第36話 デイモンのシャンプー

女官たちが慌ただしく湯あみの支度を整える中、サタンが仁王立ちしていた。

サタンのぶっとい腕で後ろから羽交い絞め抱っこされているのはフェンリル姿のデイモンだ。

デイモンの胸のフサ毛にサタンの腕が埋もれている。デイモンが逃げられないようしっかりと力を込めて抱かれているのだ。


子供の頃から人型の時はお風呂好きなのにフェンリル型の時はお風呂嫌いだった。以前、この状態から逃げようと暴れた時にはサタンの怪力で肋骨が粉砕した。息も切れ切れに「治癒魔法を・・・・」とつぶやいたが、「大人しくなって丁度良い。」と、治療もせず血反吐を吐きながらシャンプーされた。

まだ少年フェンリルのデイモンはサタンに叶わない。今日も不機嫌顔でサタンにホールドされている。


「お待たせです!」

フリフリな上下セパレートの水着姿でエマが現れた。

「エンマもダモのシャンプー、お手伝いしますね!」

・・・・・・・変ですね・・・・・嬉しいのに尻尾が反応しませ・・・ああっ!もうサタンさんは乱暴ですね!物思いにふける間もなくお湯に漬けられました。


ガッシ!ガッシ!ガッシ!

痛い!痛いです!サタンさんは乱暴過ぎます!!


「ダモ?エンマはダモの首の周りを洗いますね!」

お痒いところはありませんかー?と楽しそうにモシャモシャしてくれるエマの手が小さくて可愛いですね、でも尻尾が反応しません。


エマが可愛らしく手伝ってくれる中、サタンの手で全身を洗われ、ずぶ濡れのフェンリルが出来上がった。


「泡もすすげたな、念のためにもう一度お湯をかけて終わりだ。」

なんですと!?すすぎ終わったと言いつつ、またお湯をかけるつもりですか!鬼!悪魔!サタン!


ザッバー!ザッバー!

心の中で罵っている間に掛けられちゃいました。全身の毛がお湯を含んで重くて気持ち悪いです・・・・・・・

「もういいぞ、今日はいい子だったな。」

「・・・・・・・・・・・・。」

全身に怒りを溜め込んだフェンリルがサタンに近寄った。


ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルッ!!!!

サタンもずぶ濡れだ。


くくく・・・・この気持ち悪いぬるま湯を味わうが良いです!


「ずるい!エンマにもブルブルして!」

え?

いやいやいや!エンマにそんなことできませんよ!

「早く!エンマにもブルブル!」

エマが痺れを切らした顔をしている。


じゃ、じゃあ少しだけ。

プルッ

「きゃあ!冷たーい。」

ああ、エンマが風邪を引いてしまいます!

「ダモ!もう一回!もう一回ブルブルして!」

なんですと?

「もう一回!」

プルプルッ?

「きゃあ!もう一回!ダモ!」

プルプルプルッ!

エンマが楽しそうです。


「エマちゃん、そのままじゃ風邪を引くからお風呂に入りましょー!」

「はあい!ダモ、後でエンマがブラッシングしてあげますからね!」

女官のポリーに連れられ、エマがお風呂へ向かう。


油断した隙にサタンさん捕獲され、タオルで力任せに拭かれた。

サタンはブルブルの件を根に持っていたようだ。

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