第28話 精霊姉妹との契約
「「ハルト様、少しお時間よろしいでしょうか」」
学園に戻ってきてのんびりしていたら、マイとメイが話しかけてきた。相変わらず声が完全にシンクロしている。
ティナは鋼の森での異変を学園長に報告しに行き、ヨウコは校庭で昼寝しているので、俺はひとりで教室に向かっているところだった。
「いいけど、どうしたの?」
いつの間にかマイだけでなくメイまで、俺のことを様を付けて呼ぶようになっている。
いったい、何があったのだろう?
人気のない所に行きたいとのことだったので、ふたりと一緒に俺たちのクラスの訓練所へやってきた。
ま、まさか告白か?
しかもふたり同時!?
ちょっとドキドキしながらマイとメイの後について訓練所へ入った。訓練所の中ほどで、ふたりは立ち止まり、俺の方を向いた。
そして、服を脱ぎ始めた。
「えっ!? な、なにしてんの!?」
俺の反応を他所に、ふたりはどんどん脱いでいく。マイとメイが下着姿になった時、ふたりの身体が変化した。
マイは炎に、メイは水に変わる。
「「ハルト様、これが私たちの本当の姿です」」
「おぉ」
マイとメイが精霊だというのは知っていたが、改めて精霊体の姿を見ると感動する。
ウンディーネとは違った美しさがある。
そして、クラスメイトの全裸を見ていると思うとちょっと背徳感があった。
「「ハルト様」」
「は、はい、なんでしょうか?」
「「私たちの契約者になっていただけないでしょうか?」」
「あー、ウンディーネが俺を紹介してくれたから?」
「それもありますが」
「私たちは、ふたりとも」
「「ハルト様の魔力を好きになってしまいました」」
おぉ、まさしく告白!
──って、好きなのは魔力かよ。
まぁ、俺にはティナが居るしな。
別に俺を好きになってくれなくてもいいもん。
つ、強がりじゃないぞ?
ちなみにヨウコはペット枠。
もふもふ担当。
俺の目標はこの世界で勇者並に強くなって、ティナを護れるようになること。精霊と契約して戦力ダウンすることは無い。
しかも、マイとメイは契約なしでも人間界に顕現でき、更に人化できるほど魔力の扱いに長けている。そんなふたりが弱いわけが無い。
そんでもって、ふたりとも可愛い。
つまり、俺がマイとメイの頼みを断る理由が無かった。
「ふたりとも、ありがとう。ぜひ、俺の精霊になってほしい」
「「!!!」」
精霊体は表情が分かりにくいのだが、それでも喜んでいるのが分かる。
「「ありがとうございます! よろしくお願いします」」
「あぁ、こちらこそ、よろしくな」
「「でわ、失礼します」」
「──えっ!?」
いきなりふたりが俺の頬に口付けしてきた。
マイが右頬、メイが左頬に。
柔らかかった。
できれば、順番にしてほしい。
同時だと、感覚を楽しむ時間が無い。
そんなことを思っていると、マイとメイの身体が霧散していった。
契約が完了し、ふたりが精霊界に還ったのだ。
人間界で契約すると、精霊は一旦精霊界に還る。そして、契約者である人間が、精霊を再度こちらの世界に召喚することで、顕現できるようになるのだ。
マイとメイをこちらの世界に顕現させるために魔法陣を用意する。俺と契約したとはいえ、ふたりにはもっと学園生活を楽しんでもらいたい。
十人しかいないクラスの仲間が減るのも寂しいしな。だから、普通の召喚魔法陣ではダメだ。
俺はふたりが長期間こちらに顕現できるよう、めいっぱいの魔力を注ぎ込んで召喚魔法陣を形成した。
ウンディーネを一日召喚するのに、千文字くらいの魔文字の魔法陣を使っていた。
ちなみにこの世界の一年は三百日だ。
そこから計算し、マイかメイどちらかを少なくとも一年間は顕現させられるだけの文字数は三百×千で三十万文字になる。
ふたりで六十万文字。
少しおまけして百万文字──およそ一千万の魔力を注ぎ込んだ魔法陣を準備した。
これだけ魔力をふたりに渡しておけば、長期間、こちらの世界に顕現できるはずだ。
さぁ、ふたりが待ってる。
早く召喚してあげよう。
俺はふたりの属性、火と水をイメージし、魔法陣を起動させた。
……詠唱は、どうしよう?
できれば、ふたり一緒に召喚してあげたい。そういえば、マイとメイからは光のオーラも少し感じた。
だから──
「ライトニングランス!」
何となく光属性の初級魔法を詠唱した。
「──っ!?」
突然、魔法陣が激しく光り出す。
「誰だ、我を無理矢理呼び出したのは!?」
光り輝く、デカいおっさんが現れた。
手には眩く光る槍が握られている。
「えっと……誰?」
「我は星霊王。この星、全ての精霊の長である」
おっふ、全然違う人(?)を召喚してしまったようだ。
「あのー、すまんが今、取り込み中での。我を帰還させてくれぬか?」
「自分で戻れないんですか?」
「お主が我を強制召喚したのではないか! 我を召喚できる人間が居ることにも驚きだが、まさか強制召喚される日が来るとは……だが、今は我が娘の一大事なのだ。頼む、帰還させてくれ」
なんだか、凄く偉そうな精霊に頭を下げられてしまった。俺が間違えて召喚してしまったので、悪いのは俺なのだ。
「分かった。直ぐに送還するよ。無理矢理呼んで悪かったな」
俺は光るおっさんを精霊界へ送還した。
去り際におっさんは何度も頭を下げていた。
うーん、やっぱり無茶はいけないな。
ちゃんと1人ずつ召喚しよう。
まずはマイかな。
先ほどと同じように魔法陣を構築する。
今度は五十万文字程度にしておいた。そして、マイの姿を明確に思い浮かべ。
「ファイアランス!」
詠唱と共に、魔法陣が輝き出す。魔法陣から炎が立ちのぼり、その中から精霊体のマイが現れた。
何故か、マイが少し成長している気がする。
突然、魔法陣が輝き出した。
魔法陣から光の柱が空に向かって伸び、その光の中から誰か出てきた。
「火の精霊マイと契約したいというのは、貴様か! 先ずは、その力を我に示せ──んんん??」
さっきの光るおっさんだった。
どうやらマイ達と契約するには、おっさんを倒さないとダメらしい。倒さないといけないが、そもそも俺は先程おっさんを召喚している。
つまり、この光るおっさんには俺の命令が効くのだ。
だから──
「力を示せばいいんだな。よし、俺に
「待て待て待て待てぇーい!!」
おっさんは俺に物凄い勢いで近づくと、俺の腕を掴んで異空間へ飛んだ。
「何すんだよ」
俺はおっさんに連れられて、人間界と精霊界の狭間の空間にきていた。
「何をするはこっちの台詞だ! お主、何故いきなり我を娘の前で跪かせようとするのだ!? 酷いではないか!!」
えっ、この人、マイの父親なの?
「いや、力を示せって……」
精霊を思い通りに動かせるのは屈服させた証拠になる。だから俺はおっさんに俺に跪けと命令しようとしたのだ。
「そ、それは娘の召喚者がお主だと知らんかったからであってだな、その──」
「俺はマイとメイの契約者に相応しくないか?」
「いやいやいやいや! とんでもない、お主は娘たちの契約者として十分過ぎるほどの力を持っておる。だが、その、なんだ」
「何か条件があるのか?」
「う、うむ。我の大事な娘たちなのだ。あまり酷いことはせんと約束してくれぬか? もし、魔王などと戦うのであれば、我が戦おう。だから、頼む。この通りだ」
土下座されてしまった。父親が娘を大事にしたい気持ちは分かる。俺としても、マイとメイに無理をさせたくはない。
「分かった。ふたりにはなるべく危ないことはさせないと約束する。だけど、俺が常に2人を護れるかは分からない。いざと言う時は貴方の力を求めるけど、良いか?」
「あぁ、問題ない。いつでも呼ぶがいい」
その後、人間界に戻りメイも召喚した。
こうして俺はマイとメイ、あとついでに
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