第四章 魔法強化と神獣
第59話 賢者の姉
俺たちはグレンデールのイフルス魔法学園に帰ってきた。もちろん、行きと同じく俺の転移魔法で。
一ヶ月に渡る園外授業が終わったのだ。
アルヘイムで過ごした一ヶ月、色々あったなと振り返る。
まず、風の精霊王シルフと契約した。
超レアアイテムの世界樹の葉を大量に貰った。
世界樹のダンジョンを攻略(?)した。
クラスの仲間の多くが飛べることが分かった。
武闘大会で優勝した。
昔ティナの家族に仕えていたサリオンが強かった。
ティナの過去を教えてもらった。
アプリストスとの戦争に勝った。
悪魔アモンを倒した。
アルヘイムの国宝、覇国を貰った。
そして、ティナとリファと結婚した。
うん。かなり濃密な一ヶ月だった。
ちなみに覇国だが、デカすぎて持ち運びが大変だったので、マイとメイの父──光るオッサンに頼んで精霊界で預かってもらっている。
覇国が保管されている精霊界の座標にオッサンが転移のマーキングをしてくれたので、俺はどんな場所にいても覇国を取り出せるようになった。
──***──
魔法学園の自分たちの屋敷に戻ってきた。ティナは学園に、無事帰還したこと、外出先で俺たちがどんな生活をしていたかなどの報告に向かった。
シルフと契約した件は伏せておくと言っていたが。戦争に参加して勝利したと言って、果たして信じてもらえるだろうか?
ヨウコとマイ、メイは自室で寛いでいる。
リファにお茶をいれてもらって、のんびりしていると、屋敷に誰かが訪ねてきた。
「ハルト、久しぶり!」
「姉上」
玄関を開けると、俺の姉であるシャルルが立っていた。相変わらず、俺の実の姉であることが信じられないくらい美人だ。
ただ、胸は少し残念な感じだが。
「我が弟よ、どこを見ている? 何か言いたいことがあるのか?」
おっと、さすが姉上。視線で俺の言いたいことを読まれてしまった。
「いえ、なんでもありません。ところで今日はどうされたのですか?」
無理やり話題を変える。
「お前、結婚したらしいじゃないか」
「あ、もうお聞きになられたのですね」
恐らく母が伝えたのだろう。
「ハルト、私は悲しい。お前は私と結婚してくれるものとばかり」
そう言ってシャルルが抱きついてきた。ティナと比べるとやはり、何かが物足りない。
「おい今、失礼なこと考えてるだろ?」
「…………」
シャルルは俺の考えを読めるのだろうか?
「姉上、俺たちは家族です。結婚できるわけないでしょう」
とりあえず話を逸らす。
「愛があればそんなもの乗り越えられる!」
えぇー。この人、こんな感じだっけ?
割と昔から俺にベッタリだなーとは思っていたが……ここまでだったのか。
「あの、ハルトさん。どうされましたか?」
なかなか戻ってこない俺を心配してリファが様子を見に来た。
「ハ、ハルト! 誰だ、この美少女エルフは!?」
シャルルがリファを見て何故か顔を赤くしている。
「紹介しますね。エルフの王国であるアルヘイム、そこの元第二王女でこのたび、俺と結婚したリファです」
「初めまして。リファと言います」
「か」
「か?」
「可愛いー!!!」
そう言ってシャルルがリファに抱き着いた。
リファは突然のことで戸惑っている。
「可愛いよぉ、可愛すぎる。お嬢さん、私と結婚しない? これでも私、結構稼いでるよ」
心変わり早くね?
そんなことより。
「姉上、リファは俺の妻です。あと、苦しそうなので離してください」
「むぅ、この子、私にくれないか?」
「ダメです!」
あげられるわけないだろ。
シャルルをリファから引き離す。
「あの、こちらの方は?」
「俺の姉、シャルルだ」
「まぁ!お
リファが丁寧にお辞儀する。
「……おねえさま。はっ! つまり、リファちゃんは私の
「そうなりますね」
「ハルト、良くやった!」
何がだろう?
──と、思っていたらシャルルがリファを再び抱きしめた。
「私にこんな可愛い妹ができるなんて! 私は幸せだぁ」
シャルルはご満悦だ。
リファはまだ戸惑っている感じだ。
俺としてはリファの義姉となるシャルルに好かれたのは少し嬉しい。
家族になるのだから。
これから仲良くしてもらいたい。
「姉上、そろそろリファを離してください。せっかく来られたのですから持て成しますよ。こちらへ」
リファから離れようとしないシャルルを、半ば無理やり引き剥がし、応接間へと連れていった。
──***──
「リファちゃん可愛いな。私に妹ができた。ふふふ」
シャルルがずっとニヤニヤしててちょっと気持ち悪い。
「お義姉様、お茶です」
「リファちゃん、ありがとー」
シャルルはお茶を持ってきてくれたリファの手を引いて、自分の隣に座らせた。普通、リファは俺の隣じゃない?
「ところで、ハルトは家名決めた?」
少し落ち着いたシャルルが尋ねてきた。
この世界の貴族は家を継ぐ者が家名を名乗れる。
シルバレイは長兄が継ぐことになっていた。
そして、跡取りでない貴族の子供は結婚すると家名を名乗れなくなるので、自分で家名を付けるのだ。俺たちはみんなで相談して家名を決めていた。
「エルノールにしました。今、俺はハルト=エルノールです」
「エルノールか、いい響きね。どんな意味があるの?」
「エルフの言葉で、炎の星。もしくは炎のエルフという意味です。ハルトさんが炎の魔法を得意とされているので、これにしました」
リファが説明してくれた。
「そっか、ハルトは炎を使うんだね。あっ、そういえばリファちゃんの故郷ってアルヘイムでしょ? なんかアプリストスって国に攻められたらしいけど、大丈夫だったの!?」
「えぇ、ハルトさんが敵を追い払ってくれましたから国は無事です。アルヘイムの国民は皆、ハルトさんに心から感謝しています」
おっとリファ、何を言い出すんだ。
「……は?」
ほら、シャルルが固まっちゃったじゃないか。
その後、シャルルからここ最近の出来事を根掘り葉掘り聞かれた。
姉シャルルは俺の考えを見抜く力があるようで、俺が何かを隠して話すと直ぐにそのことを指摘されてしまう。
結局、シルフのことも含めて包み隠さず全部話してしまった。
「悪魔を浄化……やはりハルトさんはさすがですね」
悪魔アモンの件はリファも知らなかったので驚いていた。
「さすが、私のハルトだ」
シャルルは満足気だった。
姉上のではない。
俺はティナとリファのだ、と言いたかったがシャルルに口論で勝てる気がしないので、黙っておくことにした。
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