第3話 勇者ですか?
森に映える銀髪で褐色肌の美人
間抜けな声を漏らし、唖然としている私に彼女は続ける。
「確認しないといけないだろ。君がただの人間が、それとも勇者か」
はっ! そうか。そうだった。体のどこかに勇者の証が刻まれているか確認する必要があった。でも、もう少し先になると思っていたのに、こんなに早く確認されるなんて。もしここで、その証が見つかったら、私は彼女に殺されてしまうの?
勇者なんてなりたくはないけど、凡人にもなりたくないな。せっかくこんな世界に来たのに凡人Aとかは勘弁!
せっかく転生させてくれたのに少しばかり特別な私になりたかった。でも、勇者になったら殺される。それならこの私の少しばかりの希望は諦めるしかないか。
死ぬよりはマシだから。
彼女に催促され、私は着ている服を上から順に脱いでいく。
羽織を脱いで、シャツを脱ぎ、パンツを脱いで下着姿を彼女の眼前に晒す。
同性同士でも人前で下着姿を晒すのはとても恥ずかしい。
私は自分の体を確かめるように見るも、証というものは見当たらなかった。
ほっと安堵のため息を漏らす。
「見ての通り、勇者の証はありませんでした。残念ながら、私は勇者ではないようです」
「何を言っている?」
「え?」
「まだ着ているだろ? その胸と股に」
下着までもを脱がせる彼女の眼は真剣そのものだった。
なにせ私が勇者かどうかで今の関係を左右することになるのだ。しかも、最大の敵となり得る勇者なんて弱いうちに倒さなければ、今後多くの被害を生んでしまう。だからこそ、その見極めが重要になる。
でも、だからって、人前で素っ裸になるのは抵抗がある。
「早く」
容赦のない彼女の言葉に、私は羞恥に顔を赤面させながら、うでを後ろに回し、ブラのホックをそっと外す。胸が一瞬で軽くなり、片方の手で胸を隠しながらブラをとる。
「手で隠していては意味がないだろ」
うううぅぅ……。
これは非常に恥ずかしい。
でも、流石にずっと手で胸を押さえていても埒が明かないので、私は意を決して胸を覆う手をそっと退かしていく。
プロポーションに自信があれば、ある程度平気なのかもしれないけれど、残念ながら私は女神サラエラほど女性的魅力の豊満さはないし、モデルのような細い体躯もしていない。何とも平均的な体形で、顔もそんなに良くないと思う。
恥ずかしさで顔を赤面させながら、私は自信のない肉体を、美人の闇妖精に見せつける。
じっと私の体に目を向ける彼女は確かめるように印を探していると、ふとその眼が一点に釘付けとなった。
え? もしかして印があるんですか?
私は自分の体に目を向けようとしたとき、突然彼女が私の元まで駆け寄る。その表情は吃驚と畏怖の色に染まっていた。
「ま、まさか……!」
「も、もしかして、勇者の証があったんですか? わたし、殺されてしまうんですか?」
勇者だったら私は敵対勢力のボスとして即殺されてしまう。
戦う術を知らないまま、私は彼女に一瞬で殺され、再びサラエラさんの所に行くことになるのだろう。
そんな私の恐怖する言葉に少しだけ笑みを浮かべた彼女は、私が脱いだ服を拾い上げると、それを私に差し出した。
「いえ、殺すことなど、誰ができましょうか」
あれ?
何だか口調が可笑しくないですか?
なんでいきなり敬語になっているのだろう。
勇者相手にそんな口調は訊かないだろう。もしかして、私は勇者じゃないく彼女と同じ闇側の存在で、仲間として迎えられたわけなのだろうか?
「あの、私は結局勇者だったんですか?」
彼女は一歩下がると片膝をついて敬服の姿勢をとる。
「勇者なんて下劣なものなどではありません。あなた様は――」
あなた様って……随分と仰々しい言い方。
「我ら闇側の主、魔王様です!」
「……えっ!?」
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