最強クラン決定戦 予選(21/22)
「ひ、ひぃ!! なな、なんなんだ貴様は!?」
ハルトの凶悪な魔力に気圧された邪神が
「俺は彼女の、シトリーの夫です」
一歩ずつハルトが前に出ていく。
「それから俺は貴方に殺されてこの世界に来たんですが……」
邪神はハルトに恐怖した。
人族の肉体としては貧弱な器。それに見合わない膨大な魔力。到底ヒトでは扱えるはずのない魔力量だった。
「お、俺が、貴様を殺した?」
「まぁ今はそんなことどうでもいいです」
邪神にハルトを殺したという記憶はない。ハルトに殴られた衝撃で記憶を失っていたからだ。しかし当のハルトも今はそのことを気にしていなかった。
彼が邪神にキレているのはシトリーを泣かせる原因となったから。エルノール家の中ではハルトとアカリに次ぐ力をもつシトリーは家族を守る側の存在だった。
ハルトは彼女が涙を流すのを始めて見た。
「もう二度と、シトリーに近づかないでください」
邪神を消してしまおう。
ハルトはそう考えていた。
神をも消滅させうる力を持った最強賢者が強い意志を持ち邪神に近づいていく。
「い、意味の分からぬことをほざくな。悪魔は俺が創った存在だ。そいつらをどうしようと俺の勝手だろうが!」
もとは魔王の器であったシトリー。彼女の中には邪神の加護があった。ハルトはそれを消滅させることで魔王としての力を失わせたのだ。しかし神との絆は断ち切れていなかった。
その絆はアンナが切断したので問題はないのだが、邪神の言葉を聞いたハルトには別の問題が発生していた。
「あ、あれ? となるともしや……貴方はシトリーのお父さん? じゃ、じゃあ俺の、お義父さん、ってことになるのですかね?」
気づいてしまったハルトから殺気が消える。
さすがに義父は消滅させられない。
「繋がりは斬ったから、もうシトリーさんと邪神様は関係ないと思うのだけど……」
アンナはそう言うが、ハルトは気になってしまう。
「さすがに消滅させちゃうのはマズいですね。それなら半殺し……は、ちょっと弱いな。シトリーを泣かせた分、もう少し強めにヤっときたいから、四分の三殺しくらいでどうでしょう?」
「む、むぐー!? むぐぐ!!」
ハルトの提案に邪神は応えられない。
彼の口には光り輝く縄が咥えさせられていた。更に別の光の縄が邪神の四肢を空間に拘束している。それらはどちらもハルトの魔法だった。
邪神と会話すると決心が鈍る気がしたハルトは、以前と同じように神属性魔法で邪神を拘束していた。
「ありがとうございます。それで良いですね。準備しますので、もう少しお待ちください」
ハルトが邪神の後ろに手をかざすと転移の魔法陣が現れた。その魔法陣の向こう側には立派な椅子が見える。それは邪神の神殿にある彼の椅子だ。
「俺が貴方を四分の三殺しできるくらいの力で殴ると、吹き飛んだ貴方の身体がどこかの国を消滅させちゃうかもしれませんから」
殴った邪神の身体が吹き飛んだ先が神界になるようにしたのだ。
「あー、そうだ。とりあえず連絡しとこうかな。創造神様ー!」
「今から邪神を殴って、そちらに飛ばしまーす!!」
もちろん普通に叫んだだけでは神界にいる創造神まで声が届かない。ハルトは声で叫ぶとともに、念話で神界に連絡をしていた。
──***──
その頃、神界では──
「マズいぞ! あのバカがまたやらかしやがった!!」
「邪神の神殿後方にいる者は今すぐ退避しろ! 高位クラスの神でも容易く消滅する攻撃が来るぞ!!」
たまたま創造神の神殿にいた海神と地神が神界全土に緊急の念話を飛ばす。そんな二柱の神を横目に、創造神が式神たちに荷物をまとめさせていた。
「なにをしておる。儂らも早くここを出るぞ!」
「えっ」
「な、なぜですか。創造主」
「ここが邪神の神殿の後方にあるからだ」
確かに創造神の神殿は邪神の神殿の後方に位置する。
邪神以外の四大神が神殿の入口を創造神の神殿に向けている一方で、創造神のことを良く思っていない邪神は神殿の入口を創造神のいる場所とは逆に向かせることにしたのだ。
「し、しかしこの神殿の強度は神界随一のはず」
「俺ら四大神の身体の次くらいに頑丈なんだろ? さすがのハルトでも、ここを壊すまではいかねーだろ」
「馬鹿者!! ハルトを舐めるな!! 数年前の時点で、この神殿の壁に邪神がめり込むほどの力を有しておったのだ。あのバケモノの成長を侮ってはならん!」
世界の維持に必要な道具を式神たちが回収したことを確認した創造神は速足で神殿から出ていった。
「……マジかよ」
「ど、どうする?」
「どうするって、とりあえずじいさんに従うしかねーだろ」
「そうか。まぁ、そうだろうな」
創造神の慌て様は尋常ではなく、海神と空神もその後をついていくことにする。
しかし海神たちはまだ、ハルトの攻撃が邪神を吹き飛ばして創造神の神殿に多大なダメージを与えるとは考えていなかった。創造神が心配しすぎているだけだと感じていたのだ。
──***──
「……よし。神界の退避も完了したみたいですし、いっきまーす!」
創造神から『やっても良い』と念話で連絡を受けたハルトが右の拳に魔力を纏わせた。
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