最強クラン決定戦 予選(4/22)
なんかよくわかんないけど、俺の母親って凄いヒトだったみたい。
そんな母が率いる超人たちと戦うことになった。
俺の兄であるカインは超直感というレアスキルが使える上に、剣の腕前はグレンデールという国において人族最強クラスだ。
もうひとりの兄レオンもカインに近い実力がある。彼がなにか特殊なスキルを持っていると聞いたことはない。でも洞察力や動体視力が非常に優れていて、微かな動きから相手の次の行動を予測できてしまうらしい。
姉のシャルルは読心術というスキルが使える。俺が魔力を応用して無理やり使ってるヤツなんかじゃなく、彼女のは本物のスキル。特にシャルルの読心術はかなり強力なもののようだ。一度に多人数の心の声を聞いたり、読心術にも耐性を持つエルフの心の声も聞くことができるとか。
ダイロンと同じくアルヘイムからやって来たサリオン。彼は邪神の創った肉体に世界樹の意志が入った存在だ。風の精霊王シルフの親、みたいな感じかな。世界樹の意志が強すぎるせいで、肉体がそれに応えきれていない。彼に最適な肉体があればもっと強くなるんだろうな。とはいえアルヘイムではダイロン、現国王のサイロスの次くらいに強い。
白髪の筋肉質なお爺さん。彼は最強の魔物である祖龍様が人化した姿だ。この世界に魔力の素となるマナを流している存在。そんな御方が敵にいる時点でヤバくない? えっと。祖龍様とはだれが戦えば良いのでしょうか……。
祖龍様もヤバいけど、竜神様はもっとダメでしょ。神様だよ? なんで神様をヒトの戦いに呼んじゃったの? ねぇ、母上。なにをお考えなのですか? 神様はダメでしょう。ただ竜神様の育ての親でもあるキキョウが相手をしてくれそうなので、ここは何とかなりそうだ。
これだけの仲間を集めてきた俺の母、アンナ=ヴィ=シルバレイ。母上は今日まで一度も、俺の前で力の片鱗すら感じさせたことはなかった。しかし今、俺たちの前に立つ彼女からは神族クラスの力を感じる。それに母は竜神様の転移門を容易く破壊していた。あと全然知らなかったんだけど、たぶん母上って数百年生きてるみたい。ヒトじゃ、なかったんですか?
「あら。私はちゃんと人族ですよ。ちょっと強いだけのね」
普通に俺の心を読んでくる。
「……もしかして、カイ兄やシャル姉たちの能力って──」
「そう。もとは私の力」
あー、はいはい。
やっぱりそうなんですか。
これだけの力があるんだから、母上も転生者や転移者なのかな? もしくは上位の神様の生まれ変わりとか? 今の存在感的には、神様級だけど。
⦅私は転移でこの世界に来たの。もとはハルト、貴方と同じ世界の住人です⦆
今度は神様や精霊王クラスのみが使えるはずの念話で話しかけられた。
あっ、念話もできちゃうんですか……。
ヤバいですね。
でもこれで、シルバレイ家に黒髪が多い理由が分かった。父は綺麗な銀髪なのに、その子供である俺たちには誰も銀髪がいなかったんだ。てか異世界人の遺伝子、強すぎませんか。
「ちなみに母上たちは、8人だけですか?」
「ハルトがどんな仲間を選手にするか分からなかったから、この場で決めようかなーって思ってたのよ」
大会当日の今日、この場に選手を呼べると言うことなのだろう。神様を呼んでくるくらいだから、かなり選手層が厚いのが予測できる。
「なるほど。では残りの候補が、まさか父上ってことは……」
「ないない。それはない。あの人はほら。あそこで応援してるわ」
母が指さした先の観客席を見ると、こちらに向かって大きく両手を振る父の姿があった。俺たちを応援しているというより、気づいてもらえて喜んでいるという感じ。
「そこのお嬢さんは風の精霊王よね?」
俺の後ろにいたシルフを見ながら母上がそう言ってきた。今のシルフは人化しているし、力もかなり抑えている。それでもわかってしまうらしい。
「えぇ。その通りです」
「私が竜神様を仲間に引き入れたことをとやかく言っていたけど、ハルトだって同じようなものじゃない」
とりあえず俺は口に出してませんよ?
脳内でツッコんでいただけです。
「それじゃ、
母上から膨大な魔力が放出される。
空を覆う巨大な魔法陣が展開された。
「この魔力は……アンナか。お前が我を呼ぶとは珍しい」
魔法陣の中から、見たことある厳ついおっさんが現れた。
「ちょっとお願いしたいことがあるんです」
「ほう。願いとは、なんだ?」
「私の息子と戦うのに力を貸してください」
「……なに?」
母上が手をこちらに向け、召喚したおっさんに俺たちの方を向かせる。
俺たちの対戦相手。
その9人目は──
「ハ、ハルト殿?」
マイとメイの父親。
この世界に存在するすべての精霊の長。
星霊王様だった。
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