第20話 仲間のレベル

 

 七年生のクラスと対戦をして一週間後、俺たちのクラスはイフルス魔法学園が管理する鋼の森にやってきた。


 この鋼の森には、Cランク(レベル30~50)の魔物が生息している。


 主に高学年の生徒のレベル上げや、訓練などで使われる森だ。


 本来、一年生が鋼の森に入ることなどはできないのだが、対戦で七年生を倒したことと、俺以外のクラスの仲間たち全員が適正レベルを超えていたため、学園長から森を使用する許可が下りた。


 鋼の森に来る前日、クラスの仲間たちでレベルや職業を打ち明けあったのだが、こんな感じだった。


 名前:ルーク

 種族:人族

 職業:賢者見習い(レベル125)


 名前:ルナ

 種族:人族

 職業:付術師(レベル52)


 名前:リファ

 種族:ハイエルフ

 職業:マジックアーチャー(レベル80)


 名前:メルディ

 種族:獣人族

 職業:マジックウォーリアー(レベル60)


 名前:リューシン

 種族:ドラゴノイド

 職業:マジックウォーリアー(レベル105)


 名前:リュカ

 種族:ドラゴノイド

 職業:プーリスト(レベル62)


 名前:ヨウコ

 種族:魔族 九尾狐(レベル99)

 状態:隷属(ハルト)


 名前:マイ

 種族:精霊族(レベル60)


 名前:メイ

 種族:精霊族(レベル60)



 ……うん、色々おかしい。


 まず、ルークがレベル120超えの『三次職見習い』だった。


 まぁ、これはいい。


 ルークは賢者の孫だっていうし、究極魔法を使うところも見たので、これくらいでもそんなに驚かない。


 ──いや、もちろん驚いたけど。



 ルナが二次職である付術師だった。


 あれ? 入学式の日、ルナがナードとかいう貴族に絡まれてたけど、俺が助けに行く必要はなかったんじゃないか?


 ルナのレベルなら一蹴できたはずだ。



 リファ、メルディ、リュカもレベル60を超えていた。リューシンに至ってはレベル105……



 そして、ヨウコが魔族であることをカミングアウトした。皆に危害を加えないとアピールするため、現在は俺と主従契約を結んでいることも話した。


 これはティナとヨウコと事前に相談していた。


 しかし、レベル99というのはこの時初めて知った。ヨウコの洗脳術は自分のレベル以下の者に効果があるらしいので、うちのクラスでヨウコの洗脳にレジストできるのはティナとルーク、リューシンだけだ。


 ヨウコが変な気を起こす前に、契約を結んでしまえて良かったのかもしれない。



 最後に驚いたのはマイと、メイが精霊族だったことだ。人型で、かつ人間の世界に入り込もうとする精霊族はドラゴノイド以上に珍しい。


 マイが火を司る精霊で、メイが水を司る精霊だそうだ。そして、精霊族には職業がなく、種族としてのレベルが上がると強くなれるのだそうだ。



 俺以外のみんながレベル50を超えていた。


 俺だけレベル1……


 ティナと一緒に魔物を倒しに行ったこともあるが、やはり呪いのせいで俺のレベルは上がることはなかった。


 凄く恥ずかしいが、皆がレベルや職業を公開してるのに、俺だけ教えないのはずるいと思う。


 ティナにも言ってないけれど、ついにレベルのことをカミングアウトしなければならない。


 後でティナに呪いのとも含めて説明し、黙っていたことを謝ろう──そう思いながらステータスボードを皆に見せようとした。


「あっ、ハルトのステータスは見なくても良いかな。と、言うか見たくない」


「えっ?」


 突然ルークが俺のレベルには興味がないと言い出した。


「正直、俺ってじーちゃん学園長を除けばこの学園で最強だって思ってたんだよな。それなのに、じーちゃんより強いティナ先生が居て、更に先生よりハルトが強いって確信しちゃったら俺の自信がズタボロになっちゃう」


 俺のステータスに興味がないわけではないらしい。


 盛大に勘違いしているが、俺はレベル1だ。


「私もハルトくんのステータスは知りたくはないですね。勇者でもない方が、種族の英雄として尊敬していたティナ様より強いだなんて……」


 リファがそう言うけど、俺は転生してこちらの世界に来たのだから本来、勇者扱いなんだよね。


「俺も聞かなくていい。強くなるためにこの学園に来たけど、高すぎる目標は身を滅ぼすって言うからな。しばらくはルークと先生を目標として追いかけることにするよ」


 リューシンも俺のステータスは見ないという。他のみんなも同じ意見のようだ。


 ここまで言われてもステータスボードを見せようとすると、自慢したがりの奴だと思われてしまうかもしれない。


 俺はそっとステータスボードを閉じた。

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