引越し先にあった闇クラン
「えっ、ティナ。これ……え、えっ?」
何度見直しても、それは広大な土地の権利書で間違いなかった。
「ハルト様が王都にクランハウスを造ることにしてくださって良かったです。あの土地には『ノートリアス』っていうクランが巨大な拠点を構えていたんですが、先日
そう言いながらティナはニコニコしていた。
ノートリアスというのは俺も知ってる。この国最大の冒険者クランだ。そのクランハウスが、冒険者ギルドの正面にあったことは知らなかったけど……。
ちなみにノートリアスってクランは、あまりいい噂を聞かない。新人冒険者を勧誘して搾取することがあるみたいなんだ。ほかにも違法な薬物に手を出していたり、
しかし国やギルドがいくら調査しても、確固たる証拠は見つからないようだ。ノートリアスが悪事に手を染めているというのは、あくまで噂。ヨウコがそのことを教えてくれたんだけど、そういえば彼女はどこでその噂を聞いたんだろう?
俺がヨウコからその悪い噂を聞く前は、ノートリアスに関しては良いイメージしかなかった。この国最大のクランなのだから、当然多くの功績がある。さらにその歴史は長く、俺が守護の勇者としてこちらの世界にやって来た百年前も存在していたらしい。
かつて魔王ベレトが起こした
実は俺も、その一人だった。
自分でクランをつくる前に、可能なら少し所属してみるのもありかもしれない──そんなことを考えていた時期があったんだ。百年以上も続くクランなので、俺が今後行うクラン運営のお手本にしようと考えていた。
そんなクランが近年、闇を抱えるようになった。
初めてヨウコから聞かされた時、信じられなかった。
信じたくなかった。
でもそれを教えてくれたのは、俺の妻であるヨウコだ。俺が信じるのは当然、彼女の言葉。
単純と言われればそれまでだけど、ヨウコが『あのクランはいつか潰すべきじゃ』とまで言っていたので、俺は
もちろん何か手を下す前には、ノートリアスが潰れるべきクランであることの確証を得てからやるつもりでいた。そのつもりだったのに……。
なんかそのクラン、もう潰れたらしい。
手元にある土地の権利書を見る。
ま、まさか……。
ふと、彼女の言葉が思い出された。
『先日
……いや、さすがに
ち、違うよね!?
お願いだから、違うって言ってぇぇぇえ!!
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