第19話 家族が増えた

 

 屋敷に帰ってきたのだが、ヨウコもついてきた。俺と一緒に居たいらしい。


 俺が見てない時に、ティナに何かされないか恐れているようだ。ヨウコのことを監視すると言ったし、別に問題は無いのだが──


「なんでヨウコさんがハルト様のベッドに居るんですか?」


「ここが一番安全じゃからな。それより何故お主も寝間着なのじゃ?もしや主様と一緒に寝るつもりなのか?」


 食事と入浴を済ませ、ベッドで横になっていると寝間着姿のヨウコが潜り込んできた。片付けなどの仕事を終えたティナもパジャマ姿で俺の部屋に来た。


「いけませんか?」


「お主は主様の従者であろう。それに学園では教師ではないか」


「それは私がハルト様と一緒に寝られない理由にはなりませんね」


 ティナとヨウコの間でバチバチ火花が飛んでる。当の俺は、美人と美少女に挟まれて寝るのも悪くないなーなどと考えていた。


「もう寝ようよ。ほら、ティナおいで」


 空いてる左側の布団を持ち上げて、ティナを呼んだ。


「は、はい!」


 ティナが耳を赤くしながら飛び込んできた。


「ハルト様ぁ!」


 ギューっとティナが抱きついてくる。

 柔らかいものが左腕に当たる。


 ちょっと幸せ。


「お、お主らいつもそんなことをしておるのか?」


「右手、空いてるからヨウコもやっていいぞ」


 顔を真っ赤にして照れてるヨウコが可愛くてからかってみた。からかったつもりだったのだが──


「め、命令ならば仕方ないな。うむ、失礼する」


 ヨウコも右側から抱きついてきた。

 ティナのものと比べると物足りないが、確かに柔らかいものが当たっている。


 ちなみに主従契約の命令は使っていない。

 左右からいい匂いがする。


 俺は次第に意識を手放していった。



 ──***──


 翌朝、目覚めたらベッドには俺ひとりだった。


 お腹が空いたので、食堂へと向かう。

 キッチンでヨウコにティナが料理を教えていた。


「ハルト様のお屋敷でお世話になるのですから、家事の一部くらいはやってもらいますからね」


「わ、わかっておる。今話しかけるでない」


 ヨウコが、卵焼きをひっくり返そうとしていた。


 あぁ、ちょっと形が崩れてしまった。


「むぅ、難しいのじゃ」


 悪戦苦闘するヨウコの隣で、ティナが手際よく朝食の用意をしていく。


 俺はテーブルについて料理が出てくるのを待つことにした。



「ハルト様、起きておられたのですね。おはようございます」


「主様、おはようございます」


 少しして、ティナとヨウコがキッチンからでてきた。


「おはよう。ヨウコに料理教えてたんだ」


「えぇ、何もせずタダで寝泊まりなど、させられませんからね」


「主様、我、頑張ったのじゃ」

「まだまだですけどね」


 ティナが料理を並べていく。


 卵焼きが乗った皿には形が整ったものと、形が崩れ、一部が焦げたものがあった。


 ヨウコが卵焼きの乗った皿と俺のフォークの行方を見ている。


 形の崩れた卵焼きを取って、食べた。

 少し焦げているが、味は美味い。


「美味いな。これはヨウコが作ったのか?」


「そうじゃ!そ、そうか美味いか。ならば主様にはこれからも我が料理を作ってやろう」


 ヨウコがニコニコしている。


「ちゃんとティナから学ぶんだぞ。それから、刃物とかの扱いには気をつけるように」


「わかったのじゃ!」


 ティナが教えてくれるなら、ヨウコはそのうち家事全般をこなせるようになるはずだ。


 こうして、俺の家に新たな住人が増えた。

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