第60話 シャルルの能力

 

「ただいま戻りました」


 シャルル、リファと話していたらティナが帰ってきた。


「ティナ!おかえりなさーい」


 そのティナをシャルルが出迎えた。


「シャルル様、いらしてたのですね。お久しぶりです」


「久しぶりー、ハルトと結婚したんですって。おめでとう!!」


 シャルルがティナに抱きつく。


 この人、ことある毎に抱きつかなきゃ気が済まないのか?


「ありがとうございます」


「昔、私がハルトと一緒に遊んでると、いっつも凄い顔で睨んでたもんね。ハルトと一緒になれて良かったね」


「お、お気づきだったのですか!?」


 そ、そうなんだ。


「ハルトは絶対、渡さないって感じだったよ。まぁ、結婚してティナに取られちゃったわけだけど」


「えぇ、ハルト様はもう私のですから」


 ティナが勝ち誇った顔をする。


「ティナよ、少し待ちたまえ。我が弟と結婚したのならティナも我が家族。そして、その家族の所有物は家族のもの。つまりハルトは私のものと言っても過言ではないのだよ」


 な、なんだその超理論は!?


 どう考えても過言だよ!


「っ!? ぐぬぬ」


 ティナ、ぐぬぬじゃないから。

 そんな訳ないから。


「姉上は黙ってれば美人なのですから引く手数多でしょう。早く弟離れしてください」


「ハルト、私が美人だって!」


 いや、そこだけ聞き取るのかよ。


 都合のいい耳だな。


「実のところ縁談の話は色々あるんだけどね。結婚を申し込んでくる奴らの大半が伯爵家の財産狙いか、私の顔しか見てない。後はゲスなこと考えてる奴らとか」


「姉上は昔から洞察力が凄いですからね。そんな姉上に、下心丸出しでは相手にされなくて当然ですね」


「洞察力というかスキルだな。私は相手が何を考えてるのか分かる」


「「「──!?」」」


 とんでもないことをカミングアウトされた。


 ティナもリファも驚いている。


 えっ、今まで俺の反応とか見て何考えてるか推測してたんじゃないの?


 何を考えてるか分かるの!?


「そう。対象は常に1人だけど、その人が何を思っているかが手に取るように分かる」


 俺の考えを読まれた。


「……マジですか」


「マジだ。読心術というスキルだ。超レアなんだぞ?」


 でしょうね。


 人の考えを読めるスキル持ちが、その辺にいてたまるか。


「ちなみにこのこと読心術を知っているのは両親と、この国の王族の人たちと、後は貴女たちだけだから他言しないでね」


 おい! そんな重要な事をサラッとカミングアウトするなよ!!


 あれ? でも、王族も知ってるってことはもしかして……


「さすがハルト、鋭いね。私は今、国の諜報部で働いてるの。どんな拷問でも口を割らないスパイがいたとしても、私には意味ないからね」


 それは国に重宝されるわけだ。


「あっ、私が家族で思考を読むのは昔からハルトだけだから、ティナもリファちゃんも心配しないでね」


 いや、俺のは読むのかよ!?


 ん、待てよ……。


 


 つ、つまり俺が転生者だってバレてる?


「えへへ」


 笑いながらシャルルは俺に耳打ちしてきた。


「大丈夫。は誰にも言ってないから」


 あぁ……なんてことだ。


 シャルルに全部バレてた。


 ティナは知ってるけど、リファにはまだ話してなかったのに。


 まさか実の姉が気づいていたとは。


 んー、どうしよっかな。


 リファも俺の妻になったわけだし、俺が不利になることは絶対しないと思う。


 だから──


「リファ、俺も秘密を話したいと思う」


 そうして、俺は転生者であること。


 邪神に呪いをかけられたこと。


 その呪いで今の力を得たことなどを話した。


「邪神……実在したのですか。ですが、そうするとハルトさんの普通とは言えない力の説明がつきます。無限の魔力を持っていると言えるのですから」


 リファに信じてもらえたようだ。


 まぁ、実際俺の魔法を見ているわけだし。


「今聞いた話は絶対に誰にも言いません。ですが、もしお義姉様のように思考を読める人がいたら、ハルトさんのことがバレてしまうかも知れません」


 リファは俺の話を聞いてしまったことを後悔しているようだ。


 俺が転生者だと知っているのは、賢者である魔法学園長ルアーノ=ヴェル=イフルス、英雄ティナ、俺の姉シャルル、そしてリファの4人だ。


 シャルルは魔法学園を首席で卒業し、そうそう誰かに捕まるような柄ではないし、今は国の諜報部で働いていて護衛も付いているらしい。


 そうすると、四人の中で一番戦闘能力が低いのはリファになる。


 だから自分が捕まって、俺のことを敵に知られてしまうことを恐れているようだ。



「大丈夫、たとえ今話したことが全部バレても問題ない。それにリファは俺が守るから」


「ハルトさん」


「ひゅーひゅー! 熱いねぇ。ハルト、私が誰かに襲われても助けてね」


 せっかくいい感じのことを言ったのに、シャルルに茶化された。


「姉上は自分で何とかできるでしょう」


 少し冷たくしておく。


「ちぇっ」


 シャルルが拗ねた。


 自業自得だろう。



「あ、そういえばあなたたちの結婚披露宴を来月やることにやったらしいから」


「そうなんだ」


 アルヘイムの時のように明日やる、とか言われなくて良かった。


 伯爵の息子なので、家から出るとは言え各貴族への報告を兼ねた披露宴が必要なんだとか。


 シャルルがこの屋敷に来た理由は、このことを俺に伝えるためだったらしい。


 その後、衣装合わせなど今後のスケジュールを伝えてシャルルは帰っていった。

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