最強クラン決定戦 予選(2/22)


「エルノール……。ま、まさかお前、あのエルノールなのか!?」


 ダイロンが凄い速さで詰め寄ってきて、ガシッと肩を掴まれた。


 今の俺は誰が見たって人族だ。それでもダイロンはサリオンの言葉を信じたみたい。サリオンには俺が転生者であることも、邪神の呪いで過去に出会っていたことも伝えていた。もちろん彼の肉体が元は俺のモノだったことも。


 まぁ、俺の肉体って言っても、邪神の呪いで一時的に魂と意志が入り込んでいただけなんだよね。


「お久しぶりです。ダイロン」


「この感じ。お前、ほんとにエルノールなのだな。なぜこの世界で生きているのに私に会いに来なかった? どうして人族になったのだ。もしや転生か? いや、そんなことはどうでもいい。私がどれだけお前に会いたかったか分かるか? お前と再会できた日には、語り尽くせぬほどの感謝を述べたいと思ていたのに……。くそっ、ダメだ。言葉が出ない」


 大粒の涙を流すダイロンの身体は小刻みに震えていた。


「時間のある時に全部お話ししますよ。それよりダイロンは無事に国を作りましたね。俺もアルヘイムには色々とお世話になっています。貴方が作った国はとても立派です」


「おぉ、そうか。お前、アルヘイムにも来ていたのか。俺は王を退いた後、世界を放浪していた。会えなかったのは私のせいというわけか……。ちなみに我が息子、サイロスにはもう会ったか?」


「はい。何度か謁見させていただいています」


 俺のお義父さんですから。


「アイツは上手く国を導いておる。自慢の息子だ。その娘たちもたいそう美人に育っているという。お前さえ良ければ、俺の孫を嫁にどうだ?」


 いや、お孫さんの了解を得なくていいんですか?

 というより、ダイロンの孫って──


「お、おじい様。リファです。私、リファ=アルヘイムです」


 ダイロンの孫は三人いる。

 そのうちのひとりがここにいた。


「……リファ? お、俺の孫の? な、なんでここにおるのだ?」


「ダイロン。実は俺、貴方のお孫さんと結婚しています」


「なにっ!? な、なぜそれを俺に知らせない!! サイロスは何をしておるのだ!」


「お父様は何度もレターバードを飛ばしていました。ですがおじいさまには届かず、全て戻って来ていました」


「もしや、お前たちが結婚したのは6年ほど前か?」


「そのくらいです」


「……しまった。ちょうど俺が魔界に入っていた時か」


 魔界にって、このヒトなにしてるの!?

 

 悪魔や魔人、上位の魔物たちが住む世界。普通のヒトには魔素が強すぎて呼吸すらできない空間。俺も逃げる悪魔を追いかけて何度か行ったことがあるけど、長時間滞在したいとは思えない場所だった。


「声を荒げてすまなかった」


 ダイロンがリファに頭を下げる。


「い、いえ。大丈夫です。頭をお上げください、おじい様」


「いや、しっかりと謝罪したい。そうでなければ、俺は自分を許せない。顔を見たことがなかったとは言え、孫に気付けなかったのだからな」


 ダイロンはリファが産まれるより前にアルヘイムを出ていたため、彼女の顔を見るのは今日が初めてだという。


「とても美しい。目を見れば心も清らかであることが分かる。そしてハルトと夫婦めおとになったのだな。心から祝福しよう。おめでとう」


 アルヘイム建国の王が、俺たちを祝福してくれた。

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