第30話 デイモン、エマのワンピを仕立てる

デイモンが眉間にシワを寄せ、真剣にタブレットを見ている。

表示されているのは写真共有型SNSのオシャスタグラムだ。デイモンがフォローしているのは人間界の王室アカウントである。ロイヤルな子供たちの画像をチェックしては、次に作るエマのお洋服の参考にしているのだ。


「どの子も可愛らしいですね、エンマには及びませんが・・・・、スペイン王室の王女様たちのワンピースが素敵ですね、次はこちらを参考にしましょう。白地に小花柄のワンピースに、マスタードイエローとブルーの生地も買いましょう。間違いなく似合いますよ。」

くふふと笑みがこぼれる。


「鰯の梅煮、美味しかったですね!ごはんがススムくんでした。」

梅と生姜をたっぷり効かせたので臭みもなく、圧力鍋で煮たので骨も気にならない。

「鰯は初夏から秋にかけてが旬なので栄養豊富で美味しいのですよ、梅の風味が合うのですよね。」

鰯の梅煮は肉好きデイモンもお気に入りのメニューだ。


「さて・・・。」

食後の団らんタイムに、デイモンがネット通販でオーダーした生地を取り出した。

「それは何ですか?」

エマが首を傾げながらデイモンを見上げる。

「この生地で夏のワンピースを仕立てて、出来上がったら人間界に遊びに行きましょうね。」

大喜びのエマはデイモンの背中に張り付き、デイモンの肩に両手と顎を乗せデイモンが仕立てる様子を見守った。嬉しそうに頬を染め、小さな羽をパタパタさせながら無邪気に喜ぶエマ。


くっくっくっ・・・これで先日のニンジン事件もチャラですね・・・・。

エマから見えないのをいいことに、悪い顔でほくそ笑んだ。


「さあ、出来ました!」

ちょん!と余分な糸を切り落とし、小花柄のワンピースを広げて見せる。

肩の位置でワンピースを持つエマのために、インベントリから鏡を出す。 

「わあ!かわいいです!」

「似合うぞ、エマちゃん!」

「えへへ、ありがとうございます。ダモ!エンマ、明日このワンピース着たいです。」

「仕立てる時にシワがよってしまいましたから一度洗ってアイロンをかけますので明日は無理です。」

「むう・・・。」

エマは不満顔だ。

「土曜日に、このワンピースとピンクのカーディガンでお洒落して、人間界に行きましょう。3歳の頃に食べに行った熊さんのアイスを食べましょうね。」

覚えていますか?というデイモンの問いに、ぱあああ!とエマの顔が明るくなる。

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