昇級試験の監督

アフターストーリーを再開します。


ここからは、

ハルトたちが冒険者クランを設立する物語。


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「ガド隊長。久しぶりに冒険者昇級試験監督の仕事が回ってきました」


 グレンデールの王国騎士団第二十部隊の隊舎で、副隊長のキールが隊長ガドに声をかける。


「あぁ、またか……。今回はキール、お前がやれ」


「それはできません。国の依頼も受けるようになるCランク冒険者の品定めですから、隊長以上の方がやらなきゃいけないんですよ。そんなこと、ご存じでしょう」


 この国ではギルドに登録している冒険者がCランクに昇級するとき、その試験を王国騎士団の部隊長が受け持つことになっていた。


 それはキールが言うように、冒険者の力と品格を見定めるという目的がある。Cランク冒険者になると、国から冒険者ギルドに出された依頼を受注できるようになるからだ。


 国からの依頼は、その内容の割に報酬が良いものが多い。一方で、依頼を失敗した時の影響も大きくなるため、信頼できる冒険者でなければ依頼を受けられないようにする必要がある。


 だから王国騎士団の隊長クラスが、冒険者を見定めるのだ。


「くそっ。めんどくせぇな」


「まぁまぁ、そんなこと言わずに。今回は、ですから」


「……なに? それは、本当か?」


 副隊長の言葉を聞き、ガドがそのテンションを上げる。


「本当ですよ。場所は王都の冒険者ギルドでなのですが、今回は美女や美少女が五人ほど昇級試験を受けます」


「お、おぉ……!」


 キールはいつも騎士団の仕事では上手い具合に手を抜き、面倒な仕事は全てガドに押し付けてくる。そんないい加減な男だが、ガドはキールの女を見る目だけは信頼していた。


 その副隊長が珍しく、美女や美少女という単語を使ったのだ。

 これは期待できる。それも複数人が試験を受けるという。


 であれば、もあるはず。

 ガドは、そう判断した。



 王国騎士団といっても、そこに所属する全員が国に対して強い忠誠心を持っているわけではない。


 ガドやキールのように、その能力だけで選ばれる者もいる。

 口先だけ国への忠誠を唱えていれば良いのだ。


 もっとも、そうした者たちは国家の重要な案件に呼び出されることは少ない。

 そして第二十部隊という、王国騎士団の内部で最底辺の部隊に配属される。


 第二十部隊に所属しているのは、力はあるが国への忠誠心がない者たちばかり。

 一般人として野放しにすると、大きな問題を起こしそうな奴らだ。


 グレンデールの王であるジルは、そんな者たちを王国騎士団員として採用し、適度な仕事を与えて給金を出すことで、問題を起こしうる人物たちの監視と制御を行っていた。



 問題児だらけの第二十部隊だが、現在はそこそこまとまっている。

 それは現隊長のガドが強いからだ。


 部隊内で起きた揉め事は、当事者間の一騎打ちで解決するのがこの部隊のルール。一騎打ちの敗者は、勝者の指示に絶対服従しなければならない。


 グレンデール国内でも特に強者が集まるこの王国騎士団第二十部隊の全隊員を、ガドは殴って服従させていた。


 ガドは強い。


 現在、国民の間では国王親衛隊長のカイン、王国騎士団長、王国騎士団第十三部隊長のレオンと並んで、ガドは『グレンデール四強』と呼ばれている。実は国王であるジル=グレンデールが、カイン並みに強いことはほとんど知られていない。

  

 そんなガドだが、国への忠誠心がないこと以外にも問題があった。

 大の女好きなのだ。


「冒険者やってる女なんて、金がなくて頭の弱い奴らばっかだろ。今回も……喰えそうだな」


「余ったら私にも回してくださいね」


「全員、俺の使った後でな」


「えー。……まぁ、今回の女のレベルなら、それでも受け入れますが」


 前回、昇級試験をパスさせる代わりに抱いた女冒険者を、キールはガドの後に抱くことはなかった。


 しかし今回は、ガドの後でも良いというのだ。

 それだけ、いい女が来るということ。



「いやぁ。実に楽しみだ」


 醜猥な笑みを浮かべながら、ガドは冒険者ギルドに向かう用意を始めた。

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