Cランク昇級試験(1/16)
俺たちは今日、Cランク冒険者への昇級試験を受ける。
邪神を殴りに行く前にはすでに、Dランクに昇級していた。それから色々あって、Cランクに上がるためのギルドポイントを稼ぐのに少し時間がかかった。
まぁ、時間がかかったといっても、通常はCランクになるまで数年かかるらしい。Cランクまで上がることなく引退する冒険者だっているんだ。
それを三か月くらいで昇級試験を受けられるまでにしたのだから、一般的に見ればかなり早い方らしい。
ただ、エルノール家の全員が昇級試験を受けるわけじゃない。
ティナとマイ、メイ、リュカ、エルミア。この五人はお休みだ。
彼女たちのお腹には、
大事をとって、昇級試験には参加しないようにしてもらった。
俺は邪神を殴りに行く前、十五人の妻たちと寝た。
この世界の神様を攻撃しようとしていたのだから、最悪の場合を想定して、この世界に悔いが残らないようにしたかったんだ。
結果として俺には、絶対に死ねない理由ができてしまった。
邪神も問題なく(?)殴れたし、今のところ復讐もない。
俺が邪神のところに行ったとき、その転移元である俺の屋敷に邪神が悪魔を十五体も送りこんできたらしいのだけど──
まったく問題なかった。
むしろやってきた悪魔たちに少し同情してしまったと、屋敷に帰った後で海神から聞かされた。
俺は邪神対策として、海神ポセイドンに屋敷まで来てもらっていたんだ。でも、その海神が手を出す間もなく、屋敷の中庭に現れた十五体の悪魔たちは消滅させられたらしい。
邪神を殴りに行くのについてこれなかった妻たちが、少しでも俺の助けになればと、臨戦態勢で待ち構えていたからだ。
十五体の悪魔が俺の屋敷にやってきて最初に抱いた感情は、『絶望』だったに違いない──星霊王から、そう聞かされた。
妻たちを守るために俺が召喚した星霊王ですら、なにもやっていない。否、なにもできなかったという。
ティナとアカリ、シトリーという俺の妻の中では特に強い三人を連れて邪神のところに行ったわけだけど……。屋敷に残った妻たちも、複数の悪魔を相手取って圧倒できる強者が揃っていた。
本人を除けば、邪神の最強の手駒は悪魔だ。
その悪魔の内、邪神が直接支配する七十二柱の高位悪魔はすでに、そのほとんどが消滅している。
高位悪魔より弱い中位や下位の悪魔なら、エルノール家で一番戦闘能力が低いルナでも、ひとりで倒せる。もちろん、ルナをひとりで戦わせる状況になんてならないよう、いろいろと手は打ってあるけど。
ちなみに俺の妻であるシトリーも、元は高位悪魔だ。彼女と仲が良く、エルノール家には絶対に敵対しないと約束してくれた三体の悪魔たちは、今も魔界で静かに暮らしている。
とにかく今は平和で、幸せだった。
まさか本当に一回で、子ができるとは思わなかったけど──
俺の子供か……。楽しみだな。
「ハルトさん。試験を受ける予定のみんなは、用意ができました」
ルナが呼びに来てくれた。
「わかった。すぐに行くよ」
今回、Cランクへの昇級試験を受けるのは俺とルナ、メルディ、シルフ、アカリ、シトリー、リューシン、ヒナタの計八人だ。
ルークも妻のリエルが妊娠したから、今回の昇級試験はお休み。
ティナたちのお腹はまだ大きくなってないから、家事とかも普通にできる。正直、戦闘だってできるくらいだ。
だけど念のためティナたちと、彼女らを補助する人員として数名には、屋敷に残ってもらうことになった。
リファとヨウコ、キキョウ、白亜、セイラが、お世話役として屋敷で留守番。彼女らはティナたちが昇級試験を受けるときに、一緒にやるつもりだと言っていた。
俺は冒険者クランをつくりたい。
そのためには代表者がCランク以上である必要があるが、それ以外にはあまり制限がないらしい。
だからホントなら俺だけが昇級試験を受ければ良いのだけど、せっかく冒険者登録したのだからと、ルナたちも昇級試験を受けることにした。
「みんな、お待たせ」
「おう。俺らはいつでもいけるぞ」
「準備おっけーです!」
リューシンとヒナタは、子をつくるのをもう少し後にするつもりらしい。
「いよいよクランが設立できるにゃ! リリアとサリーも、きっと喜ぶにゃ」
「頑張りましょうね」
俺はメルディと寝たのだけど、獣人族は発情期に入らないと妊娠し辛いらしい。ルナがメルディに子をつくらせようと頑張っていたけど、今回は子ができなかった。
「ハルト様。頑張ってくださいね」
「みなさん、お気をつけて!」
ティナやリファたち留守番メンバーが、見送りに来てくれた。
「ありがと。それじゃ行こうか」
Cランクへの昇級試験を受けるため、俺はルナたちを連れて王都の冒険者ギルドに転移した。
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