甘噛み

甘噛み

世界に忘れられた場所から

どうやって ここまで

戻ってきたのかは

忘れたけれど

こんな生温い風が心を洗った

薄っぺらいカーテン越し

そこに世界がある

東京の匂いと常温の水は

口の中で混ざって

相性が悪いみたいだ

君のそばかすがよく見える

昨日は 暗くて見えなかった

桃色に発光する 君の肌に

下着の跡が

くっきりとついていたから

許せなくって 少し噛んだ

世界に忘れられた僕は

誰にも 探されずに

たまに鳴る通知音

でも焦りはしない

応えればいつでも戻れる

脱ぎっぱなしの知らないワイシャツ

テレビの前に謎のオブジェ

子どもの声も

昼のワイドショーも

今は要らないや

君の髪が風に揺れている

昨日は 綺麗だって思っていた

銀色に発光する 途中で切れた髪に

煙草の匂いが

くっきりとついていたから

許せなくて 少し泣いた

君のそばかすがよく見える

昨日は 暗くて見えなかった

桃色に発光する 君の肌に

下着の跡が

くっきりとついていたから

許せなくって 少し噛んだ