする。
「モンたんは良い子よね?」
「おばあ様?」
「モンたんは、エマちゃんを困らせたり、エマちゃんを怒らせたり、エマちゃんに嫌われるようなこと、しないわよね?」
「もちろんです!」
劇画調の顔で前のめりで答える。
「・・・・・そう。聞いたわよね、エマちゃん?」
「はははははい!エンマ、聞きました。」
何を?とダモフェンリルが首を傾げる。
「そろそろ換毛期、モンたんはジジ君やマリーちゃんのように大人しくブラッシングされるのよね?エマちゃんを困らせたり、エマちゃんを怒らせたり、エマちゃんに嫌われるようなこと、しないのだから?」
びくっ!
ダモフェンリルが30㎝ほど飛び上がった。
「ダモ?」
エマがデイモンの顔を覗き込む。
「もももももももももちろんですよ、エンマ、HAHAHAHAHA!」
カタカタカタカタ・・・・
返事も笑いも不自然過ぎるし震えている。
「ダモ?震えていますよ?」
「だだだだだだだだいじょうぶですよ、エンマ・・・。」
「いい子ねえ、モンたん。」
メラメラメラ・・・・・・
「孫のモンたんは、こんなに聞き分けが良いのに・・・カールったら・・・・。」
メラメラメラメラメラメラ・・・・・・
ダイアナが炎上しながら歩き去り、ダモフェンリルとエマが抱き合って震えた。
「・・・・・ダイちゃん?」
少し離れた場所からカールがダイアナを呼ぶ。
「・・・・・・・。」
ぷいっ!
冷たくカールを一瞥したダイアナがソッポを向く。
ガーン!という文字を背負い、この世の終わりのような顔をするカール。
「ダイちゃん!」
じゅわっと涙を滲ませたカールフェンリルがダイアナの前に飛び出し、不満そうに仁王立ちする。
ぷいっ!
「ダイちゃん!」
プルプルと震えながら涙目でダイアナを見上げる。
ちらりとカールを見て、、
「・・・・・ブラッシングする?」
「・・・・・・・・・。」
だらだらと汗を流し、葛藤がそのまま顔に現れたように苦しそうな表情をみせながら無言のカール。
「・・・・・・・・・・カールのバカ!もう知らない!」
ダイアナが走り去った。
その場で呆然と立ち尽くすカールをヒースが捕獲し、キッチンへ連れて行った。
「それは陛下が悪いと思うよ、ダイアナさんが怒るのも無理ないねえ・・・。」
唄子もダイアナに賛成のようだ。
ダイアナに嫌われたくないけど、ブラッシングも嫌で、しくしくと泣くカール。
「そうだ!陛下!坊主にしちゃえば良いよ!」
我ながらグッドアイデアと言わんばかりの笑顔だ。
「ヒース、さすがにそれは・・・」
「え?どうしたの?いい考えじゃない?」
インベントリからバリカンを取り出し、カールに迫るヒース。
「やめて!それはやめて!」
ぎゃんぎゃん泣きながら逃げるカール。
「ヒース!」
ぴたっ。
唄子の一言で停止した。
唄子の影に隠れ、震えるカール。
「陛下、大人しくブラッシングされるほか、ないと思うよ。」
カールを振り返り、諦めるよう説得する唄子。
涙目で項垂れるカール。
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