第27話 メイの過去

 

 サイド:メイ


 火の手から何とか逃げ切りました。

 ハルト様のおかげです。


 そう、ハルトです。


 ハルト様がウンディーネ様を召喚しようと魔法陣を形成した時から胸がキュンキュンして止まりません。感じたことの無いほど、純粋な水属性の魔力でした。


 それを至近距離で感じてしまったものですから、私はハルト様の魔力にメロメロです。


 マイもこんな感じだったのでしようか?


 今なら、私と別れることになってでもハルト様と契約すると言い張ったマイの気持ちが痛いほど分かります。


 あと、ハルト様は絶対いい人です。


 気を失っていたリファさんと、体力が尽きて地面に伏していたメルディさんを優しく介抱してあげていました。


 おふたりも無事、回復されたようです。

 よかった。


 それに、主従契約しているというヨウコさんに対しても、ハルト様の言動がとても丁寧なんです。私がキュンキュンするほどの水魔法を使えて、しかもすごく優しそう。


 ウンディーネ様のお墨付きもあります。


 契約者として、こんな優良物件は他にはないでしょう。すぐさま契約を申し込みたいところですが、さすがに皆様の前で姿になるのは恥ずかしいので、今はまだ我慢の時です。



 ──***──

 

 ちょっと昔のことを思い出しました。


 マイはまだ、誰とも契約したことが無いのですが、私は過去にひとりとだけ契約したことがあります。その彼は最悪でした。


 私を酷使し、更に私が人化できると知ると、無理やり私を人化させ、襲おうとしたのです。


 幸い、その事に気づいたお父様が助けてくださり、その人間には厳しい罰が与えられました。


 私が未熟だったのもいけないのですが、私はそれ以来、契約に対して消極的になりました。


 お父様も、それを咎めることなく、マイと私がある程度の力を付けるまで精霊界から出なくていいと言ってくださったのです。


 本来、精霊は人間と契約し、力を分け与えられることで成長します。精霊界から出ない私たちが成長するのには、すごく長い時間がかかりました。


 契約者に命令されても、私たちの意思で命令を退ける力を得て、ようやく私たちは人間界に来ることになったのです。


 ただ、普通の精霊のように召喚されて人間と契約するのでは、契約が完了するまでその人間がどんな性格なのかなどは分かりません。


 そこで、お父様のお力で私たちは人間界に顕現させられ、人間界で暮らしながら私たちの契約者に相応しい人を探すことになったのです。


 まさか、顕現して一年目でこれ以上ないという契約者候補を見つけられるとは思いませんでした。


 絶対逃がしませんからね。ハルト様!

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