第306話 賢者と聖女と精霊姉妹。あと聖騎士団長

 

「セ、セイラ──なんで!?」


 ルナとメルディと寝た翌日。


 元聖女のセイラと、彼女を守護していた元聖騎士団長のエルミアがやってきたのだが──


 俺の部屋に入ってすぐ、セイラがエルミアを拘束した。セイラに手伝えと言われたので、俺も指示通りに動く。


「だってエルミア、こうでもしないと逃げちゃうでしょ?」


「逃げない! 逃げないから、これ外して!!」


 ベッドの上で両手を拘束され、身動きが取れなくなったエルミアが叫ぶ。


「だーめ」


「……なぁ。エルミア、嫌がってないか?」


「大丈夫です。彼女もいい歳なので、そろそろ子作りをするべきなんです。それに本当に嫌なら、でハルトさんのお部屋まで来ませんよ」


「ち、違う! いつもこれ!! 寝る時、いつもこれだから!!」


 エルミアはチューブトップとハーフパンツだけという格好。ちなみに下着は上下ともに付けていない。


 下着を付けてないうえに、ピッタリと身体に密着するチューブトップは──


「エロいよな」


「ですよねぇ。まるで、痴女じゃないですか」


「ち、痴女?」


「そうですよ。そんな格好で殿方のお部屋にやってきて、襲われないと思う方がおかしいです」


「で、でも、私はいつも──」


「今まで襲われなかったのは、ハルトさんの鋼の意志のおかげです」


 そうかな?

 まぁ、そういうことにしておこう。


「そ、そんな……」


「それにエルミア。貴女、子を作りやすくする魔法を使ってから、ここに来たじゃない」


 なんだ、そうなのか。

 なら、遠慮は要らないな。


「えっ!? だ、だって、それは、セイラも使ってたから──」


「あら。わたしは使ってませんよ? エルミアが妊娠したら、身の回りのお世話は、わたしがしなきゃいけないですからね」


「えっ!?」


 どうやらセイラの計画的犯行だったようだ。

 となると、俺がやることはひとつ。


「エルミア、やさしくするから」


「う、嘘だ! 私はメルディから聞いてるぞ!! ハルトは、ケダモノだって!!」


 えぇー。

 そこまでだったかな?


 まぁ確かに、暴走したけど。


「でもルナさんは、『メルディさん、すっごく気持ちよさそうでした!』って言ってましたよ?」


「そうなんだ」


 ちょっと安心。


「エルミア、大丈夫。わたしが、そばについてますよ。さぁ、ハルトさん。どーぞ!」


「ちょ、セイラ!? なにを──」


 ここまでお膳立てされたら、ヤるしかないよな?




 ──***──



「「お、おてやわらかに、お願いします」」


 次の日、マイとメイがやってきた。


 どうやらエルミアが余計なことを吹聴したようで、ふたりは少し怯えていた。


 ふたり同時相手が三連続。

 ちょっと慣れてきたから、今日は大丈夫。


 ──だと思う。



 ちなみに精霊族って、人族と子どもを作れないらしい。


 例外は精霊王。


 マイとメイは、精霊王であるイフリートやウンディーネくらいの力があるけど……子どもは、作れるのかな?


 そもそも、子どもが欲しいのだろうか?



「「私たちふたりとも、子がほしいのですけど……大丈夫ですか?」」


 子どもがほしいらしい。

 どちらかが先とかではなく、ふたり同時に。


「子育てが、心配ってこと?」


「「はい」」


「んー。多分、大丈夫だよ。俺の父上に相談して実家からメイドさん派遣してもらうとか、サリオンにお手伝いを頼もうって思ってるから」


 アルヘイムで結婚式をした際、彼は『もし、ティナ様やリファ様がご懐妊なさることがあれば、いつでもお申し付けください。全力で、サポートいたします』と言ってくれた。


 超人執事のサリオンが来てくれれば、なんとかなる。


 それにリファやセイラなど何人かは、子作りのタイミングをズラすと言ってくれた。



「どっちが先がいい?」


「マイで!」「メイで!」


「ふたり同時はさすがに──」


 いや、できなくはないか。


 俺は最近、『神属性魔法』を覚えたから。


 まぁ覚えたっていっても、神字を使った魔法ってだけで、魔力を大量に使う以外は普通の魔法と、使い方はあまり変わらない。


 違うのは効果かな。


 例えば俺の分身魔法。

 通常魔法では、俺の意識を植え付けた分身を作るだけで、常に同期してるわけじゃない。


 これを神属性魔法で使うと、俺が完全にふたりになる。


 常に意識を同期させ、それぞれが『俺』としてこの世界に存在する。


 賢者という職は、思考の高速処理が可能になるっていう特性があるらしいのだけど、この神属性魔法の分身を使うと、賢者の特性を以ってしても脳が限界を迎えるみたい。


 だから三人以上は、分身を作れない。

 でも、ふたりなら大丈夫。



「「それじゃ、ふたり同時で」」


「「──えっ!?」」



 さーて、頑張るぞ!

 さーて、頑張るぞ!

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