第71話 天界のサンドウィッチ
「唄ちゃん!これ!とっても美味しそうだよ!!」
「これは・・・すごいね!」
「ね、唄ちゃん、今度作って!」
「うん、これは是非挑戦したいね!」
雑誌のグルメ記事を見つけたヒースと唄子がヤル気になり、さっそく豚肉を仕入れにいった。
それはパンの10倍は分厚いトンカツが挟まれた夢のようなカツサンドだった。
肉卸の専門業者が上野のデパ地下にオープンさせたお店で販売されている、数量限定の名物メニューの記事だった。
そして唄子によって肉の厚み約3㎝のトンカツが挟まれたカツサンドが出来上がった。中心までキレイに火が通っているのに肉が柔らかい、大成功だ。
ランチに集まった全員が歓声をあげる。
せっかくなので肉サンドの日にしようと、ステーキサンドとハンバーグサンドも作った。
フェンリルたちが大喜びで尻尾をぶん回している。
「お肉ばっかりにならないようにサラダとフルーツも用意したけど、たまにはこんな日があってもいいよね。」
唄子さんの言葉にフェンリルたちがコクコクと頷く。
この日ばかりはダイアナも仕方がないと嬉しそうだ。
「全種類、小さめにカットしたのはこっち。エマちゃんとジジとマリーもお腹いっぱい食べておくれ。」
「ありがとう!唄子ちゃん!!」
これならばエマもジジもマリーも全種類を堪能できる。
「唄子さんは気が利くんだぜ!」
「いつも私たちのことまで考えてくれるのよね~。」
ジジとマリーが、食べるのと感激するので忙しい。
「このお肉美味しい~!さすが唄ちゃん!」
ヒースが大喜びだ。
「本当に!この厚みの豚肉にちゃんと火を通すことができるだけでもすごいのに、お肉が柔らかいわあ・・。」
ダイアナも感心しきりだ。
「ソースも美味しいですよ!カツサンドやハンバーグサンドにステーキサンド、それぞれのお肉に合うソースを手作りしたのですね?」
「まあ、せっかく良いお肉だし、美味しく食べたいからね。」
デイモンの疑問に照れながら唄子が答える。
「トンカツで食べても美味しいけどカツサンドで食べても美味しいのう。」
「僕、具沢山な腕白サンドも好きです。」
断面萌えなやつ!とデイモン。
「そういえばサンドウィッチは天界が発祥ではなかったかの?」
「天界で人気の具は何ですか?」
「キュウリです!」
カールとデイモンの無邪気で不用意な質問にエマが意気揚々と答える。
・・・・・・・・・・きゅうり?
そんな質素な・・・
ミックスサンドの中で一番最後に残るやつ・・・
しかし鰻事件で学んだ教訓がある。
全員、思った言葉を飲み込んで声には出さなかった。
「そ、そう、キュウリ。」
「うん!」
「お、おいしいよね。」
「うん!」
幸いなことに美味しいお肉に夢中で、エマは凍り付いた空気に気づかなかった。
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