第58話 精霊王の祝福と宝剣

 

 戦争に勝利したこと。


 俺がその立役者になったこと。


 英雄ティナが帰還したこと。


 そして、俺がティナと結婚すること。


 さらに王女リファとも結婚することが、アルヘイムの国民に知らされた。王城の周りに集まった国民からは歓声や祝福の声が聞こえる。


 ティナとリファが、俺のことを大好きだから結婚すると国民に話してくれたおかげか、反対の声は聞こえなかった。


 聞いててちょっと恥ずかしくなった。

 ティナとリファもその顔を赤くしていた。


 次に俺が話す番だったのだけれど──


 緊張しすぎて、何を言ったのか全く覚えていない。ティナたちは良い演説だったと褒めてくれた。


 そんなこんなで、俺たちの結婚お披露目は無事に終了した。


 いや、少し問題が起きた。


 シルフがお祝いだと言って、大量の世界樹の葉を王都に降らせたのだ。アルヘイムにいる全ての国民の分だと言う。


 ついでに俺と契約していることもぶっちゃけた。国は大騒ぎになった。


 でも、そのおかげで助かった人たちもいる。アプリストスに奇襲を受けた国境警備隊のエルフたちを救うことができたのだ。


 リュカのおかげで死人は居なかったが、後遺症が残るような大怪我をした人が多かった。ルナのサポートがあっても、リュカだけでは大怪我した全ての人を治癒することはできなかったのだ。


 そんな国境警備隊の大怪我したエルフたちのもとに、世界樹の葉から作られたエリクサーが届けられた。そのおかげで、先の戦争で傷ついた兵たちが全回復したのだ。


 何故か国境警備隊のエルフたちからすごく感謝された。


 いや、貴方たちを救ったエリクサーの材料をくれたのはシルフですよ?


 それでも、俺がこのタイミングで結婚して、シルフが祝福に世界樹の葉をくれて助かったのだから俺のおかげだと、色んな贈り物を貰ってしまった。なんかすっごく綺麗な絨毯や、宝石のはまった短剣など。


 色んなエルフ族の宝物が、俺たちが滞在していた部屋にどんどん運び込まれてきた。


 あの……部屋に入れないんですけど?


 お宝が多すぎて部屋から溢れ出ていた。それなのに王城仕えのメイドたちが、まだまだお宝を運んでくる。ついには隣の部屋にまで置き始めた。


「……これ、多過ぎない?」


「私たちエルフは寿命が長いので、あまり子供を作りません。その分、仲間意識が非常に強い種族です。ハルトさんのおかげで多くの国民が救われたのですから、これくらいは当然です」


 リファが説明してくれた。


「あ、そういえば、お父様からハルトさんを呼んでくるようにと言われていました」


「分かった。執務室でいいかな?」


「はい、お願いします」


 俺はエルフ王の執務室へ向かった。



 ──***──


「我が息子ハルトよ、この度は本当に助かった。そして、お前は晴れてこの国の英雄となったのだ。そんなお前に、これを授ける」


 そう言ってエルフ王に俺の身の丈ほどある剣を渡された。見た目はでかいが、持ってみると羽根のように軽かった。


「我が国に伝わる宝剣だ。名を覇国という」


 えっ!? 国宝じゃん!


「そ、そのようなものを受け取れません!」


「ハルト、それを片手で持てるか?」


 片手で?


 持てるに決まっている。

 羽根のように軽いのだから。


 俺は覇国を片手で持ち、構えた。


「おぉ!」

「なんと……覇国を片手で」

「やはりハルト殿は真の勇者だったか」


 その場に同席していた大臣たちから驚きの声が上がる。


 な、なに、どういうこと!?


「ハルト。その剣は真の勇者にしか扱えんのだ。私も先程お前に渡すまで、かなり頑張って持っていた」


「王よ、覇国をひとりで持ち上げられる貴方も十分、英雄の枠に入るかと存じます」


 大臣たちの話によると、この覇国を移動させる時は兵士五人がかりでやるのだとか。


 そんな剣をひとりで俺に手渡してくれたエルフ王の凄さを改めて感じる。


「とにかく、お前は覇国に選ばれたのだ。今後はその剣がお前の力となるだろう」


 本当にこの国宝、貰っちゃっていいらしい。


 俺のステータスは邪神の呪いのせいで固定されているので、この剣にどんな攻撃力があっても意味が無い。


 でも、これだけ大きい剣が羽根のように軽いのだから、攻撃手段は増えそうだ。



 ──ん?


 何だか覇国を持つ手から魔力を吸われている気がする。


 あ、もしかして!


「陛下、少しよろしいですか?」


 そう言って俺は執務室からバルコニーに出た。


 なんとなくできそうな気がする。剣と魔法を極めた達人のみに許された奥義が。


 俺は覇国を上段で構え──


 遠くに見える山を目掛けて振り下ろした。



 覇国から斬撃が飛んだ。


 その斬撃は地を裂き、川を裂き──


 山を真っ二つに斬り裂いた。


「──!?」

「こ、これは!」

「あぁ、間違いない。かつての勇者が魔王を倒した技だ」

「しかし、勇者の伝承より威力が強過ぎないか? 勇者でも数十メートル先の敵を薙ぎ払うのに使っていた程度のはずだが……」


「「「………………」」」


「ま、まぁ、その剣は英雄ハルトにこそ相応しいということが分かったな。大事にしてくれ」


「かしこまりました」


 こうして俺は、今後相棒として大活躍してくれる宝剣、覇国を手に入れたのだ。

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