第72話 宴だよ! 全員集合!!
「陛下、あの──」
「ダメダメ! ティナはハルトのお嫁さんなんだから」
王に向かって、ティナのためなら国を相手にしても戦います!──という宣言をしようとしたら、六歳くらいの少女が王に忠言してくれた。
誰だ、この子?
俺に気を使ってくれるのはありがたいけど、相手はこの国の王様だ。
いくら少女とはいえ、王の怒りをかったら厳しく罰せられてしまうかもしれない。
「シルフ、貴方はこの国じゃあんまり認知されてないんだから、王様に失礼でしょ? 私から頼みます」
ふっ、と何処からか現れた美人のお姉さんが少女を止めてくれた。
ん? シルフ?
お姉さんの周囲から水が溢れ出し、身体が精霊体へと変化していった。
美人のお姉さんは、俺と召喚契約を結んでいる精霊ウンディーネが人化した姿だった。
「グレンデールの王よ。この国に加護を与える水の精霊王ウンディーネが頼みを、聞いてくれますね?」
「ウンディーネ様!? は、はい! 何なりと」
いつの間にか王が、お姉さんの前で膝をついていた。
カインとレオンも王に倣い、膝をつく。
貴族たちも皆、一斉に膝をつき頭を下げた。
ウンディーネはこの国グレンデールに加護を与える精霊だったらしい。
「我が友ハルトは、ティナ、リファと結婚したのです。この国はそれを祝福してください。くれぐれも三人を引き離すことのないように」
「承知しました。ハルトの結婚を祝福し、その家庭を、国を挙げて守ると誓います」
なんか思ってた以上に大事になった。
「ハルトたちを守ってくれるなら、我も加護をあげちゃうぞ」
ダンディなオッサンが、料理片手に近寄ってきた。
多分、マイとメイの父親である星霊王だろう。
来てたのか……。
てか、馴染みすぎだろ。
「ウンディーネ様、こちらの方は?」
「我ら精霊族の王、星霊王様です」
「星霊王様!?」
グレンデール王が驚くのも無理はない。
「良かったですね。星霊王様の加護があれば、この先数百年、国は安泰でしょう」
「あ、ありがとうございます」
王が、星霊王とウンディーネに対して頭を下げる。
「しかし、気をつけてくださいね。もし、この国がハルトたちを裏切るようなことがあれば、世界中の精霊が、この国の敵になりますから」
ウンディーネの纏うオーラが周りにいる者たちを威圧した。
「は、はい。肝に銘じます」
王の額から滝のように汗が流れる。
周りにいる貴族たちも、顔が真っ青になっていた。
そこまで脅さなくても良かったのではと思ったが、これでこの国の有力な貴族たちは俺たちの家族にちょっかいを出そうとは思わなくなるだろう。
ウンディーネに感謝だ。
「ありがと、ウンディーネ。でも、今日は祝いの場だから、この辺にしとかないか?」
「そうですね。グレンデール王も、我と約束してくれましたし。さぁ、皆さん、立ってください」
ウンディーネが人化した姿に戻ると同時に、貴族たちを威圧していたオーラが消えた。
王が立ちあがり、周りの貴族も立って周りの者と話し始める。
ただ、ほとんどの人がチラチラこちらの動向を窺っていた。
王は兄たちと何か話し込んでいた。
ちなみに、兄たちには俺が星霊王とも知り合いだと教えていたので、先程の出来事にあまり驚いていなかった。
一方、父には何も教えてなかったので、公爵様と一緒に驚いていた。
ちょっと面白かった。
「ハルト、遅くなった」
「ハルトよ、此度はおめでとう」
ルークとその祖父、賢者ルアーノが来てくれた。
「ルーク、来てくれてありがとう。学園長もありがとうございます」
「なんか騒がしかったけど、大丈夫?」
「うん、ちょうど落ち着いたとこ。いいタイミングで来てくれた」
「ルアーノじゃないか!」
ダンディなオッサンが賢者ルアーノに話しかけた。
「も、もしや……星霊王様ですか?」
賢者ルアーノは、マイとメイの父親と知り合いだったようだ。
「こうして顔を合わせるのは久しいな。マイたちの入学を頼んだ時も念話だけだったしな」
「えぇ、そうです。しかし、何故今日はこちらに?」
「我が契約者であるハルトの結婚を祝う宴が開かれると聞いてな。同じくハルトと契約しているものたちと一緒に駆けつけたのだ」
うん、呼んでないけどね。
来るなら事前に教えといてほしかった。
まぁ、精霊が祝福してくれるのは嬉しいので、突然押しかけられても拒みはしない。
「ハルトと契約を結ばれたのですか?」
賢者ルアーノが信じられないという顔で俺を見てくる。
あれ、言ってなかったっけ?
「そうだ。ただ、契約は我から申し出た。ハルトは契約などせずとも、我を強制召喚できる力があるからな」
「なっ!?」
賢者ルアーノが口を開けたまま、固まってしまった。
「ところでハルトよ、マイとメイはどこだ?」
「まだ来てないみたいですね」
「王様、マイたちに会えるの楽しみにしてたからねー」
先程、王に忠言してくれた少女がやってきた。
「……シルフ、だよな?」
「そだよー! 僕もハルトたちをお祝いにきたの!」
少女は風の精霊王シルフが人化した姿だった。
「そっか、来てくれてありがとな」
「うん!」
「ハルト殿、我も来ておるぞ」
厳つい男が、ずいっと前に出てきた。
「えっと、イフリート?」
「左様、ノームも誘ったのだがな。契約してないからと拒まれた。多分、拗ねておるので今度奴とも契約してやってくれんか?」
ノームは大地を司る精霊王だ。
ノームにはまだ会ったこともなかったが、星霊王とも契約した俺が、四大精霊王でただひとりだけ契約されていないことに気付いて、拗ねているのだという。
何処で会えるか分からないが、機会があれば契約したいという俺の意思をイフリートに伝えてもらうことにした。
「はーると!」
急に後ろから抱きつかれた。
「シャルルか、遅かったね。あと、俺はもうティナとリファの旦那なので、いきなり抱きつくのはやめていただきたい」
姉のシャルルだった。
何故か抱きつかれている俺へのティナとリファの視線が冷たい。
えっ、なんで!?
俺のせいじゃないよね?
とりあえず無理やりシャルルを引き剥がした。
すると──
「リファちゃーん! 結婚おめでとー!!」
シャルルが、今度はリファに抱きついた。
「あ、ありがとうございます。お
リファが困惑しながらお礼を言う。
そして、助けてほしそうにこっちを見てくる。
「うへへ、お義姉かぁ。いい響き」
ニヤニヤしている姉が気持ち悪いので、もうしばらくリファに相手を頼むとしよう。
「「ハルト様!」」
「遅くなったのじゃ」
「お待たせにゃ」
マイとメイ、ヨウコ、メルディがやってきた。
会場入り口付近にリューシンとリュカの姿も見えた。
「みんな、来てくれてありがとう」
「「ありがとうございます」」
ティナ、リファと一緒に、皆にお礼を言う。
俺の仲間が、全員揃った。
意図せず俺と契約してる精霊王たちも勢揃いした。
こんな豪華なメンバーが集まるパーティーは滅多に開かれることはないと思う。
さぁ、パーティーを楽しもう!
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