クランハウス設計(2/3)
「いや、ハルト。コレはでかすぎるよ」
クランハウスのイメージを見ながらルークが指摘する。
「このクランハウスがどの程度の大きさになるのかはわかんねーけど、フロア半分ってのはさすがに広すぎるな」
「今このお屋敷では三部屋をお借りしていますが、私たちはそれでも十分なほどです」
リューシンとヒナタもそこまで大きなエリアは望んでいないようだ。ちなみにハルトが提案したクランハウスのフロア半分と言うのは、今ルークたちが暮らしている部屋のおよそ十倍くらいの床面積になる。
「そうかな? ルークたちには子どもが生まれるし、部屋は広くて困ることはないと思うよ」
「広すぎると掃除とか大変だろ」
「そうですね。ルークさん、お片付け苦手ですから」
「う゛っ……ご、ゴメン」
冷たい視線を向けながらリエルが小言を言うと、ルークは叱られた子犬のようにショボンとなった。才色兼備に思える
ハルトの屋敷では基本的に、ひとりにつき一部屋自室を持っている。ちなみにマイとメイはそれぞれ自室があるが、いつもマイの部屋で一緒に過ごしている。寝る時以外は自室を使わない者も多い。
ルークやリューシンたちも同じようにひとり一部屋の自室と、夫婦共有の部屋として計三部屋をハルトから借りていた。
夫婦共有の部屋はリエルが掃除できるので問題ないが、ルークの部屋はヤバい状態になっているという。定期的にリエルが片付けに入ろうとするらしいのだが──
「散らかってた方が、なんか新しい魔法を思いつける気がするんだ! 断片的なアイデアがこう、偶然つながる、みたいな? ほら、ハルトもわかるだろ?」
「ごめん、分からん。俺は周りが整理されてた方が考えがまとまるタイプだから」
ハルトは理詰めで新たな魔法を構築するタイプで、ルークは閃きから新たな発想を得る所謂天才タイプだった。
最高の同調者になってくれると思い、ハルトに同意を求めようとしたルークの思惑は外れた。
「ま、まじか……」
「ほら。だから言ったじゃないですか。お部屋がきちんと片付いていても、ハルトさんみたいに凄い魔法は生み出せるんです。今日この集まりが終わったら、ルークさんのお部屋をお掃除しちゃいますからね」
「えっ!? 今日? も、もう少し待って! あと少しで究極魔法のその先が──」
「そう言って、もう三か月も経つじゃないですか。今日こそお掃除に入らせてもらいまーす」
ルークの言葉に少し気になる単語があったが、今この場で聞くと話が別の方向に進んでいきそうだったので、ハルトはそれを聞き流すことにした。
「クランハウスの話に戻るけど、将来のことも考えてルークたちの部屋はフロア半分ずつで良いよ。使わない部屋は俺が時空間魔法で時を止めとくから、特に掃除とかもしなくていいから」
「……なぁハルト、今さらっと凄いこと言わなかった?」
「半分じゃ、やっぱダメ?」
「そこじゃない! なんだ時空間魔法って!? 部屋の時間を止めておけるって何なんだ!?」
「あぁ、それね。
さも当然と言わんばかりに、本来ヒトが使えないはずの魔法を生み出したことをカミングアウトするハルト。彼がやったのは、神が創りしスキルを魔法で再現するという行為。
スキルを魔法で再現すること自体は、ハルトは昔からやっていた。彼が多用する転移魔法もそのうちのひとつ。ハルトは自身がやっていることの重大さを把握していないが、実は彼が新たな魔法を生み出すたびに神界で創造神が頭を抱えていた。
「ちなみにこの屋敷のキッチンにある食材庫にも、中に入れたものの時間を遅らせる魔法がかけてあるよ」
「は?」
「おかげで食材が長持ちして助かっております。ありがとうございます、ハルト様」
「うん。どういたしまして」
このやり取りを聞いていたリエルが思いつく。
「ちなみにハルトさんは、その時空間魔法をどうやって思いつかれたのですか?」
ハルトは瞬時に、リエルの言いたいことを汲み取った。
「神話時代に書かれたって魔導書とかから情報を集めて、必要な術式を解いて、周囲への影響をなくすための反転術式とかも導き出していった。もちろん、綺麗に整理された机の上でね」
「ということです。お部屋の掃除、させていただきますからね」
「う、うん。わかった……」
「片付けてる途中に閃くこともあるかもしれないからさ。頑張れ、ルーク」
ちなみに後日、リエルと部屋の片付けをしていたルークが本当に新たな魔法を思いついてしまうのだが……。ハルトの生み出した時空間魔法と比較するとインパクトが弱く、もっとすごい魔法を生み出すため、この時ルークによって生み出された魔法はしばらく日の目を見ることはなかった。
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