キキョウの秘密
「サイジョウ? ……はい。ハルト様が百年前こちらの世界にやって来た
俺が転生者であることは当然キキョウも知っている。
でも俺が言いたいのは、そうじゃない。
「たしかに俺は西条遥人の生まれ変わりだよ。でも実は俺、西条遥人以外でも何度かこっちの世界で過ごしたことがあるんだ」
それは邪神が仕掛けた『輪廻転生の呪い』にかかった時のこと。時代も場所もバラバラだったが、俺はこの世界で転生しながら六度の人生を送った。ヒトにならなかったこともあるから、『人生』とは言えないかもだけど。
青竜になったり、ゴブリンになったり。
獣人になって、後に武神となる当時の獣人王と戦った。
人族に転生した時は、召喚士としてメイを召喚した。
エルフに転生して、世界樹を悪魔から守ったこともある。
転生を繰り返す中で、特に特徴もない一般人として転生した時──
「俺は今から二百年前、キキョウに会ってる」
「に、二百年前?」
「うん。その時に名乗った名前がサイジョウ」
「……ま、まさか」
キキョウが気付いたみたいだ。
ちなみに俺が六度転生したことは、邪神を殴りに行った時にその場にいたティナとアカリ、シトリー以外には伝えていない。それに邪神を殴れてスッキリしていた俺は、六度の転生でどんなことがあったのかみんなに伝えるのを忘れていた。
ヨウコの父親の件とか、真っ先にキキョウに確認しようとしていたんだけどな……。
「まさかハルト様が……あ、あの、サイジョウ様なのですか?」
「うん。そうだよ」
証拠を見せよう。
俺はキキョウの背後にある九本の尻尾のうち、尾の一番先が白くなっている一本に手を伸ばした。
普段は具現化されておらず、魔視が使えなければ視認もできない九尾狐の尾。でも高密度な魔衣を手に纏えば、それを強制的に具現化できるんだ。
「は、ハルト様、なにを!?」
キキョウが俺の突然の行為に驚いている。
ごめんね。でも俺が二百年前にキキョウに会ったサイジョウだって証拠を見せるのに、
「や、やめっ、そこは──んんっ!!」
キキョウから甘い嬌声が漏れる。
二百年前の俺の身体は邪神の呪いによって創り出されたものなので、それに関して何らかの証拠を示すことは不可能だ。あるとすれば当時の俺がキキョウにしたことの記憶を告げることくらい。
でも当時の俺は、たった一週間しかキキョウと一緒に過ごしていない。人族の冒険者に傷を負わされた彼女は人族である俺も警戒していたから、あまり会話もできなかった。だから今の俺が知らないはずの情報ってのがほとんどないんだ。
そんな中で唯一、サイジョウしか知らないはずの情報がコレ。
「な、なんでハルト様が、その尾のことを!?」
必死になってキキョウが尾を逃がそうとする。
逃がさないけどね。
「それは俺が、サイジョウの生まれ変わりだからだよ」
キキョウとは何度か一緒に寝たことがあるが、素肌に触れたのは邪神を殴りに行く前にみんなとそれぞれ寝た時の一度だけ。俺はその時、彼女が尾の一本だけ俺に触れさせないようにしていたことに気づいたが……。ただ触られたくないだけかと思って、わざわざ触れようとはしなかった。
邪神を殴りに行く前の俺は知らなかった。
キキョウにはお気に入りの尻尾があるということを。
異性とする時、その一本を口元に運んで自ら甘噛みしているということを。
「キキョウ、この尻尾が一番気持ちよくなれるんでしょ?」
「だ、ダメですハルト様!」
ダメって言われるど、やめる気はない。
この周囲にはヒトがいないことも確認済み。
だから、ヤっちゃいまーす。
──***──
10分近く、キキョウの弱点である尻尾を攻め続けた。
乱れたキキョウの姿が可愛くって、つい。
あとで怒られるんだろうな。
でも彼女は先ほど、俺と寝ることをOKしてくれた。
いやぁ、楽しみだ。
今更なしって言われても、それは受け入れられないよ?
絶対に今晩は、一緒に寝てもらうからね。
二百年前は俺が命を落とすまでシてくれたんだから……。
今回は俺の番。
力なくグダっとしているキキョウを支えながら、俺はそんなことを考えていた。
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